ホワイトファントムは未勝利戦を勝利した事で暫しの放牧期間を宛がわれてKanonファームに戻ってきた。
その馬体は1月頃とは見違えるほど、肉付きがガッチリとしてひ弱さが改善しかけているのが分かる。
馬体重も+20kg近く増加しているが、まだ完成の域には遠く筋肉の付き具合も長距離馬らしさのバランスが無い。
まだ、1勝目を挙げた条件馬に過ぎないが既に年明け4戦目で、疲労が溜まっているのが容易に想像出来る。
馬体のダメージを癒し、秋に備えてしっかりとした調教で鍛えて成長を促すのも必要なのだから。
それだけ今の状態では上のクラスで結果を残せるほど体調が良い訳ではないので、ここで休ませるのも手段といえる。
上手くいけば秋には菊花賞に駒を進められる可能性もあるのだから、じっくりと調整して夏競馬には復帰させたい所だろう。
「これで未勝利を脱出した事だし、94年度の産駒は全頭勝ちあがったね」
「ええ、これでひとまず安心は出来るわ」
「下手するとホワイトファントムは未勝利のまま終わる可能性もあったからな」
Kanonファームの生産馬で未勝利のまま引退した馬は1頭もおらず、唯一の未勝利のままで引退したのはセリで購入したクイーンキラのみ。
これだけ勝率が高い牧場なのだが、大手牧場の様に馬が売れる訳でもないので購入者の宮藤が良いお手本になっている。
徐々にKanonファームの名は競馬関係者に浸透しており、安馬で走る可能性が高いのだから。
「今回は倉田さんの腕で勝利したようなものですし、主戦騎手を務めてもらおうと思いますけど、どう思いますか?」
「良いと思うぞ。あの腕前なら先を見据えてホワイトファントムの主戦させた方が良いだろう」
「あれだけ的確な判断とペースが読める腕なら、女性騎手の中では1番じゃないかな? と言う訳でわたしは反対する理由が無いね」
3人共、佐祐理の評価は女性騎手の中では良い方だと決定付けたので、これからはホワイトファントムの主戦を任せられると判断された。
勝利するまで3人の騎手が騎乗していたが、佐祐理の様にスッとスタートを切れた訳でも無く、後方から進めていたのだから。
勿論、成長した時にたまたま佐祐理が騎乗したという運が重なった部分もあるので、再び評価を改めるのは次走以降だろう。
さて、未勝利戦を勝利したホワイトファントムだったが、総武ステークスに出走したレッドミラージュの方は10番人気で8着だった。
一応、人気より上になったので休み明け初戦としては十分な結果だろう。
休養明け+距離延長が不利に働いたのは目に見えており、次走はキチンと距離短縮して1600万下を卒業したい所。
とはいえ、見所が無かった訳でもなく3コーナーから4コーナーの中間までは大外から捲くって観客を湧かしていた。
まだ衰えた訳でもないので、次走は期待出来ると思われる。
「休み明けでこの結果なら次走は見所あるな」
「距離も長かったですからね。次走は短距離のレースに出走した方が良さそうです」
2人はそれ程レッドミラージュの敗戦を気にしている様子ではなく、次走に繋がる走りだと確信しているようだ。
さて、今週の競馬はG�兇離侫蹇璽蕋咫宗愁�ークスへの出走権利を得る為にタツマキマキマスカが出走。
距離は2000mとダービートライアルの青葉賞に比べると距離は400m短いが、マイル前後が強い牝馬には長い距離でもある。
過去にはメジロラモーヌとマックスビューティーが桜花賞勝利後に出走して、距離延長をこなしてオークスを勝利し2冠馬になっている。
だが、近年は本番では用無しの馬が多く、ゴールデンジャックの2着が最高となっていた。
それでもオークスの出走権利を得られるので、オークス出走に必要な賞金が足りない馬などが一挙に出走。
今年の面子はそれなりに集まっており、素質馬として有力視されているグレースアドマイヤとダイイチシガーが出走してきた。
重賞馬としてはチューリップ賞とクイーンCを制しているオレンジピールが居るのだが、本番の桜花賞では5着だった為かここを狙ったのだろう。
タツマキマキマスカは重賞未出走の為か4番人気に支持されており、2戦2勝で2000mと2200mを勝利しているので隠れた穴馬的な立場。
そして、結果は何とか3着までに入り、無事にオークス出走権利を得た。
2着馬のダイイチシガーとの差は鼻差で、4着のグレースアドマイヤとの差も鼻差だったので接戦を制して得た権利だった。
因みに勝ったオレンジピールはこれで重賞3勝目だが、相変わらずトライアル戦では強さが際立つので、トライアルホースと呼ばれる事に。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ダイイチシガー……父はトニービン、母はダイイチルビー。
注2:オレンジピール……父はサンデーサイレンス。