ダンシングウイナーは圧倒的1番人気に支持されながら、5着と惨敗に等しい結果になってしまった。

     やや立ち遅れて後方からレースを進めていたが、ダンシングウイナーが徐々に上げると同時に先頭の馬が急激にペースを上げた事で展開が変わった。

     そのため、後方から上がって行く展開になったダンシングウイナーには乱ペース響いた格好に。

     その結果が5着と不甲斐ないレース振りを見せ付けてしまったが、まだ新馬戦から9戦目なので経験の浅さが披露。

     10ヶ月の長期休養が今の所は足を引っ張っているが、実力があると言う事は信用しているのでジックリと成績を良くなるのを待つしかない。

 

    「まだまだレースに関しては教える余地が多数ありますね」
    「9戦目だしな。馬体が成長してもレース勘はまだまだ学ぶ必要があったと思えば良いだろう」
    「そう思うしかないね。それでも5着なら1000万下クラスは十分やれると確信出来たけど」

 

     あの走りなら実戦慣れをすれば、1000万下は楽々通過出来るという確信を持ったのか名雪の口調が力強く聞こえる。

     それだけ今回の走りは今後に繋がるものとしては十分な価値があり、次走以降も期待出来る可能性が高まったのだから。

 

 

     秋らしい気温――やや涼しげな風が吹き込む中、ホワイトウインドの引退が決定する。

     最近は調子が上がらず、夏負けで更に体調を崩していた状況だったので、復帰し難いというのが問題であった。

     元から白毛という体質異変で産まれた馬なので、基本的に体調維持が難しく徐々に体質改善された今でも体調を崩しやすいのだから。

     成績は14戦5勝3着1回と5歳牝馬にしては出走数が非常に少なく、同期の牝馬よりも馬体は若いとは言える。

     近走の結果を見る限り徐々に衰えているのがハッキリと判る位で、このまま現役続行させるよりも引退させる方が無難と言う結論に。

 

    「ホワイトウインドは引退と……次の目標は白毛の産駒で重賞制覇かな?」
    「そうなるだろうな。血統は悪くない筈だから配合次第では良い産駒が出るだろう」
    「その代わりに繁殖牝馬放牧地が手狭になるので、繁殖牝馬を売却する方針にしようと思いますけど、どう思いますか?」

 

     既にKanonファームに繋養されている繁殖牝馬の頭数は8頭と中小牧場では多い方だろう。

     ホワイトウインドの母――ファントムの牝馬はKanonファーム内にサイレントアサシン、ルリイロノホウセキ、イチゴサンデーと3頭も居る。

     更にホワイトウインドも繁殖入りをするので、血統が袋小路に行き詰まってしまう可能性を秘めている。

     そうなると必然的に衰退してしまう可能性があるので、如何にバランス良く牝馬を所持しておくかが大事。

     ホワイトウインドを含めた4頭の繁殖牝馬の父はどれも血統は違い、似た血統は1頭も居ない。

     それぞれの牝馬の父父を見るとテスコボーイ、ダンディールート、ヘイロー、ミスタープロテクターとなっている。

     どの馬もスピード寄りになっているので、簡単に売却馬を決定するのは非常に難しい。

     まだ産駒がデビューしていないイチゴサンデーとホワイトウインドを除くと、実質的にサイレントアサシンとルリイロノホウセキが売却馬として候補。

 

    「サイレントアサシンかルリイロノホウセキかぁ……わたしはサイレントアサシンを売却の方が良いかな?」
    「サイレントアサシンの産駒は今年が初デビューだから尚早な気もするがな」
    「ルリイロノホウセキ産駒は既にアイシクルランスを輩出していますからね。名雪の言う通り、サイレントアサシンを売却候補にした方が良いですね」

 

     あっさりと決定出来る訳も無く、ファントムを売却した時――高齢と言う理由ではないので選択し難い状況が続く。

     どの繁殖牝馬もKanonファームには馴染みがある血統なので、出来れば全頭を所持しておきたい所だが、後の事を考えるとそうもいかないのだから。

 

    「サイレントアサシンの産駒がデビューしてから決断しても良いんじゃない?」
    「産駒は宮藤さんに売却しているから、新馬の結果次第では購入してくれるかしら?」

 

     既にサイレントアサシンの産駒――ルビーレイは宮藤の所有馬になっており、デビュー戦を待つだけ。

     ルビーレイの評価はそこそこ良い様で、競馬雑誌では一面を飾る事は無かったが、調教師のコメント欄には中距離ぐらいが向くなどが記載。

     徐々に調教タイムを縮めている様で、9月の半ばにはデビュー出来る態勢が整っている様だ。

 

    「ルビーレイが走れば、また売却牝馬の選考がより難しくなるだろうな」

 

     秋名の言葉に秋子は苦笑いを漏らしつつも、しっかりと売却予定の牝馬を決定する事を力強く宣言する。

 

 

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     特になし。