ジェットボーイの3戦目は中山芝1200mの500万下の平場レース。

     結局、決まったローテーションは500万下→ファルコンSとなり、OP戦は使わない事になった。

     ここを勝てないと、春まで芝短距離のレース開催がなかなか行われないのでG�靴暴仭�が不可能になる。

     あまりこの時期に芝のレースが行われないのは、芝が傷みやすい状態になりやすいからである。

     ボロボロに禿げた芝でレースを行うと落馬や故障発生などがある。

     国際化を目指す協会としては、禿げた芝では海外馬のG�汽譟璽垢悗両径垳討唸�みがしにくい。

     なので、冬に芝レースが少ないのは芝を保つ目的でもあった。

 

 

     ジェットボーイは血統的には芝馬なので、ダートは苦手とも言える。

     父シャーペンアップは欧州で活躍した馬であり、母父リファールも同じである。

     ジェットボーイの馬体を横から見てもすらりとしており、ダート馬みたく胸板が厚くない。

     球節と蹄の間――繋ぎは長めで寝ているので一般的に言われる芝馬の足元であった。

     一般的と言われるが繋ぎが長めでもダートは得意という馬は多数いるのであまり当てにはならない。

 

    「この時期は芝レースが少ないからな」

 

     秋名はちょっと前に撮影したジェットボーイを横から撮影した馬体写真を眺めながら呟く。

     その写真では確かに繋ぎが長くて寝ているので、ダートは向かないと秋名は思っているようだ。

     ピンと秋名は指で写真を秋子に向かって弾くが、力無くテーブルの上に落ちる。

 

    「ダートも使えたら、うちの収入は黒字になりそうなんですけどね」

 

     秋子はジェットボーイのスクラップノートに写真を貼るために作業しながら口を動かしている。

     そこまで収入が悪いわけでは無いが、赤字と黒字を行ったり来たりしているので、どっちかと言うと悪い。

     残り4頭の地方所属馬がちょくちょくと入着を繰り返しているので、塵も積れば山となる。

     Kanonファームの月間支出は繁殖牝馬2頭に1歳馬1頭なので約20万。

     厩舎への預託料は厩舎によってまちまち差があるのだが、全て合わせて約150万ほどである。

 

    「地方馬のお陰で、そこそこお金はあるんですけどね」

 

     4月には中山競馬場で行われる競馬協会主催のブリーズアップセールがある ので出来るだけ資金を増やしたい所。

     このセールは協会が牧場で生産された良い馬探して買い取り、安く馬主に提供するのが目的。

     最低価格は400万辺り、最高価格は4000万辺りだがこのセール出身の重賞馬もいる。

     新規馬主にとっては買いやすく、信頼の置ける場所。

 

    「そういえば、とっくにジェットボーイの購入費はプラスだよな?」

 

     日本円で約460万の値段で購入したので、未勝利の1着賞金と新馬戦の2着を合わせれば既にプラス。

     まぁ、と秋子は呟いてから一言。

 

    「輸送費、預託料を合わせると全然マイナスですけどね」

 

     そうぼやいてから、2人は乾いた笑い声を出してから深く大きな溜息を吐いた。

     2人が笑い終わると、暫くリビングの空気は重苦しい物となって低気圧が迷い込んだ状態になってしまった。

 

 

     場所は変わって、牧場の外。

     牧場周辺の山は真っ白に染まっており、まだまだ振り続ける雪が視界を閉ざしかかる。

     牧場も真っ白になっており、派手な色の馬服を掛けられた馬が放牧地の中を歩いていた。

 

    「どう?」

 

     名雪は自分より、僅かに高い馬をリードで引っ張り、その場でぐるりと旋回させる。

     馬が歩いた跡にはきっちりとU字型――蹄鉄の足跡が出来ていた。

 

    「……凄いわね」

 

     ポツリと呟いたのは、黒い毛糸の帽子を被ってデニム生地のジャンパーを羽織っている名雪と同じ年齢くらいの少女。

     肩に掛かるくらいで僅かに茶色く染まっているウェーブヘアで、切れ長の瞳を馬に向けていた。

 

    「香里、触ってみる?」

 

     香里と呼ばれた名雪の友人は、恐る恐るといった感じだがゆっくりと馬の鼻面に手を伸ばす。

     最近、都会からこちらの方に引っ越してきた香里はTV画面に映っている馬ならともかく、生で見るのは初めてのようだ。

     今日、家族に連れられて挨拶に来た香里だったが、名雪の性格と馬があってか2人は直ぐに友人となった。

     Kanonファームへの挨拶が最後だったらしく、香里の両親だけは先に帰宅をして現在は名雪と遊んでいる状態であった。

     触れると思った時、馬は鼻息を鳴らして香里はギョッとして慌てて手を引っ込めてしまう。

     これが名雪の友人――美坂 香里が初めて馬と接した時になった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特になし。