競馬学校と地方競馬教養センターの生徒が模擬レースを行っていた時は既にクラシックシーズン真っ盛りになって、東西の有力馬がG�気鯡槁犬貌阿�。

     今年の春は流行感染症が頻繁に起こって、直前に有力馬が回避する事態が相次いで混戦が極まっている。

     阪神ジュべナイルフィリーズで2着に入り、桜花賞トライアルレースの1つであるチューリップ賞を楽勝したエアグルーヴが直前に回避。

     その結果、フィリーズレビューを3連勝で勝利したリトルオードリーが押し上げられる形で人気になるも本番は9着と惨敗。

     代わって桜花賞を勝利したのが10番人気のファイトガリバーだった。

     そして、皐月賞もトライアルレースの弥生賞を制したサンデーサイレンス産駒のダンスインザダークがエアグルーヴと同じく流行感染症に罹ってしまった。

     代わりに勝利したのは同じサンデーサイレンス産駒のイシノサンデーで、2着も同産駒のロイヤルタッチだったので、層の厚さを再認識させる。

     それほど流行感染症が広まっている状況なので、Kanonファームの生産馬も1頭が罹ってしまって直前に出走回避の憂い目にあってしまった。

     その馬はホワイトウインド。

     皐月賞の前日に開催されるOP特別――京葉ステークスに出走確定後、咳を出し始め、診察所に連れて行くと感染していた事が発覚した経緯が。

     そのため、3ヶ月振りの出走がずれ込んで5月の半ば頃の復帰を目標に再調教が行われている最中。

 

    「まいったね。まさか流行感染症に罹って出走取り消しになるなんて思わなかったよ」
    「そっちに当たるくらいだったら、レースで1着になってもらった方が良かったわ」
    「まぁ、人も突然風邪を引く時があるからな気にしない方が良いだろう」

 

     秋名が言う事は至極真っ当な事なので、特にホワイトウインドの所為にする事も無く経過を見守るしかない。

     ホワイトウインドの出走日が延長してしまったが、他の馬は流行感染症に罹った訳でもないので、着々とレースに向けて調教が行われている。

     今週の橘ステークスに向けて、3ヶ月振りのファントムロードが勝利を目指し順調に調整中。

     同時にNHKマイルカップで除外される可能性が高いルビーロウも、ここを目標として選ばれていた。

     そのため、Kanonファームの生産馬同士が橘ステークスに出走する事に。

 

    「まさか、被るとは思わなかったな」
    「3週間後の葵ステークスに出走させると思っていたんですけどね。読みが外れましたか」
    「前走から一気に400mも短縮するのに大丈夫なのかな? お母さんが言う通りルビーロウは葵ステークスの方が向く筈なんだけどね」

 

     1週間前の登録馬一覧が掲載された競馬雑誌を開きながら、3人は小さく溜息を吐いてしまった。

 

 

     そして、本日は橘ステークスが開催されるのだが、天気は生憎ながら雨がポツポツと関西地区を中心に降り続けている。

     そのため京都競馬場の馬場は橘ステークスが開催される直前に芝状態が稍重から、多くの水分を含んだため重馬場へと表示が変更された。

     内馬場は多くの馬が駆けていたので、この雨を加えて多大にスタミナを奪う要因として各馬の前に立ちふさがる。

 

    「これだけ雨が降っていると、どの馬も厳しいだろうね」
    「3歳馬で重馬場をこなした事がある馬は少ないだろうし、チャンスとは言えばチャンスかもしれないな」
    「そうは言いますけど、ファントムロードも重馬場は初めてになりますからね」

 

     秋子はあまりチャンスだとは思っていないのか、少しだけ達観したような表情でファントムロードの返し馬を見ていた。

     現在の人気は前走のかささぎ賞を勝利したにも関わらず、7番人気と支持されていない。

     鼻差を凌いで勝利した事と小倉での勝利と言う事が人気に響いている一因で、1番人気に支持されているスギノハヤカゼとは雲泥の差が。

     アーリトンCを制したスギノハヤカゼはNHKマイルカップの叩くレースとして栗東に所属している為か、ニュージーランドトロフィに見向きもせず。

     そのため、重賞馬の参戦は他馬にとっては目の上のたんこぶになる存在。

 

    「掲示板に入ってくれれば良いかな」

 

     と名雪が本心を吐露した所でレースが始まり、ファントムロードは7枠12番からで、ルビーロウが4枠4番からのスタートに。

     ファントムロードは僅かに立ち遅れて、ゲートから出るのに遅れとってしまい後方3番手からのレースに。

     サッと先行したルビーロウは荒れた馬場に脚を捉われない様にやや外目の方に持ち出し、短距離路線を走ってきた馬と違い幾分か体力には余裕がある。

     1200mと言う短距離では、1600mとはまったく違うタイプの走りが出来ないと厳しく、初の1200m戦となるルビーロウは何処までやれるか。

     スギノハヤカゼがルビーロウの真横からサッと上がって、一気にレース展開が速くなっていく。

     ファントムロードもスギノハヤカゼに付いて行く為に上がっていくのだが、徐々に差が広がる。

     直線に入ると重賞馬らしく、スギノハヤカゼは他馬とは実力が違う事を見せ付けるような格好でドンドンと差を広げてゴール板に向かう。

     そして、ファントムロードとルビーロウにはまだOPの壁は高かったのか、それぞれ6着と4着に終わった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:エアグルーヴ……父はトニービンで母はオークス馬。
     注2:リトルオードリー……この年のフィリーズレビューの勝ち馬。
     注3:イシノサンデー……弥生賞3着から皐月賞制覇。
     注4:ダンスインザダーク……姉にダンスパートナーがいる。
     注5:ロイヤルタッチ……兄にウイニングチケットがいる。
     注6:スギノハヤカゼ……父はダイイシス。