秋子は電話でジェットボーイのローテーションを話し合っていた。
久瀬調教師の考えるローテーションは500万下→OP→G�靴箸いΑ�
逆に秋子は500万下→G�窟�G�気箸泙辰燭�、思想が違っていた。
秋子はアーリトンCからNHKマイルカップを目指して欲しいのだが、久瀬調教師が言う最大目標のG�靴魯侫.襯灰鵤咫�
距離適正からみるとジェットボーイは今の所、1000m〜1400mが良い所であった。
古馬になればマイルまでは持つかもしれないが、今は挑戦してみないと分からない。
なので、秋子と久瀬調教師の言い分はどちらもある意味は正しいと言えるだろう。
ただ、2人の結論はなかなか決まらないが、500万下だけは確定している状態。
秋名はローテーションを言う権限は無いので、新聞を読みながら聞き耳を立てているのみ。
もう既に、1時間ほどは話しているのだが結論が出ないまま、同じ事を繰り返して時間だけを消費している。
この日は結局、ローテーションは決まらずに後日まで持ち越しになった。
名雪は相変わらず、馬の手入れと鞍乗せを行っていた。
鞍乗せに関してはタオルは既にクリアして、次の段階に移行をする時だった。
鞍はレース用と同じ物――大体300g程の重さなので、名雪でも軽々に馬の背に乗せられる。
が、馬は鞍を乗せられると、嫌がる素振りを見せて逃げてしまう。
「まだ、腹帯を締めるのは無理かぁ」
ふぅ、と小さく溜息を吐いてからその場にしゃがみ込んでから、落ちた鞍を拾いに行く。
取り合えず、今は走り回っているので落ち着くまで鞍乗せは出来ないので、柵をくぐって放牧地から出る。
落ち着くまで、名雪はしっとりと濡れている柵に腰掛けて待っている。頬に手を当てながら、ジッと馬を見つめている。
「何時になったら、鞍を乗せられるようになるのかな?」
さっきよりもう一度、深く溜息を吐いてから馬の行動を見守った。
何回も挑戦していると、馬は鞍を乗せる事が慣れたのか逃げ回らなくなり、名雪は心の中でガッツポーズをしているのだろう。
まさか、今日中に鞍乗せが終わるとは思わなかったようだ。
「頑張ったね」
そして、名雪は馬の鼻面を撫でつつ、自分の額を馬の鼻面に押し付ける。
腹帯を締めるのは既に名雪より大きくなった馬体の下に潜るようにして締めるので1人では危険であった。
「お母さんは話し合いしているかも知れないし、秋名さんに頼もうっと」
名雪は腰に巻きつけていたリードを頭絡に付け、馬を引っ張り柵にリードを結び付けておく。
ちょっと待っててね、と軽く撫でてから名雪は傍を離れて、秋名を呼びに行く。
家に戻ると秋子は既に話し合いが終わっているので、暇そうに手持ち沙汰になっていた。
話し合いが終わっていると思わなかった名雪だが、秋名に頼む事を決めていたので秋名に話す。
ちょんちょん、と煙草を吸っている秋名の肩を突っつくと、秋名は曖昧に反応して名雪の方に振り返る。
「何だ?」
「鞍乗せ出来たから、腹帯を締めるので馬押さえて欲しいな」
秋子に頼めば、と秋名は言うが名雪はゆっくりと首を左右に振るので拒否権は無く、秋名は了承する。
ん、と気だるそうに煙草を灰皿に押し付けて揉み消して、ソファーに掛けていた革ジャンパーを羽織る。
煙草の匂いが染み付いているので、名雪は僅かに顔をしかめるが文句は言わずに、秋名を引っ張って連れて行く。
「ほら、ちゃんと鞍乗っているでしょう?」
「うん、これなら腹帯を締められるな」
がしがし、と名雪の頭を撫でて秋名は、放牧地の柵を乗り越えてから結ばれていたリードを外す。
後は名雪が腹帯を締めれば、この作業は1段落が終わる。
最初はギュッと締めないで緩やかにして、1時間ほど慣らしてから少しずつキツクする。
「人を乗せるのは何時ごろ?」
秋名は名雪の返答に詰まり、顎に手を添えつつ少しだけ俯いて考える。
1ヶ月後くらいかな? と秋名は呟きながら人差し指をピンと立てる。
およそなので物覚えが悪いともっと時間が掛かる事があるが、この馬はそんな事もなさそうであった。
ただ、性格はややのんびりとしており世話をしている人物――名雪に似てきたとも言える。
「……飼い主に似るって本当だな」
秋名は馬を撫でている名雪を眺めながら、聞こえないようにこっそりと呟いた。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:アーリトンC……阪神芝1600mで行われるG�靴任△襦�
注2:NHKマイルカップ……マル外ダービーと言われ、東京芝1600mで行われるG�気任△襦�
注3:ファルコンS……中京芝1200mで行われるG�靴任△襦�