菊花賞。
現代のスピード競馬に相応しく無い3000mという長距離で開催されるG�気如�多くの勝ち馬はステイヤーと呼ばれる1流馬が制してきた歴史が。
昔からの格言である菊花賞は強い馬が勝つといわれていた時代もあったが、スローペースで切れる馬が台頭しやすい状況では形骸化してしまっている。
だが、それでもクラシック3冠の最終戦として名実と共に狙う馬が出走しているのは事実。
それだけクラシック勝利の栄冠は重くて輝かしく、長い歴史が詰まったレースなのだから。
そんな歴史のあるレースには、ここまで無事に駒を進めた18頭の精鋭が今年出走する。
主に皐月賞とダービーを善戦を続けたメジロブライト、京都新聞杯を制しているシルクジャスティス。
神戸新聞杯を勝利し、駒を進めたマチカネフクキタルとそれなりにメンバー出走している。
だが、本来なら圧倒的1番人気に支持されていてもおかしくなかったサニーブライアンが屈腱炎で戦線離脱したのが、今年の菊花賞である。
それを補う――残り1つの席を奪い合うのが18頭の出走馬だが、G�鞠呂�1頭も居ない状況なので混戦に極まっている。
「本当に今回は混戦ですし、ホワイトファントムにチャンスが巡ってきましたね」
「ああ、ステイヤーと呼べそうなのはメジロブライトとマチカネフクキタルのみだしな。去年のアイシクルランスより上にはなりそうだ」
アイシクルランスは去年の菊花賞で惜しくも“2着”だったので、今年は同じステイヤーのホワイトファントムに賭ける意気込みがある。
それだけ血統の裏づけがあり、大舞台に強かったメジロデュレンの血が騒ぐ可能性を秘めているのだから。
「まぁ、人気は丁度真ん中ですし、あまり注目されていないですね」
「それは仕方ないだろう。クラシック路線で戦い抜いてきたメジロブライトの様に実績がある訳ではないからな」
現在、OPクラスとはいえ重賞に未出走なので、この評価は仕方が無い。
それでも2600m戦を勝利している事は一部の競馬新聞では評価されており、“注”などが推されている。
そして、他の新聞はメジロブライトを中心として評価していたりして、シルクジャスティスを本命としている所もある。
どの新聞も短評には混戦と示しており、京都競馬場に居る秋子と秋名を含んだ競馬関係者も同様の考えなのだから。
「やはり、水瀬さんのホワイトファントムがチャンスありそうですね」
「あら? そちらにもチャンスはあると思いますが?」
「私の生産馬では距離がやっぱり厳しいと思うんですよ。正直、回避して天皇賞に回った方が良かった気もします」
「戦う前にそんな事を仰ってますと、低評価に馬が反発するかもしれませんよ」
秋子の言葉には重みがあったのか、その馬主は納得したように頷いて豪快に笑いながら、秋子にお礼を言う。
その表情は晴れ晴れしく吹っ切れた顔だった。
そして、各馬は向こう正面に続いている京都競馬場の形を表した出っ張り部分ともいえる箇所に設置されたゲート前で決戦を待っていた。
スターターが赤旗を振るい、京都競馬場特有のG�汽侫.鵐侫 璽譴�演奏隊の腕によって楽器が音色を奏でる。
それに合わせて観客は丸めた競馬新聞で場を盛り上げるように手拍子を繰り出して、その間に各馬はゲートに収まっていく。
ホワイトファントムは絶好枠の1枠1番と逃げ馬にとっては最高の枠からレースを進められる。
最後に8枠18番の馬がゲートに入り、スタートが切られると大歓声と共に各馬が一斉にゲートから飛び出す。
展開は戦前の予想通り、ホワイトファントムが単独で逃げの体勢となって、2番手の馬を引き離して、3000mという長馬場を駆けていく。
メジロブライトは馬群の中団辺りでそれよりも後ろにマチカネフクキタルで、シルクジャスティスが後方16番手となっている。
佐祐理から乗り代わって2戦目の騎手はホワイトファントムを手の内に入れたのか、しっかりと折り合って2番手以降をじわりと突き放す。
1周目の直線に入り、大歓声が響き渡り入れ込む馬も出てきたが上位人気は物とせず観客席の前を駆けていく。
ホワイトファントムは少しずつペースを緩めたのか、2番手との差が僅かに埋まって4馬身近くあった差が3馬身になってしまう。
だが、余裕が無くなった訳ではなく、まだしっかりと脚を伸ばして残り半分の距離を通過した。
この辺りから後方の馬がじわじわと差を詰めてきており、レースの終わりが近いということが伺える。
そして、相変わらず先頭を駆けているホワイトファントムは京都競馬場の3コーナーから最終コーナーにかけての下り坂を下っていく。
ここから、メジロブライトとシルクジャスティス、マチカネフクキタルが上昇しホワイトファントムを射程圏内に捉える。
直線に入りホワイトファントムのリードは3馬身から2馬身と徐々に縮まってしまう。
外から豪快な切れ味を発揮してマチカネフクキタルがメジロブライトを交わし、シルクジャスティスを置き去りにしてホワイトファントムに牙を剥く。
だが、残り100mになってもホワイトファントムは抵抗を続けてマチカネフクキタルを押さえ込んでいる。
そして、両頭が揃ってゴールイン。
僅かの差――ターフビジョンに映された写真判定では1枠1番のホワイトファントムが鼻差凌いで勝利していた。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。