周辺の木々の葉が黄色、赤に染まっており、秋になったのが実感出来る日々に。
いくら秋が近づいてこようが、Kanonファームの事業は楽にならない。
従業員は4人――そのうち子供が2人。
馬の数が少ないのでまだまだ楽とも言えるが、これ以上増やすと負担が増えるのも確か。
今だって、ギリギリの生活に近く借金をしていない分マシであった。
地方所属馬は5頭いたが、関西地区に所属していた2頭は引退して、残りは関東と東北に1頭ずつ。
つまり2頭しかいないのが実態。
そして、中央に所属しているジェットボーイが1頭で秋子が所持している現役馬は合計3頭。
重賞勝ち馬はいないのだが、コツコツと賞金を運んでくれるのは助かっていた。
が、それもちょっとピンチに陥る状況になってしまったのが、秋子を悩ませている。
ジェットボーイが飛節の炎症を起こしたため、復帰戦がちょっとばかり遅れるとの事。
飛節とは後ろ脚部分にあり、推進に役立てる部分なので治す事が先決である。
この飛節の角度が極端過ぎるより、適度な角度がある方が良い。
ジェットボーイは至って平均的なので問題は無いが、炎症を起こしたので休養が伸びるのは変わりないが。
「これは痛いです」
「1ヶ月ぐらいだろう?」
秋名は気楽そうにブラックのコーヒーを飲みながら、秋子に問いかける。
軽度ですのでそれくらいですが、と秋子はテーブルに肘を乗せつつ、こめかみを押さえる。
とにかく、暫くは地方馬に頑張ってもらうしかないのは確定した。
――さて、秋のG�義阿帽圓錣譴襯肇薀ぅ▲訶�な意味合いを持つ重賞はそれぞれこのような結果に。
ダービー馬のダイナガリバーはセントライト記念を4着と秋初戦を落としてしまった。
牝馬2冠のメジロラモーヌは初戦をローズSにしたが、春に比べると着差は広がらず、首差となった。
史上初の牝馬3冠に黄信号が点った。
牡馬と牝馬クラシック3冠目はそれぞれ春の活躍馬が勝利出来る確立は減ったと見られるファンが多いようだ。
古馬路線は天皇賞・春の後に骨折をしたサクラユタカオーが毎日王冠から始動する。
古馬勢力にはミホシンザン、クシロキングがいるが天皇賞・秋――距離2000mでは厳しい見方が出来る。
短距離路線はギャロップダイナが海外遠征した事でポッカリと大きな空洞が出来上がってしまった。
フランスのG�気鬘伽鐐�ったが、いずれも惨敗だったと記しておく。
ジャックルマロワ賞とムーランドロンシャン賞の2戦を。
この後は天皇賞・秋を目指す様なのでマイルチャンピオンシップには出走しないのが陣営の意志らしい。
代わりに短距離を引っ張る馬は現在の所タカラスチールが候補だが、2番手はこれと言う馬が居ないのも事実。
10月に行われるスプリンターズSで絶対的な王者は現れるのだろうか。
と、G�祇錣悗帆鮎ダ錣妨�けてのコメントが書かれていた。
その頃、リビングでは馬名決めで祐一と名雪が揉めていた。
それぞれ、鹿毛の牡馬と栗毛の牝馬に付ける名前の担当は決まっているのだが、お互いに駄目だしをする。
名雪曰く、祐一はジェットボーイの馬名を付けたんだから両方譲って、など強引に決めようとして争う。
9文字の制限があるので、お互いにオーバーする事が度々。
けれど、決まらない。
「ネタが無いぞ」
「……わたしもだよ」
お互いにガッカリと肩を落として、溜息を吐く。
あきらめるか? と秋名はからかう様に言うが、祐一と名雪はブンブンと擬音が付く勢いで首を横に振る。
「自分で決める」
「秋名さん、楽しみを取る気?」
まさか、と言いつつ秋名はギュギュと煙草を灰皿に押し付けていた。
ほんのりと暖かい飲みかけのコーヒーを飲み干して、2人の頭を撫でてから立ち上がる。
「焦って決めなくても良いぞ」
基本的にデビュー前までに馬名が決まっていない馬の方が多いのだから、秋名が言う事ももっともである。
馬名が決まるまでは母馬の馬名と生まれた年を組み合わせたのを使用。
現在の1歳馬と0歳馬も、〜の85と〜の86と呼ばれているので、味気ないのは確かだった。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:サクラユタカオー……テスコボーイの血を引く中距離のスピード馬。
注2:ジャックルマロワ賞……ドーヴィル競馬場で行われる直線1600mのG�機�
注3:ムーランドロンシャン賞……ロンシャン競馬場で行われるG�機�