9月になり、各陣営の有力馬が復帰戦に向けて調教を行い徐々に早いタイムを出すようになってきた。

     残暑が厳しい時期だが、本州よりも涼しい北海道で過ごしていた馬は夏バテにならない様にジックリと調整されているのも居る。

     Kanonファームの生産馬であるタツマキマキマスカは無事に勝ち上がってOPクラスに昇格。

     これでG�吃饌罎任△觸�華賞に駒を進められる条件を1つクリアし、後はトライアルから権利を得るのみ。

     同じくクラシック3冠最終戦の菊花賞を目指すホワイトファントムは1000万下の阿寒湖特別を勝利し、9月に1600万下を出走予定。

 

    「1000万下と1600万下とは違い、ここからは前哨戦だからより厳しい戦いを強いられるね」
    「ええ、うちの生産馬からしてみればここからが本番と言えるわね」

 

     とはいえ、タツマキマキマスカは7月と8月に2戦して、ホワイトファントムも同じく2戦している。

     体調は良好をキープしているとはいえ、見えない疲れが残っている可能性が高いので、トライアルは慎重に決めなくてはならない。

     因みに他の生産馬の成績は思ったよりも成果は残せなかったが、レッドミラージュが距離短縮に成功し、大穴を開けたレースとなった。

     ジュエルバレーとピクシーダンスは人気にはなったが、勝ちきれず掲示板が 精一杯であった。

 

    「他の3歳勢は今一つの結果だったが、壁にぶつかったかもしれんな」
    「古馬と戦える実力はあると思うんですけどね。まだ数をこなしていないから 差が出たと思いたいです」

 

     大きく突き放された訳でもなく、ピクシーダンスは逃げ粘り、ジュエルバレーは囲まれた状況と、分かりやすい敗因が。

     これを糧にして次走以降に繋がれば、古馬戦を走った経験になるので、敗北は問題にならない。

     だが、この経験を生かせずに惨敗続ける馬が居るのも、また事実で2頭は平凡の成績で終わらない様に期待するしかない。

     因みにファントムロードは経験を武器に出来なかったのか、去年の6月以降勝利していないので7月に引退している。

 

 

     さて、今週の競馬はホワイトファントムが1600万下を勝利し、OPクラスに昇格する為に出走する。

     レースは中山で開催されるニューマーケットカップ――距離2000mと近2走に比べて600mも短縮される。

     とはいえ、3走前の未勝利戦では2000mを逃げ切っており、距離適正は問題無いだろう。

     今回、出走する意図は佐祐理が年齢制限と勝利数を満たない為、菊花賞の騎乗は不可能で、菊花賞前に乗り代わりの騎手を探すのが1つの目的。

     そして、2600mを勝ち続けて来たが、距離を短縮してもきっちりと走るか見極める必要もある。

 

    「倉田さんは菊花賞で騎乗出来ないので、乗り代わりとなりますね」
    「ええ、こればかりは規定を覆すわけにもいきませんからねー……今から1ヶ月で規定勝利数を達成は厳しいですしね」

 

     秋子と佐祐理は対面に座りながら、ホワイトファントムの騎乗に関する事を話している。

     早い時点から乗り代わりになる事は想定されていたが、これも菊花賞へと進む為に必要な事なので、佐祐理は成すがまま受け入れるしかない。

     2人はテーブルに置かれたアイスコーヒーが注がれたコップを手に取り、ストローを口付けて一旦会話が止まった。

 

    「あははー、折角良い馬が回ってきた、と思ったんですけどねー」
    「あらあら、そう思うなら手放さない様にしっかりと成績を上げる必要がありましたね」
    「う……確かに私にとっては耳が痛い話ですね」
    「しかし、倉田さんのお陰で菊花賞行きのチケットを手に入れられそうな場所まで近づいたので、お礼は言っておきます」

 

     そうして、会話が終わると空になったコップを置き、佐祐理はソファーから立ち上がる。

     険悪な雰囲気では無いが、少しばかりリビングの空気が重くなってしまう。

 

    「では、私はこの辺で帰りますね。明日は調教がありますので」
    「頑張ってくださいね……ああ、伝え忘れていた事がありました。ホワイトファントムの来期はまだ騎手が決定していないので、待っていますよ」

 

     秋子はそれだけを伝えると佐祐理は頷く事もせずに帰っていったが、その歩き方はしっかりと前を見据えていた。

 

 

     そして、ニューマーケットカップの結果はホワイトファントムが夏の成績を維持したままの強さを見せ付けて勝利。

     距離を短縮されても、しっかりとスピードを見せて古馬相手に3馬身の差を付けて勝利した事で、菊花賞の伏兵として祭り上げられる。

 

    「これで菊花賞に出走出来る可能性が高くなりましたね」
    「全レースの結果はまだだが、収得賞金順位では上の方だから大丈夫だろう」

 

     秋子と秋名は、菊花賞出走のチケット獲得が近い事を満足に頷いていた。

 

 

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     特になし。