今週はマイルチャンピオンシップが先週のエリザベス女王杯に続き京都で開催される。

     名の通り、マイル路線のチャンピオンを決定するレースであり、春のマイル王者を決めるのが安田記念なら、こちらは冬のマイル王者を決めるレース。

     だが、今年の安田記念はドバイからの遠征馬だったハートレイクが勝利したため、現在は王者が不在の状況になっている。

     この時期――11月のアメリカ競馬や欧州競馬では、日本と違いG�汽譟璽垢皀蹇璽�ル重賞に近いので、殆どの1流馬は放牧に出される季節。

     そのためハートレイクはマイルチャンピオンシップに招待されていたが、辞退したため王座が空位状況のG�気砲覆辰討靴泙辰拭�

     スプリンターズSで結果を出したヒシアケボノ、今年の高松宮記念を制したビコーペガサスの2頭が王座奪取と言う文字が新聞の紙面に躍っていた。

     他にG�鞠呂�居ないので両者をメインに取り上げられるのは仕方ないが、メンバー的にはそれなりの面子が揃っている。

     まずは今年の京王杯オータムハンデを制したストームブレイカーが引退レースでG�祇�覇と言う目標を持ち、ここに参戦。

     現在の人気は去年のマイルチャンピオンシップと同じく5番人気で、勝利を期待されているのだろう。

     4番人気には元地方在籍だったトロットサンダーが支持されており、G�欺蘢�戦の割には競馬新聞の印も厚い。

     トロットサンダーは9戦8勝の成績で中央に鳴り物入りで入厩した訳ではなく、骨折によって中央入りが遅れたため、ひっそりと移籍したようなもの。

     ここに来るまでの中央成績は9戦4勝で重賞勝ちは無く、OP特別が1つだけ。

     だが1600m戦の結果は3戦3勝の無敗であり、そこが今回4番人気に支持された一因でもある。

     なので、トロットサンダーは決して侮る事が出来ない相手だろう。

 

    「これでストームブレイカーも引退か……」
    「ここまで頑張ってもらいましたし、引退すると逆に寂しいですね」
    「そうだな……1線級の戦いを強いられていたからな。そりゃあ引退したら寂 しくなるだろう」

 

     そうですね、と秋子は言葉をか弱く吐き出しつつ、寂しげな表情をしてしまう。

     ストームブレイカーが引退すると言う事は、Kanonファームの現エースが居なくなるに等しく、秋子の表情が曇ってしまうのはそうした理由も。

     エースが一気に2頭居なくなった事で、Kanonファームは新たなエースを仕立てなければならない状況。

     今の所はダート路線で活躍するヤマトノミオとホワイトウインドが支えくれているが、芝路線は壊滅状態に近い。

     現状の芝馬は長期休養中のダンシングウイナーに、能力が未知数の2歳馬――ファントムロードとアイシクルランスが居るのみ。

     徐々にダート路線が浸透している分、強豪が現れる可能性もあるので芝馬の生産が早急になり得る。

 

    「イチゴサンデーが秋華賞とエリザベス女王杯でもうちょっと走ってくれれば引退させる必要は無かったんですけどね」
    「今更、ぼやいても仕方ないだろうし、次の活躍馬を輩出させるしか無いだろう」
    「そうですね。来年はダンシングウイナーに頑張ってもらいますか」

 

     2歳馬はまだエースになり得るような実績を有していないので、必然的にダンシングウイナーが芝馬で最も期待出来る馬になる。

     ふぅ、と秋子は小さく吐息を吐き出してから、マイルチャンピオンシップに出走する馬の様子をTV越しで見始める。

 

 

     京都競馬場には大勢の観客が入場しており、先週のエリザベス女王杯よりもG�鞠呂僚仭�数が少ない分、盛り上がりが欠ける状況だが。

     短距離路線は相変わらずトップクラスの馬がコロコロと変わる状況が続いているので、メンバー構造が盛り上がり難い一因になっている。

     そのため、観客の集客率にも影響を及ぼして売り上げも下がってしまう事が度々と起こる。

 

    「そろそろ競馬協会としては短距離路線を引っ張る馬が出て欲しい頃かもね」
    「そうだろうな。私から見ても今年の短距離馬が引っ張っていく馬が居ないのが分かるしな」
    「もしも、トロットサンダーがマイルチャンピオンシップを勝利しても、次世代を引っ張る年齢じゃないからね」

 

     トロットサンダーの現年齢は6歳と古馬の領域に達しているので、中央入りがひっそりとしていたのはこうした理由もある。

     トロットサンダーは来年も現役続行するかは不明だが、今回の結果次第では来年の短距離路線の中心馬になるかもしれない。

     特に1600m戦の強さは馬場を問わずの3戦3勝で間違いなく、今回の台風の目でもあるので、名雪が気にするのは最もかもしれない。

     そんな訳でマイルチャンピオンシップのパドックが紹介され始めて、各馬は悠々としていたり、入れ込んだ馬が居たりと様々な様子が映し出される。

 

    「2枠2番ストームブレイカー。馬体重は前走比−12kgです」

 

     引退レースらしくキッチリと仕上げられた馬体重を聞いて、3人はホッとした表情でTVに向き合い始めた。

 

 

     戻る     ← →

 

     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:トロットサンダー……中央に移籍する前は浦和在籍だった。