キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドS。

     夏の欧州で行われるクラシックディスタンス――2400mのレース。

     おにぎりの形をした三角形のコースで有名なアスコット競馬場で行われ、このレースの優勝関係者にはある特典がある。

     それはエリザベス女王が直々に優勝カップを手渡してくれる由緒正しいレースだから出来る事。

     日本では同じように天皇陛下から取った、天皇賞があるが優勝カップを手渡してくれる事は無い。

     日本馬の参戦は1969年の19回スピードシンボリの5着のみだが、この着順は健闘の部類だろう。

     因みにスピードシンボリはシンボリルドルフの母父なので、ある意味敵討ちの遠征だとも言える。

     閑話休題。

     キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドSに出走したシリウスシンボリの結果が分かった。

     新聞の片隅に小さく書かれており、競馬ファンで無いと見逃しそうな見出しであった。

     ――シリウスシンボリは12頭立てで11番人気8着となり、レコードが出るほどハイペースでの決着であった。

     ただ、優勝馬はシリウスシンボリと同じ年齢のイギリス3歳馬――ぺトスキーが優勝したのは実力の差だろうか?

     それとも、日本馬のレベルが未だに世界レベルに達していないなら、凱旋門賞を出走するルドルフも厳しいだろう。

     と、スポーツ新聞には否定的な事が書かれているが、実際にシンボリルドルフは日本では有名でも海外では無名である。

     ジャパンカップはパート�狭颪任△詁�本のレースなので、パート�宜颪離譟璽垢鉾罎戮燭薐覆歪磴ぁ�

     その事を考えると、もしかしたら騒ぎすぎている恐れもあった。

     いくら、日本で無敗3冠馬になったとしても海外では無用な称号である。

 

 

     秋子は新聞をジッと見ながら、負けたんですかと意気消沈してポツリと喋る。

     シリウスシンボリはゴタゴタがあったとは言え、仮にも日本ダービーの優勝馬なのである。

     いくら日本で勝っても、海外の壁は果てしなく高く厚い壁だと秋子は実感したようだ。

 

    「海外馬とは何が違うんでしょうか?」

 

     この場には秋子1人しか居ないので、この答えを答えてくれる人物は誰もいないが秋子は頬に手を当てて模索する。

     考えるとキリが無いが、主な理由は馬自体の問題、調教、輸送方法etcとごまんとある。

 

    「何時になったら海外で対等に戦える時が来るのでしょうか」

 

     1985年までに海外で走って優勝した事ある馬は1959年のハクチカラのみである。

     それも1年近く遠征してから、軽ハンデで出走したレースを勝ったのだが出走馬の名にはラウンドテーブルがいた。

     つまり、日本馬が遠征して勝ったのは、この長期遠征の1勝だけである。

     因みに障害レースでも遠征して1年近く、遠征して2勝もしたフジノオーと言う障害の名馬もいた事を記しておく。

 

    「やっぱりルドルフに期待する以外ないですね」

 

     秋子は溜息交じりにスポーツ新聞を読み直す。

     ん、と秋子は目ざとく、自分の所有馬――ジェットボーイの短評が書かれているのを発見した。

     シリウスシンボリの事より小さく、書かれているので殆ど見つけられないで読み飛ばした可能性があった。

     このスポーツ新聞は小さなスペースにだが、デビュー前や育成牧場での調教タイム、評価が書いてある新聞。

     ――ジェットボーイ父シャーペンアップ、母父リファールのアウトブリード配合であり、奥行きのある短距離向きの馬体。

     調教担当によると坂路一杯でラスト1ハロンのタイムが徐々に早くなってきたとの事。

     入厩出来るのは9月半ばになると思われる、と調教担当のコメントが書かれていた。

     秋子はコメント部分を見て、ようやく自分の馬――デビュー間際だと実感出来たようだ。

     秋子はコメント部分ごと新聞を捨てるのが勿体なく感じたのか、鋏をサイドボードの引き出しから取り出す。

     ちょきちょき、と丁寧にコメント部分を鋏で切り出して、何も書いていないノートに貼ってスクラップノートの完成。

     いつか、全てのページにスクラップを貼りたい、と思いつつ秋子はノートをサイドボードの中に仕舞う。

 

    「何か、集めるのが癖になりそうですね」

 

     クスッ、と秋子は笑ってから、牧場の掃除をする為にリビングから出て行く。

 

 

     放牧地では仔馬が元気良く駆け回っており、母馬は仔馬を気にせず草を食んでいる。

     そろそろ、子別れの時期が近づいて来ているが仔馬は何も知らずに放牧地を駆け巡っていた。

     この子別れはジェットボーイが競走馬になるための第一歩である。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:スピードシンボリ……65年〜70年まで走り続けた名馬であり、 海外遠征や有馬記念連覇などの成績がある。
     注2:ハクチカラ……日本馬で初めて海外勝利をした馬であり、引退後は インドで種牡馬入りしている。
     注3:パート国……競馬開催国のランクと言える物であり、日本はランク�兇任△襦�
     注4:ぺトスキー……ニ二スキー産駒であり、G�犠,舛呂海離�ングジョージの1勝のみ。
     注5アウトブリード……3代目の先祖までに同じ馬が居ない配合であり、 健康的な馬が生まれやすいと言われる。