日本競馬が誇る長距離戦らしく、どの出走馬も調子は抜群の様で気合も適度に入っているのが伺える。

     逆に入りすぎると3200mという難攻不落の距離が気合を空回りさせてしまうので、各陣営はその点だけは重点的にしている。

     これが短距離や中距離のG�気任△譴弌�気合が入りすぎて入れ込む恐れがあっても奇襲として、一気に仕掛けて押し込む事も可能。

     だが、天皇賞・春は3200mとステイヤーの領分で一瞬でも入れ込んでしまえば、その僅かに消費したスタミナが直線の攻防で明暗を分けてしまう。

     それだけの攻防が命取りになってしまうので、まさにステイヤーのみの出走が許されるレース。

 

    「上位3頭の馬体はキチンと仕上がっているし、お互いにマークし合うんだろうな」
    「そこがつけ入れる唯一の隙ですよね……そう上手くいくかどうかは分かりませんけど」
    「それぞれが似たような脚質だし、固まってくれればチャンスはあるんだろうけどね」

 

     長い競馬の歴史では3強が揃って出走した時は、3竦みの様にお互いをマークし合って動けなくなる場合が多い。

     得てしてそういう時には第三の伏兵が大金星を掻っ攫って、競馬場に観客の悲鳴を浴びさせてしまうのだから。

     だからこそ、別勢力となり得るアイシクルランスにはそういう点から期待出来る存在である。

     そして、まだ3強とは一度も争っていない事もあるので、あちらからすれば未知の4歳馬世代として移るだろう。

 

 

     パドックでのアイシクルランスは実況から体調は万全と言われた通り、適した仕上がりになっている。

     馬体重も前走比−4kgと好調を維持しているのがハッキリと分かるので、G�気冒蟇�しい体調だろう。

     勿論、体調だけではなく運も過程も自らの元に引き寄せなければ勝利の女神は微笑まない。

     既にスタート地点に立ち、18頭の精鋭が勝利の女神からの祝辞を受ける為にゲート内でスタートを待つ。

     アイシクルランスは絶好の2枠3番からスタートとなり、その隣には3強の1角であるマヤノトップガンが。

     サクラローレルは4枠8番、マーベラスサンデーは7枠14番と大外からのスタートに。

     最後に大外――8枠16番のステージチャンプがゲートに入り、第115回天皇賞・春のスタートが切られた。

     1頭が大きく出遅れた以外は各馬綺麗なスタートで位置争いをして、勇敢に3200mを逃げ切るつもりなのか1頭が飛び出す。

     大きく突き放した訳ではなく、ジワリと2番手の馬に1馬身程の差を付けた逃げ。

     そして、3強はお互いにマークし合う様に中団からレースを進めており、他馬の動きは眼中に無い様な素振り。

     マヤノトップガンは馬場の内側、サクラローレルは馬場の中央でマーベラスサンデーは外に位置取りしている。

     それぞれの枠番が影響した位置取りなので、このような格好になっただけ。

     アイシクルランスは4番手付近の内側から逃げ馬の様子を伺っている状況で、3強に比べて一瞬の切れ味は劣るが、長く使える脚ならば遜色無い。

     なので、早めに仕掛けて先行押し切りの形に持ち込めれば勝算の可能性が出てくるが、3強がマークし合って仕掛け所を間違えるのが条件に。

     早めに仕掛けると他馬よりもスタミナ消費が早くなり、直線の道中でタレる可能性もあるのだから、押し切るには運の要素も秘めている。

     1周目の直線に入るとマヤノトップガンだけはするすると、下げて中団から後方へと位置取りが変わった。

     先頭は変わらずペースを握っており、平均的なペースでレースを引っ張っている。

     とはいえ、このまま押し切れるようなペースでもなく何処かで息を入れて、ペースを落とすと思われる。

     そして、先頭の馬が再び向こう正面に入って、レースは中盤となり、少しずつ後方の馬が差を詰めてきた。

     驚くべき事は真っ向正面からサクラローレルが堂々と仕掛け、元からサクラローレルをマークしていたマーベラスサンデーも上がる。

     2頭の早仕掛けに観客席からはどよめきが聞こえており、王者らしく押し切ってサクラローレルは勝利を目指すつもりだろう。

     この激流に飲み込まれたのか逃げ馬は手応えが悪くなってしまい、2番手の馬に追走されてしまう。

     2頭の横にはアイシクルランスが依然と4番手をキープしているが、これで奇襲が潰されてしまった。

     後ろに居たから奇襲が出来そうだったが、早仕掛けで上がってこられると目標にされてしまうので既に策は通じない。

     とはいえ、元から長く使える脚を持つアイシクルランスは腹を括って仕掛けるしか手段は無い。

     そして、3コーナーと最終コーナーを回り、天皇賞・春最後の直線になる。

     マヤノトップガンは最後方の大外から一気に仕掛けられて、前の馬が止まったような錯覚を見せながら、他馬を切り捨てていく。

     サクラローレルとマーベラスサンデーは馬体を合わせて、競り合う格好に持ち込んで残りの直線を駆けていく。

     アイシクルランスは最終コーナー直前から仕掛け、ぽっかりと開いた内から突破し、先頭を駆けている。

     ロス無く走ってこられたのはアイシクルランスだが、相手は歴戦の馬なので僅かのリードさえ差にならない。

     残り100m。

     ここでアイシクルランスはサクラローレルとマーベラスサンデーに捕まり、先頭が入れ替わってサクラローレルが押し切ろうとした。

     だが、それを上回る脚でマヤノトップガンが一閃し栄光の天皇賞馬の称号を得た。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特になし。