――今年1年の競馬が終わった。
シンボリルドルフがアメリカのサンルイレイSで故障発生した事で、暗雲がたちこめた。
古馬戦線は上記の通り、ルドルフが引退した事で絶対王者が不在になってしまった。
代理王者――2番手にはミホシンザンが候補だったが、日経賞後に骨折をしてしまい、長期離脱。
代わりに天皇賞・春を勝ったクシロキングだが、絶対的な評価は与えられず、その後に宝塚記念に出走。
が、このレースを勝ったのはイギリスから持ち込み馬――パーシャンボーイだった。
しかし、ここでも王者は誕生せず、屈腱炎を発症してそのまま引退してしまった。
秋になってからは、サクラユタカオーが天皇賞・秋を勝ったがジャパンカップでは相変わらず海外馬が優勝していった。
冬のグランプリ――有馬記念では今年のダービー馬ダイナガリバーが優勝した事で古馬はG�気鬘云,困鎚�け合った。
クラシック路線は史上初の牝馬3冠馬メジロラモーヌが誕生した事が話題になったが、有馬記念の後に引退した。
牡馬戦線も古馬戦線のようにそれぞれ1冠ずつ分け合い、最終戦の菊花賞はメジロデュレンが夏の上がり馬らしく優勝。
菊花賞に皐月賞馬が出ていないと言う事情もあるのだが、ダービー馬を2着にした事は評価出来る。
短距離路線も手薄な状態になってしまい、高松宮記念はタカラスチールが安田記念はギャロップダイナが優勝。
秋になるとギャロップダイナは海外遠征してしまい、ここでも王者不在になるかと思われた。
スプリンターズSでニッポーテイオーが優勝して、マイルチャンピオンシップでもタカラスチールに鼻差の2着。
最後に紹介するダート路線は春と変わらず、カウンテスアップの圧倒的な強さを見せ付けられたと言える。
去年と違い今年はジャパンカップダートに出走したが、今年のケンタッキーダービー馬ファーディナンドが勝利。
一流の地方馬とは言え、まだまだ海外馬との差は果てしなく高い壁と分かる。
そして、年度代表馬は下記のように選考された。
年度代表馬:ダイナガリバー
2歳牡馬:メリーナイス
2歳牝馬:コーセイ
3歳牡馬:ダイナガリバー
3歳牝馬:メジロラモーヌ
4歳以上牡馬:サクラユタカオー
4歳以上牝馬:タカラスチール
内国産馬:該当なし
短距離馬:ニッポーテイオー
ダート馬:カウンテスアップ
来年には、どういう馬が誕生するか楽しみにした方が良いだろう。
暫くは今年のように王者が現れないかもしれないが、クラシック路線は大物が居るかもしれない。
秋名が愛読している競馬雑誌に書かれている“今年のダイジェスト”のページは夜風によって捲れていた。
去年のKanonファームの成績は15戦4勝2着2回とそれなりだった。
ジェットボーイの取得賞金の80%が秋子の元に入ってくるので、500万下と道新スポーツ杯を足すとおよそ1200万。
地方の賞金もあるが、それほど高くないので200万ほどが手元に残った。
れんげ賞の賞金も含めるともう少し多くなるが、雀の涙の量なので足しにはならなかった。
中央と地方の厩舎に支払う年間預託料がおよそだが600万ほど。
牧場の運営費が年間120万ほど掛かり、育成牧場が8月から12月まで80万ぐらい掛かっている。
「プラス400万ぐらいですね」
「去年に比べると結構黒字だな」
秋子はほっそりとした指先で電卓を叩いて、計算結果が出て喜びを顔に表す。
秋名は去年の収入を思い浮かべたのか、進歩したのか? と呟く。
「トウショウボーイ産駒が売れたのは足さないのか?」
410万で売れたが、種付け料と育成費で赤字になっているので足しても無意味だった。
「今は赤字ですけど、生産者賞が入ればプラスになると思います」
「なるほど」
秋名は小さく頷いて、納得をしたようだ。
それから、秋子と秋名は湯気が立っているコーヒーカップに口を付けて飲み始める。
暫くして秋子は畏まったようにキチンと座りなおして、秋名に向かって頭を下げる。
秋名も釣られるようにワンテンポ遅れて頭を下げた。
「今年も宜しくお願いします、姉さん」
「ああ宜しくな、秋子」
外から僅かな音が繰り返してと鳴り響き、除夜の鐘が突かれている音がKanonファームまで届いていた。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:メリーナイス……この年に朝日杯を勝った馬であり、父コリムスキー。
注2:コーセイ……3歳牝馬S(東)のみの勝ち馬だが、この作品では阪神ジュべナイルフィリーズの勝ち馬。
注3:メジロデュレン……嵐山特別から、菊花賞を制した夏の上がり馬。
注4: ファーディナンド……この年のケンタッキーダービー馬であり、父ニジンスキー。