メジロドーベルが制したオールカマーではアイシクルランスが半馬身差の2着に食い込んだが、その差は見た目よりも大きい結果。
スタート直後からハミを取った単騎逃げはキョウエイマーチを彷彿させる様な走りだった。
騎手がスタート直前から手綱を引っ張っていたら、入れ込んで惨敗した可能性もあり、騎手の好プレイがメジロドーベルの走りを引き出したといえる。
間違いなく、この騎手はメジロドーベルと共に成長しており、今の競馬では珍しい騎手と馬の成長物語になり得るだろう。
Kanonファームの生産馬であるアイシクルランスと組んだ騎手もそつなく乗りこなしていたが、勝者のコンビとはまた違う印象。
アイシクルランスは騎手の指示に従ってマークしていたが、これだけの実力差がメジロドーベルとあった事になってしまった。
とはいえ、メジロドーベルは古馬に比べて斤量の差が2kg軽いと言う恩恵もあったのは確か。
もしも、同斤量の57kgでレースをしていたら、また結果は違っていた可能性もあっただろう。
「まさか、逃げるとは思わなかったよ」
「あのまま、引っ張っていたら喧嘩したまま終わっていただろうし、騎手のファインプレイといえるな」
「騎手と馬が成長していくのが分かりやすい結果でしたね……祐一さんもあれくらいにならないと駄目でしょうね」
未だに祐一は重賞馬に騎乗する機会は与えられていない状況だが、コツコツと調教で信頼されている最中。
併せ馬の調教時だけは重賞馬を後ろから追いかけて、重賞馬の走りを観察して騎手としての糧を磨いている。
「まぁ、祐一はしばらく時間が掛かるんじゃない?」
「その可能性が高いわね……まだまだ見習いだし、来年以降に重賞で騎乗出来れば十分でしょう」
「その時に相棒となる馬を見つける事が出来れば、万々歳だな」
と、それぞれに好き勝手な事を言いながらも、3人は祐一が成長するのを期待しているのが伺えた。
秋華賞のトライアルレース――ローズSでは桜花賞馬のキョウエイマーチとNHKマイルカップを制したシーキングザパールが激突した。
その結果は打倒メジロドーベルを企むキョウエイマーチが2着のメイプルシロップに3/4馬身の差を付けて勝利した。
メイプルシロップはローズSが5戦目となる典型的な夏の上がり馬でデビューが6月の未勝利戦と非常に遅い。
だが、初戦で2着に入ると、その後は未勝利→500万下→1000万下と3連勝し、今回のローズSで秋華賞の出走権利を得た訳である。
逆にシーキングザパールは初めての2000mという事もあってか、メイプルシロップに1・1/2馬身の差で3着に敗れている。
今までの最長距離がフラワーカップの1800mだったので、今回は陣営にとっては申し分ない結果だろう。
次走の秋華賞が本番なので、間違いなく陣営は何かしらの手を打ってくるのだから。
「さて、ローズSの結果を見た限り、メイプルシロップも秋華章では警戒するべきでしょうね」
「そうだな。本来なら牝馬の上がり馬は無視しても問題無いが、これだけ強い牝馬が集まった中での2着は実力を有しているだろうしな」
「本当に今年の3歳牝馬路線はタレントが豊富だね。逆に牡馬は混戦気味と言われているのに」
メジロドーベル、キョウエイマーチとシーキングザパールの3強に、ルビーレイ、タツマキマキマスカの2頭と新気鋭のメイプルシロップ。
と、牝馬路線はレベルが高い。
それに比べて菊花賞は、2冠馬のサニーブライアンが屈腱炎を発症し出走は絶望。
メジロブライトとシルクジャスティスが牡馬を引っ張ると思いきや、メジロブライトは神戸新聞杯で上がり馬のマチカネフクキタルに敗れている。
そんな状況なので、現在の評価では菊花賞は混戦気味といわれる牡馬路線であった。
因みにホワイトファントムは伏兵扱いとなっており、その手の馬券が好きな記者からは注目されている。
閑話休題。
そんな訳で秋華賞は有力馬が一同し、激戦の中で勝利した馬だけがG�鞠呂両旅罎鯑世蕕譴襦�
上位人気と思われる6頭を除いても、他の馬もここまで駒を進めた馬なので軽視する事は出来ない。
「後、3週間か。随分と待ち遠しいね」
「3週間の間で、どれだけ調子を継続させつつ、100%の仕上がりで向かえるかが鍵だな」
「レース直前に故障して取り消すのは勘弁願いたいものですからね。ここまで来れば調教師の腕を信じるしかないでしょう」
と、秋子はこの会話を締め括り、競馬番組がスプリンターズSの直前調教タイム評価を放送中であったので、熱い視線はそちらに注がれた。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:メイプルシロップ……父はへクタープロテクター。
注2:マチカネフクキタル……実際は京都新聞杯→神戸新聞杯と連勝している。