「勝ったのはタイキシャトル!! 無敗の短距離王者が今、ここに誕生しました」

 

     そんな実況が掻き消えるように観客の歓声で包まれ、新たな王者の誕生を祝うようにタイキシャトルのコールが響き渡る。

     暫定や実質的にではなく、これで6戦6勝――スプリンターズS、マイルチャンピオンシップの2勝が含まれているのだから。

     更に、ユニコーンSとセントウルSの重賞2つを勝利しており、これだけの成績を残してケチをつける者は一切居ないだろう。

     居たとしても極少数派の意見で、競馬ファンに結びつくような物では無いのだから。

     2着と3着にはキョウエイマーチとシーキングザパールの3歳牝馬勢が古馬を抑えて勝利したので、本当に今年の3歳馬の質は厚いと伺える結果。

     来年も世代を引っ張る存在になり得るのは確定済み、といえる様なもので今までの古馬が情け無さ過ぎた。

     ダイイチルビー、ノースフライトとマイル路線で活躍した牝馬2頭はレベルが高かったが牡馬はヤマニンゼファーまで遡らなければレベルが高い馬は居ない。

     そこに3歳馬のタイキシャトルが誕生したのだから、盛り上がるのは必然だろう。

     そして、Kanonファームの生産馬であるダンシングウイナーは前走のスプリンターズSと打って変わって6着と惨敗してしまった。

     道中は良い形で走っていたのだが、直線に入ると突然失速しズルズルと交わされてしまった結果である。

 

    「うーん……ホワイトファントムが菊花賞を勝利した事でG�気鯱⊂,垢襪�と思っていたんですけど、現実は甘くないですね」
    「その結果だったら私も嬉しかったがな。そう上手くいかないだろう」
    「G�気鯱⊂,垢觧�態が大手以外はあり得ないからね。そこまでに辿り着くのはどれだけ掛かるんだろう」

 

     3人は負けたダンシングウイナーの成績を眺めてから、深く溜息を吐いてしまい、余程この結果が気に食わないのが分かる。

     シーキングザパールを抑えて3番人気だったとはいえ、大きく惨敗した6着では奮わなさすぎて次走を考えなければならない。

     スプリンターズSでタイキシャトルの2着になったのはマグレの可能性が出てきてしまったのだから。

 

    「1600m、1200mから再び400m距離延長したから、ダンシングウイナーが戸惑った可能性はあるかな?」
    「そういえば、1200m戦は3歳時のファルコンS以来だったな。それ以来なら距離を伸ばせば戸惑う可能性もあるな」
    「取り敢えず、調教師から何事も無かったという連絡が来るまで待つだけしか手段はありませんね」

 

     故障という可能性も捨てきれないので、無事だという事を願うしか無かった。

     そして、数時間後に調教師から一本の電話が鳴り、その内容は疲労が溜まっておらず、故障した様子も見られないというもの。

 

    「つまり、手を抜いて走った可能性が高い訳ですか」

 

     秋子の言葉に調教師は言葉を濁しながらも肯定した様で、電話越しで謝っている姿が想像出来る。

 

    「この後は出走予定の重賞もありませんし、放牧して来期に備えた方が良いのでしょうか?」

 

     秋子の質問は適しているかは不明だが、既に短距離G�気粒�催は無く重賞を2つ勝利しているダンシングウイナーは収得賞金を十分稼いでいる。

     そのため、無理に冬の間に出走させる必要は無いので休養に充てる事が可能であった。

     暫くの間はそのやり取りが続いていたのか、秋子が折れて溜息を吐いてしまう。

 

    「……分かりました。CBC賞に出走させてから放牧ですね」

 

     そう言ってから、秋子は受話器を元に戻して、ダンシングウイナーの次走を      CBC賞だという事を2人に告げる。

     12月の中京で開催される1200mの重賞――G�靴任△蝓△修譴覆蠅離瓮鵐弌爾�集まりやすいのが特徴。

 

    「京都金杯から始動するかと思っていたんだがな。もしかして高松宮記念を目指す予定なのか?」
    「そのようですね。1200mの出走自体が少ないからわたしは厳しいと見立てているんですけどね」
    「わたしはそろそろズブくなって1800mとかに距離延長しても大丈夫だと思うんだけどね」

 

     既にダンシングウイナーは来年になれば6歳と高齢になってしまい、名雪が言う通りズブくなっていてもおかしくはない。

     本来なら引退してもおかしくない年齢だが、まだ出走数が同期に比べると少ないので馬が若いのは確か。

 

    「もうちょっと奮闘していれば、ここまで悩む必要も無いんだがな」

 

     秋名はオーバーリアクションに肩を竦めてから、まだ湯気が出ているホットコーヒーを口に付けて一息吐く。

 

    「引退するかは“来年”考えておきましょう。現状はCBC賞を目指す予定で」
    「そうだな。来年になったらG�気暴仭�出来ない可能性も考慮して、CBC賞に出走した方が良さそうだ」

 

     と、ダンシングウイナーのCBC賞出走は否定的な意見もあるが、あっさりと決定して、参戦する事になった。

 

 

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     特になし。