ジェットボーイが洛陽ステークスを勝った事でオープン入りを果たした。
OP馬になったと言う事は、より強い相手とレースをする事になり余計勝ち難くなる。
現時点の短距離戦はニッポーテイオー、フレッシュボイスなどの強豪がおり、G�競�ラスでもダイナアクトレスなどがいる。
更にOPクラスではセントシーザーが長い期間、この場所で頑張っている。
なので、ジェットボーイはいきなり高い壁を越えなくてはならないのだから、厳しい。
1600万下までは楽に勝ち上がってきた馬が、OPの壁に跳ね返されてころころと負けるのは珍しくない。
絶対的な能力が高い馬なら、OP戦を軽く飛び越えて重賞制覇どころかG�祇�覇をしてしまう。
「まぁ、ジェットボーイはそこまで強い方だと思っていませんが」
秋子は洛陽ステークスを勝った時のジェットボーイのレース振りを見逃して――秋名が録画し忘れており見れていない。
ちょっぴり、秋子はこめかみに青筋を浮かべつつ、ジッと眼を細めて秋名を見据えていた。
その視線に秋名は耐えられなくなったのか、ウッと呻いて視線を逸らしてからこめかみ付近を人差し指で掻いている。
秋名の様子を見て秋子は小さく吐息を吐き出して、もうこの事良いです、と口にした。
秋子の許しを得ると、秋名はもう一度キチンと一言謝ってこの事は終息した。
さて、ジェットボーイの次走。
中京芝1200mで行われるテレビ愛知オープンとなったのだが、最近の出走は殆ど関西圏が多い。
そのせいか、あまり体重が増加せずマイナスを辿っていく事が多い。
関東――東京競馬場で行われる5月と6月のOP戦にはダート1400mの欅ステークスしかない。
この欅は第3コーナーの内側にある木がモチーフになったレース名だが、実際は既に枯れて榎になっている。
なので、このレース名はあまり現在の意味とは異なっていると言えるだろう。
「欅Sはちょっと、厳しいと思いますね」
地方交流レースのステップにもなるので、骨があるメンバーの出走が多くなる事もある。
テレビ愛知オープンなら中京で行われ、秋に向けて休養する馬が多いので出走メンバーはそれなり。
ジェットボーイ見たく、1600万下を勝ちあがったばかりの馬が賞金確保をするために出走することが多い。
「この後は放牧となっているんだよな?」
「ええ、そうですね」
秋子は受話器の横に置いてあるメモ帳と取るために立ち上がって、確認をすると頷いている。
この事が分かると、秋名はテーブルに置いてあるコーヒーカップの中身を飲み干してから放牧地に向かう。
放牧地には現1歳の牡馬と牝馬が別々に放牧されている。
繁殖牝馬は2頭とも無事に受胎しており、第一段階目の安泰であった。
祐一と名雪はお互いにサポートするように世話をしており、秋名はその様子を見て嬉しそうに笑った。
「大分上手くなったな」
秋名が2人に声を掛けると、馬を曳きながら祐一と名雪は柵まで近づいてくる。
2人は嬉しそうな表情になっており、手綱を持っているのではしゃぐ事は出来ないが言葉にして喜んでいる。
秋名は昔上手に馬を扱えなかったのだが、こうして見ると名雪と祐一が馬に慣れているのが分かる。
「そういえば、こんなのがあったな」
唐突に何かを思い出したのか、秋名はデニム生地の色褪せたジャンパーから4つ折りに畳み込まれた紙を取り出す。
秋名は柵の隙間から1枚の紙を渡し、2人はお互いの顔がくっ付く程接近してプリントに視線を落とす。
その紙には草競馬大会と書かれておりその下には、ほのぼのさを思い起こす馬の絵が書かれていた。
そして、祐一と名雪は最後の方まで眼を通すと、参加したいと言う事を口にはせず、ジッと秋名を見る。
OKOK、と秋名はニンマリと笑って柵越しだが祐一の頭に手を伸ばし、強く撫でる。
「名雪ちゃんも出るだろう?」
さあ? と肩を竦める名雪だが、その顔は出られるなら出たいと言いたげ。
祐一は何故か、ジッとプリントの一箇所を見続けており、秋名は気になったのかサッと取り上げてその部分を見る。
「優勝者はゲーム機本体プラスゲームカセットが賞品です……か」
あほ、と秋名は一言呟いてから祐一の頭を軽く叩いた。
戻る ← →
この話で出た簡潔競馬用語
注1:ダイナアクトレス……この小説ではG�気肋,辰討い襪�、実際は未勝利である。
注2:セントシーザー……旧年齢で7歳まで走り続けた短距離馬。