11月も半ばとなり、来期に向けての休養に入る馬も居れば、少しでも賞金を稼ぎ重賞戦線に出走を目指したい陣営もある。
そして、この時期になると引退レースの日程が決定し、日に当たって有終の美を飾る馬も居れば、3歳未勝利のまま消えていく無名馬も。
サラブレッドの一生から紐解くと必然的に後者の方が数が多く、家畜行商に売却されて終える方が多いのだから。
そんな中でKanonファームの生産馬はジュエルバレーの引退が決定した。
10月の500万下で調整ミス+出遅れ+入れ込み+タイムオーバーと不運が重なり続けて、惨敗したのがきっかけともいえる。
それだけで引退させるのには理由が弱いが、調教中に軽度の骨折を発症してしまい、それが決め手となってしまった。
そして、成績は7戦2勝で兵庫チャンピオンシップ3着が最高の結果だった。
父ウインドバレーに似たダート巧者で、重賞制覇もあり得ると思われていたが運の無さがジュエルバレーを示している。
結局、2勝のみだったがウインドバレー産駒として、勝利したので僅かながら種付け数を増加させた孝行息子であった。
「残念ながら、ここで引退ですね」
「早熟の可能性が高いしな。2勝しただけでも十分だろう」
「兵庫チャンピオンシップの3着がピークだったんだろうね」
名雪が言う通り、兵庫チャンピオンシップの後は2戦続けて人気になったが9着→12着と転がり落ちていったといえる結果だったのだから。
ともあれ、これでジュエルバレーは引退となり、秋子の現所有馬は9頭となった。
さて、今週の競馬は東京競馬場でジャパンカップとジャパンカップダートの異なるG�気�開催される。
去年のシングスピールに続く実力馬で、ピルサドスキーという超大物の来日に沸きだっている。
独、米、英、愛の4ヶ国でG�気鮴�しており、どのG�気盂胴颪任錬盈�に分類されているのだから。
そんな馬が5ヶ国目のG�祇�覇の目標として定めたのが、今年のジャパンカップであった。
「あんな馬をこれからは生産しないと駄目ですね」
「そうだな……ダービー制覇するにはああいう馬を生産するのが1番の最短距離だろうな」
「あそこまで行くのにどれだけ時間が掛かるか分からないけど、いつか手に届くと良いな」
3人の向かう方向は共通しており、そんな事を口にしながら生産馬の出走を待つ。
本日、出走するのは新馬戦を勝利した以来となるジャッジアローと新馬戦で2着だったアリスインターフの2頭。
それぞれ、500万下と未勝利戦に出走する事になっている。
距離は1400mと1800mで、前走よりも距離延長された状況だが、問題無いと思われている。
「本当は北海道2歳優駿に出走させる予定だったんですけどね」
「夏バテになったのが原因だからな。仕方ないだろう」
「そのため、ここはあっさりと勝利してOPクラスに昇格して欲しいけどね」
ジャッジアローの評価は概ね人気通りで、前走を楽勝しただけあって2番人気に支持されている。
2番人気なのは飢えた視線を持つ競馬ファンからの評価――4ヶ月ぶりの出走がどう響くかが見られているのだろう。
夏バテで出走出来なかった事情が浮き彫りになったが、パドックでの足取りは悪くない状態。
即ち、普段通りの実力は出せる状況には違いない。
「さて、どうなるかな?」
ジャッジアローはゲートに入ると綺麗なスタートを披露して、単独で逃げる格好になったが、騎手は下げることなく走らせる。
2番手の馬が勇敢に先頭を奪いに来るが、ジャッジアローは悠々と相手にせず、駆けていく。
ペースは平均よりも早いくらいだが、ジャッジアローは無理した様子を見せていない。
「意外と走るな」
「ええ、休み明けの影響が殆ど無い様ですね」
そして、結果は東京競馬場の長い直線を逃げ切って、2着に1馬身の差を付けて2連勝を飾った。
続くアリスインターフは持ち前のスタミナを生かして、最後方からまくり12頭を交わして初勝利を飾る。
距離延長が合っていたのか、牡馬相手に勝利した事は今後に繋がるのは確実であった。
「これで2歳馬の中で未勝利なのはシリウスロードとスタールビーだけだね」
「そうだな。後はその2頭が勝利すれば2歳馬は全頭が勝利した事になるな」
話を聞いていた秋子は小さく頷いてから、残り2頭の勝利を期待するような表情になっていた。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ピルサドスキー……バーテン大賞、ブリーダーズCターフ、アイルランドチャンピオン、エクリプスSを制している。