イチゴサンデーの秋華賞の結果は不可解な惨敗となり、初めて掲示板を外してしまう程。
その結果は１８頭中１２着と今までの成績の中で１番最悪なもので、道中はいつもの様に中団からレースを進めていたが直線に入ってからは伸びなかった。
勿論、得意の叩き合いに持ち込んだ形になったのだが、騎手が押しても鞭を入れても、うんともすんとも云わずに伸びあぐねる。
普段のレース振りだったら負ける事はあっても、ここまでの惨敗は１度もなった事が無いので、誰もが原因を掴む事が出来ない。
展開は申し分無い状況だったにも関わらず敗れたのは遠征帰りで体調が完全では無かったか、或いは成長のピークが既に衰えている可能性。
このまま引き下がるわけにもいかないので、次走はエリザベス女王杯を予定しているが、どこまでやるのか不安が残ってしまっている。
「参りましたね……ここからキチンと立て直せると良いんですが」
「まったくだ。下手すると燃え尽きた気もするし、これからが予想付かないな」
「海外帰りだしね……間違いなく影響の一端はあると思うよ」
３人は揃って溜息を壮大に吐き出して、滅入った表情になってしまっている。
それくらい、イチゴサンデーの秋華賞敗戦はショックな出来事であっさりと勝てると思っていたものが崩れ落ちてしまったのだから。
「次走の結果次第では長期休養も視野に入れないと駄目ですね」
「……引退の方はまだ検討はしないのか？」
「……あっさりと引退させるほど、わたしは不義理でも鬼でもありませんよ」
秋子はやけに“鬼でも”の部分だけ語気を強めてそこだけを強調しつつ、秋名を頷かせてしまう。
Ｇ�気鮠〕�した馬をあっさりと掌を返す様な行為を秋子はする気はなく、最後のレースまで応援し続けるのが馬の為になるのだから。
とは言え、流石に敗北が続くようならば引退を視野に入れて、区切りのレースで勝ち負けに関係なく引退させる。
例え、引退レースで勝利したとしてもそこで欲を出してしまったら、馬に更なる負担を強いる事になってしまう。
それで故障してしまったら本末転倒なので、Ｇ�鞠呂琉靴い録欺鼎飽靴錣覆韻譴个覆蕕覆ぁ�
こんな風に惨敗したイチゴサンデーに代わって秋華賞を制したのは、サクラキャンドル。
半兄には重賞３勝のサクラチトセオーがいる血統で、その血が夏の札幌で開催されたクイーンＳを制するまで成長力で秋華賞を制したのだろう。
これで今年の３歳牝馬クラシック路線は、それぞれ別の馬が１勝ずつ分け合った形になった。
桜花賞――ワンダーパヒューム。
オークス――ダンスパートナー。
秋華賞――サクラキャンドル。
だが、Ｇ�犠〕�数はＮＨＫマイルカップとアメリカンオークスを制したイチゴサンデーがトップ。
古馬牝馬と争う事になるエリザベス女王杯で３歳牝馬が何処までやれるかが、今年の集点だろう。
来月の開催日までおよそ１ヶ月もあるが、今からどれだけのＧ�鞠呂�集まるかが楽しみになりそうなメンバー。
去年の覇者――ヒシアマゾンが間違いなく出走してくるだろうし、新旧クラシック馬の対戦は盛り上がる事が多いのだから。
秋華賞の前日――土曜日に開催された京都のレースにはKanonファーム生産馬であるルビーロウが未勝利芝１６００ｍ戦を勝利。
未勝利戦とは言え、２着に付けた着差は４馬身と実に楽勝だったと印象付ける結果に。
これが宮藤綾乃にとっては初めて勝利となり、馬主の象徴である全体が真っ赤の勝負服を観客に名刺代わりとして叩きつけた事になった。
「ふふっ、これからはわたくしの馬が勝ち続ける狼煙となりましたわ」
「あら、あっさりと勝ち続けられると思っているんですか？」
「当たり前ですわ。あれだけ楽勝をしてしまえば、次走も期待するに決まっていますのよ」
宮藤はまったく悪ぶる様子もなく、ルビーロウが未勝利戦を楽勝した事で次走も勝利すると思い込んでいるようだ。
秋子はお灸を据える意味で宮藤に一言も注意をしないで、我関せずの立場でコーヒーカップを口に付けていた。
無視されているように感じたのか、宮藤は怒気を孕んだ表情を秋子に向けるが当の本人は飄々と交わす。
「まぁ、頑張ってくださいね……簡単に重賞制覇するのは難しいと思いますけど」
「……ッ。言われなくてもそのつもりですわ」
秋子は火に油を注ぐような発言をするが、宮藤は煽られてその勢いに乗ってしまった。
その後は、お互いに沈黙したままで時間のみが過ぎ去って、リビングの壁に掛けられている時計の秒針が動く音だけが響いていた。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。