ホワイトファントムがニューマーケットカップに勝利したのを続く様にタツマキマキマスカが秋華賞トライアル――紫苑Sに出走した。

     結果は2着に敗れてしまったが、無事に2席のうち1つである出走権利を得たので、この際敗れた事は目を瞑っておく。

     しかし、これで宮藤との約束を果たさせる事になるので、秋子はホッと胸を撫で下ろして嘆息を吐く。

     後は故障せずに秋華賞までの1ヶ月はしっかりと調教して、100%の体調で3冠最終戦に向かうのみ。

 

    「負けはしましたが、これで秋華賞への出走は確実になりましたね」
    「ああ。後は本番で結果を出すのみだが、今年のメンバーは質が揃っているので厳しいかもな」
    「そうですね……G�気旅膩彎〕�数は4勝もして、早い時期に能力が落ちてしまった馬が居ないので、そう考えると今年はレベルが高いですね」
    「この面子の中で走れる方が凄いかもれないな」

 

     今年の桜花賞とオークス、NHKマイルカップを勝利した3頭――キョウエイマーチ、メジロドーベル、シーキングザパールが。

     そして、Kanonファームの生産馬で桜花賞3着、オークス2着のルビーレイと豪華絢爛なメンバーが一同し、秋華賞を制覇しようとしているのだから。

     既にクイーンSで3着に入り、収得賞金順位で余裕のあるルビーレイ。

     トライアルからではなく、古馬混合戦から始動するメジロドーベル。

     ローズSで早くも秋華賞の前哨戦として、ぶつかり合うキョウエイマーチとシーキングザパール。

     中距離と言う牝馬に適した距離で3冠最終戦が行われるので、上位4頭は虎視眈々と勝利を狙っているのは確実。

     そんな中で出走するので、実績面では1歩劣るタツマキマキマスカでは厳しいという秋名の発言は否定出来ない。

     現状では伏兵に過ぎず、例えオークスで掲示板に入った実績があっても、上位人気にはなり難いだろう。

 

 

     さて、今週の競馬は安田記念で5着以来の出走となるダンシングウイナーが京成杯オータムハンデに出走する。

     出走しているメンバーの中では1番の実績を持ち、唯一の本年度G�欺仭�馬なので圧倒的1番人気に支持されている。

     とはいえ、侮れる訳でもなく、2番人気のダンディコマンドは北九州記念を制している実力馬。

     その後に続くカーリアン産駒の持込馬クロカミも今年の中山牝馬Sで3着になるなど、実力を秘めた存在。

     と、この2頭が今回の京成杯オータムハンデではダンシングウイナーの相手となる存在である。

 

    「この中では間違いなく、ダンシングウイナーが実力的には抜き出ているけど、相手も怖いね」
    「ダンディコマンドは重賞制覇の勢いで連勝しそうな勢いがあるので、わたしとしては1番キツイ相手だと思うわ」

 

     競馬新聞の印も秋子が言う通り、本命と対抗にくっきりと分かれており、この2頭が人気となっている。

     クロカミも人気だが、牝馬+重賞を勝利していない事で大きく離された3番人気。

     ダンシングウイナーは3ヶ月振りの出走となるが、サマースプリントシリーズに出走しなかった分、馬体は良好を保っている。

     仕上がりは8割とはいえ、後に出走予定のスプリンターズSがあるので、仕上り過ぎるよりもある程度は抑えた方が良い。

 

    「スプリンターズSへ向かう為に、ここは確実に勝利して欲しい所だな」

 

     現在の収得賞金でも十分にスプリンターズSに向かう事は出来るが、ここでキッチリと勝利して、勝ち癖を付けておきたい所。

     安田記念では進路が詰まってしまい、掲示板に乗るのが精一杯だったのだから汚点を払拭して、スプリンターズSへ向かうにはここで勝利する必要が。

 

 

     そして、レース発走時間になり、各馬は順調に収まっていく。

     ダンシングウイナーは大外の8枠11番からのスタートとなり、小回り気味の中山競馬場では厳しい枠となる。

     最後にダンシングウイナーがゲートに入り、スタートが切られる。

     飛び出した馬はおらず、どの馬も様子を伺いつつ徐々に隊形が団子状態に固まっていく。

     ダンシングウイナーは外からなので囲まれる心配は一切無いが、距離ロスする覚悟で攻めなければならない。

     現在は7番手と中団付近を駆けており、このスローペースで仕掛けどころを間違えるわけにはいかない。

     残り600mを示すハロン棒を差し掛かると、ダンシングウイナーは騎手の指示に従って進出する。

     元から長く使える脚を持つので、この判断は間違っておらず、徐々に進出して最終コーナーの時点で2番手に上がる。

     一気に突き放すわけにもいかず、直線からの瞬発力勝負になると分が悪いので、この位置からなら競り合いの状況に持ち込みやすい。

     ダンシングウイナーが仕掛けた事で他馬もそれに釣られる様に上がらなければ、届かなくなる可能性が高いのだから。

     そして、残り200mとなり、各馬の前には中山競馬場特有の坂が立ち塞がって勢いを拒んでいる。

     内からはクロカミがグングンと伸びてきているが、最後の最後で騎手の鞭に応えて、ダンシングウイナーが半馬身の差を付けてゴールを飾った。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:クロカミ……黒毛の馬体なので、名前がクロカミとなった。
     注2:ダンディコマンド……父はニホンピロウイナー。