――今年一年の競馬が無事に閉幕した。
Ｇ�気悩Ｇ�一番の見所だった所は？ と質問されたら秋古馬３冠レース――天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念と。
１００人に聞いたら半数以上がタマモクロスとオグリキャップの芦毛対決と答えるだろう。
天皇賞・秋はタマモクロスが勝利したが、猛然とオグリキャップが猛獣の様に追い込んできた。
ジャパンカップは勝ち馬こそはアメリカ馬のペイザバトラーだったが、２着と３着にはそれぞれタマモとオグリが。
そして、最終戦――有馬記念ではオグリキャップの馬主が同じ馬に２度も負けて引退する馬から逃げられるか、と言ったそうだ。
その為に一戦限りの乗り代わりでジョッキーが変更され、オグリの気迫が伝わるレースが見られた。
このレースが生で見られた事は誇って良いと思えるほどレベルが高い物であり、今年のベストレースだろう。
さて、クラシック最終レース――菊花賞では抽選を潜り抜けたスーパークリークが勝利。
この馬にも逸話があり、トライアルからの出走権取りは２つとも失敗、その内１つだけが妨害にあって取れなかった。
そこで、この配合を生産者に教えたオーナーブリーダーの馬が出走を取り消して、代わりに出走権を得た。
そして、新人騎手――２年目でのＧ�祇�覇と言う立役者を演じてしまったが、スーパークリークが馬房の前で彼の袖を引っ張ったそうだ。
まるで馬自身が勝つ事が分かっていたように。
次は短距離――スプリンターズＳとマイルチャンピオンシップの方に眼を向けてみよう。
ダイナアクトレスは天皇賞・秋に向かってしまい、スプリンターズＳは手薄になると思われたが不調だったフレッシュボイスが久しぶりの勝利。
マイルチャンピオンシップでは日本ダービー馬になると言われていたサッカーボーイが朝日杯以来のＧ�毅仮〔椶髻�
古馬をまったく相手にせず、貫禄のある走りを見せたのは今年の３歳世代が強いからだろうか？
それは、来年になってからハッキリと証明されるだろう。
牝馬戦線は春と同じように混戦気味だったと言い切っても良いくらい、勝ち馬との差が無かった様に感じる。
秋華賞はシヨノロマンが春の善戦を返上して、遂にＧ�鞠呂砲覆辰燭�エリザベス女王杯では又も善戦。
そして、エリザベス女王杯を制したのはマックスビューティー、スランプ気味だったが久しぶりの勝利を味わった。
朝日杯フューチュリティスＳを勝利したのは前年と再現と言っても良いほど、同一しており、父が違うだけで後はまったく一緒。
勝ち馬の名はサクラホクトオー。
阪神ジュべナイルフィリーズの方は、カッティングエッジが３連勝のオマケ付きで連勝を飾った。
そして、ダート――ジャパンカップダートではフェートノーザンが地方馬代表として存在感を見せ付けた。
来年の競馬に向けて、３歳馬が、古馬がどのような競馬をするか実に楽しみだと言えるだろう。
名雪は競馬雑誌に書かれている今年一年の短評を読んでから、パタンと背表紙を閉じた。
Kanonファームには大量の雪が積もって、辺り一面も純白な世界を作り出しており、新雪の上を馬が駆ける。
クッキリと蹄鉄の後が残っており、辿った跡が良く分かる。
現在は３頭の繁殖牝馬――フラワーロック、ファントム、クイーンキラが放牧されている。
エターナルの方は３００万で中小牧場に売れたので、新天地で頑張っている所だろう。
秋名が予想していたより１００万多く、売れたのは僥倖と言えるくらい幸運だった。
売られたとは言え、Kanonファームを支えてきた牝馬なのだから、これからの成績がどうなるかは気になるだろう。
競走馬時代から、走るのは遅かったので直ぐに追い付かれてしまうのも日常茶飯事。
「まったく、臆病すぎるよ」
名雪は柵越しにクイーンキラの鼻筋をゆっくりと撫でているが、その表情は実に呆れが混じっている。
端麗の眉が八の字になりながらも撫でている事はやめておらず、暫くはこのまま続いていた。
「んー、まぁ繁殖牝馬として成績を残してもらえれば良いか」
名雪はうんうんと自己完結しつつ、サッと撫でるのを止めて厩舎に向かって行った。
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この話で出た簡潔競馬用語
注１：スーパークリーク……ノーアテンションにインターメゾと言うステイヤー血統。
注２：ぺイザバトラー……この年のジャパンカップの勝ち馬だが、重賞勝ちは１つしかなかった。
注３：シヨノロマン……桜花賞２着、オークス５着、エリザベス女王杯２着で実際にはＧ�犠，舛鰐気ぁ�
注４：サクラホクトオー……兄サクラチヨノオーがマルゼンスキーで本馬はトウショウボーイ。
注５：カッティングエッジ……実力はあったのだが、実際はＧ�犠，舛鰐気ぁ�