秋華章の勝者は春にオークスでキョウエイマーチにリベンジしたメジロドーベルが続けて勝利し、決着に終止符を打った。
牝馬3冠は見事にメジロドーベルとキョウエイマーチが分け合う結果だったが、3歳牝馬の質は例年よりも高い印象も付けたのは確実。
3着と5着に入ったキョウエイマーチとシーキングザパールは距離の不安と戦いながら掲示板は確保して大崩しない実力を見せ付けた。
ルビーレイは春と同じく善戦空しく自身の前を駆ける馬に1歩届かず、2着に敗れたが3歳牝馬の中では最上位の実力だろう。
4着のタツマキマキマスカは夏の厳しいローテーションを耐えての入着だったので、今後の活躍が期待出来る。
と、掲示板に載った馬は同世代の牝馬では抜き出ており、古馬相手でも勝利しても勝利するといわれている。
これでエリザベス女王杯に向かい3歳牝馬VS古馬の対決は確実と見られたが、現在は流動的な状況。
ルビーレイは出走予定に含まれているが、メジロドーベルとタツマキマキマスカは回避予定の公算が高い。
キョウエイマーチとシーキングザパールはマイルチャンピオンシップを予定しているので、ルビーレイのみとなり得る可能性も。
「この後はキョウエイマーチとシーキングザパールとは戦えそうも無いね」
「短距離路線に向かうのは確実だろうし、タツマキマキマスカとは居る場所が違うからな」
「でも、うちの馬ならダンシングウイナーがマイルチャンピオンシップで3歳牝馬の2頭とぶつかるでしょうね」
「それとタイキシャトルも居るからね。本当に今年の3歳馬は質が高いね」
名雪はそんな事をボヤキながらも、その表情は嬉しそうで競馬のレベルアップに繋がるのは歓迎しているのだから。
テーブルの上に置いてある競馬新聞には秋華賞を制したメジロドーベルの写真が大きく掲載されており、次のページには菊花賞の展望が書かれていた。
今週は秋華賞に続いて牡馬クラシック最終戦なので、どの陣営も日本ダービーよりも距離が600m長い菊花賞を如何に乗り切るかが争点としている。
どの陣営も初距離となる3000mに不安を持っているようだが、距離適正は大丈夫と見込んでいるようなコメントが散見される。
「うちのホワイトファントムに関しては、距離の不安は一切無いね」
ホワイトファントムは距離2600mを連勝したので、距離適正に関してはどの競馬新聞からも信頼されていた。
だが、実績面は他馬に比べるとまだ1600万下を勝利したに過ぎない。
その点だけは大きく他馬に劣っているので、重賞勝ちのある馬には敵わない。
「父のメジロデュレンと同じ様に夏の上がり馬らしく、勝利してくれればいうことは無いな」
父メジロデュレンとその半弟のメジロマックイーンは夏の上がり馬として、春先は無名馬だったが使う毎に成績が上向き、菊花賞を制した実績が。
秋名がいう事はその血を引くステイヤー血統だからこそ一発逆転で菊花賞を制して欲しいという願いが込められている。
「まぁ、今年の菊花賞の出走メンバーから見ると長距離適正がありそうな馬はメジロブライトとマチカネフクキタルくらいでしょう」
「……そうだな。メンバーから考えて今の所は心配する事は一切無いな」
収得賞金順位も菊花賞に出走するだけの順位なので、抽選という運試しは必要ない。
後は直前調教で絶好のタイムを出して、100%の仕上がりで出走するのみなのだから。
今週の競馬は京都で菊花賞が開催され、ホワイトファントムが最後の1冠を狙うが、もう1頭が別のレースに出走する。
その馬はジュエルバレー。
8月の噴火湾特別以来の出走となり、3勝目を目指して東京ダート1400mに出走。
再び500万下から昇格を目指すので、このクラスなら楽勝してもおかしく無いが厳しいという見解も。
「2ヶ月振りだけど、調子は良いんだよね?」
「そう聞いているわ」
「その割、体重が20kgも減少しているんだが、これは調整ミスだろうな」
2ヶ月の休み明けで馬体重が大幅に減少してしまってはどう見ても調整ミスでしかなく、これでは善戦も厳しい。
既に諦めに達した空気がリビングに充満してしまい、3人は一応注視しながらも、結果にならないと思っている為、真剣に見ている表情ではない。
そして、レースが発走となった。
ジュエルバレーは最悪なレース振り――大きく出遅れて道中は入れ込み、脚を無くしてしまう。
その結果、大きく惨敗しタイムオーバーという不名誉なおまけが付いてしまう。
これでジュエルバレーは1ヶ月の間、出走は不可能になってしまった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。