ストームブレイカーのスプリンターズSは去年と一緒の着順――4着と微妙な結果に終わってしまった。

     ただ、去年のスプリンターズSは付いて行く事が厳しく10番手からのレースだったが、今回は普通のスタートから10番手に付けていた。

     似たようなレース振りになってしまったが、去年のサクラバクシンオーから突き放された様な結果ではなく、しっかりと脚を伸ばした結果が4着。

     後、1歩だけ踏ん張っていれば3着にもなれただろうし、今回は運が無かっただけで去年の着順を超えられなかったのだから。

     ストームブレイカーにGⅠを勝つ馬に必要な実力と運があるかは、来月の引退レース――マイルチャンピオンシップで本領が問われるだろう。

 

    「次走のマイルチャンピオンシップで引退か……4年間の競走生活に終止符を打てると良いんだけど」
    「もう4年間も走っているのも忘れるくらい走っていたわね……次走で丁度30戦目の区切りね」
    「丁度30戦目か。なら引退レースでキッチリと勝利して貰いたい所だな。そうすれば今までの溜飲が下がるだろうしな」

 

     ふっ、と吐息を吐き出してから秋名は小さく肩を竦めて、ストームブレイカーの成績を思い返している。

     ストームブレイカーの成績は今思い返してみても惜敗の連続が多く、4歳で馬体が完成し始めるまで成績が安定しなかった。

     それが今では重賞を2勝して、GⅠでも掲示板に乗るくらいの成績を出しているのだから。

 

    「最後くらいは花を咲かせてもらいたいな」
    「……そうですね」

 

     秋子もしんみりとした表情でストームブレイカーのレースを思い返しながら秋名に同意する。

     テーブルの上に置かれたままのコーヒーカップからゆらゆらと湯気が立ち上っていく。

     後はストームブレイカーがマイルチャンピオンシップに出走する11月まで完全な仕上がりになるのを待つしか無い。

 

 

     さて、今週の競馬はKanonファーム生産馬の2歳馬3頭が出走する。

     ファントムロードは500万下、レッドミラージュが未勝利戦。

     そして、今回の出走が初めてとなるアイシクルランスの3頭がレースに挑む。

     ファントムロードは3ヶ月振りの出走となるが、しっかりと調教を行っていたので馬体の幅が広くなり、トモにはがっちりとした筋肉が。

     レッドミラージュも同じようにがっちりとしたダート向けの馬体に変貌して一目で分かるくらい筋肉質になっている。

     今回が初めての出走となるアイシクルランスはスラリとした胴長の馬体で、上記2頭よりも距離が長い方が向くと伺える。

     そのため、出走するレースは京都芝2000mと、クラシックの登竜門である2000m戦が選ばれた。

 

    「アイシクルランスはどちらかと言うと父似かな」
    「ルリイロノホウセキはマイラー寄りだったし、名雪の言う通りクリスタルグリッターズに似ているわね」

 

     毛色はまったく違うけど、と名雪は和やかにその点だけを口にしてから小さく微笑んで秋子も釣られてしまう。

     そして、3頭の中で最初に出走するレッドミラージュの未勝利戦が行われる。

     前走の芝と打って変わり、直線に入ると抜群の動きを見せ付け2着に2馬身の差で初勝利を飾った。

     東京ダート1600m戦とタフなコースだったが、あっさりと勝利した事でレッドミラージュはダート馬と言うことを示す。

 

    「やっぱりダート馬だったね……これなら次走でも勝てる可能性が出たかな」
    「次走は不明だけど、少なくとも芝路線は使わないでしょうね」
    「これだけ離して勝利した後に芝使うのはあり得ないだろうし、調教師が欲目を出さない限り大丈夫だろう」

 

     そう言っている間に次のレース――アイシクルランスの新馬戦が開催される。

     1番人気に支持されたのはイシノサンデー――サンデーサイレンスを父に持つ今年の有力馬の1頭として数えられる馬。

     本来は函館デビューだったが、夏の暑さで体調を崩してここまでずれ込んでしまった経緯が。

     そのため1番人気とは言え、オッズは4.1倍と微妙な評価になっている。

     因みにアイシクルランスは血統評価が今一つなのか、調教タイムが割かし良いのだが6番人気と、支持がされ難い状況のようだ。

 

    「う、うーん……今の競馬は調教と血統を足して評価されるようになっているなー。イシノサンデーは直前調教の上がり1ハロンのタイムが11.3秒だし」
    「アイシクルランスの方はウッドでラスト1ハロンが11.6秒だから、悪くは無いはずだがな」
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     そして、レース結果はイシノサンデーが勝利したが4着にアイシクルランスが入って何とか人気より上に持ってこられた騎手の手腕に納得する。

     最後にりんどう賞――京都芝1400mに出走したファントムロードは休み明けが合わないのか、3番人気に支持されながら5着に敗れてしまった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:イシノサンデー……実際は函館デビューだった。