ジュエルバレー……500万下東京ダート1300m戦を首差で凌いで無事に2勝目を上げて、OPクラスに昇格。

     ルビーレイ……4番人気に支持されていたが、ノーザンテースト最後の大物であるクリスザブレイヴに圧倒的な差を付けられて5着に敗れた。

     こうして今年の2歳馬の出走は終わり、来年に備えて早々と放牧に出されて2月の復帰を目処に調整される予定。

     ジュエルバレーは父のウインドバレーと同じ様に全日本2歳優駿に進ませるプランもあったが、現状では出走選出が厳しいので回避を選択した。

     ルビーレイは12月にも出走させる様だが、現在はまだ次走が決定しておらず難航している様だ。

 

    「タツマキマキマスカだけまだデビューしていないのは不安だなぁ」
    「じっくりと調教して年明けデビューを目指す様だから、気を長くして待っていた方が良いぞ」
    「そうなんだけどね。リヴリアの数少ない産駒になりそうだし、期待したいんだよ」
    「その割に馬名は珍名系じゃないか」

 

     名雪はその指摘に対して、恥ずかしそうに頬を赤く染めて照れるのみで、馬名の由来を口にしない。

     秋名も無理に聞く様な事をせずに、なるほどと頷くのみだった。

     名雪にとってはインスピレーションによって浮かんだ案に過ぎないのだから、馬名の由来までは考えていなかったのだから。

 

    「今年の残り出走予定馬はダンシングウイナーとファントムロード、レッドミラージュだっけ?」
    「それとルビーロウも復帰予定だったな」
    「随分と出走予定の馬が残っているね。まぁ夏も走っていた馬も居るからその点は仕方ないか」

 

     実際に夏の間に走ったのはダンシングウイナーだけだが、放牧後の帰厩で夏負けになってしまったのが原因とも言える。

     10月には復帰出来たのだが、一度崩した体調はなかなか元に戻らないのでその理由が復帰時期の遅くなった要因だろう。

 

 

     さて、今週の競馬は京都でマイルチャンピオンシップが開催されるのだが、トロットサンダーが引退した事で王者が空白状態。

     暫定的な王者が誕生するか、圧倒的な実力をみせて新たな王者が誕生するかで短距離路線の今後が決定するので焦点として見られている。

     因みに現状では去年の皐月賞馬ジェニュインと今年のNHKマイルCの覇者――ツクバシンフォニーの争いとされている。

     菊花賞、天皇賞・秋、エリザベス女王杯と父サンデーサイレンス産駒が前代未聞の記録を達成したG�毅穫⊂,縫献Д縫絅ぅ鵑眤海�か?

     或いはマル外産駒のツクバシンフォニーが短距離種牡馬であるデインヒルに捧げるマイルG�毅仮〔椶鮠�るか?

     と、競馬新聞では謳われているがダンシングウイナーは未だ出走不可能なので、東京で開催される1600万下特別の奥多摩Sに出走。

     現在の実力ではマイルチャンピオンシップに出走しても遠く及ばないので、今はじっくりと昇格をするしかない。

 

    「今はここを勝ち上がる方が大事ですね」
    「そして、来年の安田記念を目標とする為にな」

 

     既にダンシングウイナーの目標は来年の安田記念を最終的として、ローテーションを逆算した結果、奥多摩Sから始動という事になった。

     ここで勝ち上がれば、来年の初戦は京都金杯――芝1600m戦と非常に楽なローテーションになり得るのだから。

     現在の人気は1番人気に支持されているとは言え、1600万下のクラスになってから初の出走となるので何処までやれるか不明な点も多い。

     それでも支持されているのは、ここまでの成績が1600万下でも十分にやれるという核心があるからだろう。

     そのため、今回の出走は人気に応えなければならないレースに当て嵌まる。

 

    「……人気に応えてくれれば良いんですが」
    「今年はこれといったメンバーが出走していないから、勝てる可能性は高いと思うがな」

 

     実際に出走メンバーは前走を勝ちあがった馬はダンシングウイナー以外居ないので、秋名が言う通り大したメンバーは揃っていない。

     かくして、今回は非常にチャンスであり勝利の可能性が高い、と言い切れるレースであった。

     そんな訳で奥多摩Sの発走時間になり、各馬がゲート内に入っていく。

     ダンシングウイナーは1枠1番からと絶好の枠からのスタート切れる事になり、後は囲まれない事を祈るのみ。

     独特のゲート音が響き、各馬が一斉にスタートを切る。

     これといった大きな出遅れは一切無いが、最初の一歩が遅かったのか後方から進んでいく馬が居るくらい。

     ダンシングウイナーは馬群の中団辺りで囲まれている状況だが、元から差しを身上とするのだから脚を溜めるには申し分ない位置取り。

     ただ、逃げ馬が1頭もおらず馬群が固まってしまっている――スローペースなので、ペースがもう少し早くならないと囲まれたまま終わる可能性も。

     東京競馬場の直線が長いお陰で現状では問題無いが、直線に向いた時に馬群がバラけないと厳しいのは変わりない。

     そして、4コーナーに入る直前にスローペースに業を煮やしたのか後方に居た追い込み馬が一気に捲くってきた。

     これによってレース展開が急激に速くなり、展開が変わった事で後ろに居た馬も一緒に飛び出していく。

     ダンシングウイナーは更に一呼吸置いてから、ゆっくりと他馬のリアクションに隠れるように仕掛けられて、徐々に位置取りが上がっていく。

     残り200m。

     内からスルスルと馬群を裁きダンシングウイナーが差を詰めて、一気に先頭に立つ事は無いが、脚取りはまだまだ余裕がある走り。

     そして、残り100mの時点で先頭に立ち、そのまま押し切ってゴールイン。

     これで2連勝を飾り、ダンシングウイナーの成長を実感出来るレース振りだった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:クリスザブレイヴ……実際にノーザンテースト最後の大物と呼ばれたのは百日草特別を勝利した後から。
     注2:サニーブライアン……この時点では1勝馬である。