ヤマトノミオの敗戦は残念だったが、少なくとも初の大井競馬場での結果としては2着なら上々だろう。

     何よりもナイター競馬――トゥインクルと呼ばれる夜間のレースは地方特有なので中央競馬では味わえない。

     ナイターのライトは球場にセットされているような大型の物が、ダートを明るく照らして、内馬場からは幻想的に瞬く馬を模した飾りなどが。

     初物尽くめの中での2着ならば、次走のJBCSも大井競馬場での開催になるので好走を期待出来るだろう。

     ナイターの時間帯によっては馬にとって睡眠時間である事が多いので、まともに走れない馬も居るのだからヤマトノミオの結果は良好と言える。

     それに休養から5ヶ月振りのレースだった事も踏まえると、次走では100%の仕上がりで出走出来るだろう。

 

    「さて、ヤマトノミオの良かった事だし来月開催のJBCSは期待出来そうですね」
    「敗れはしたが最後の最後で脚は伸ばしているし、騎手もしっかりと大井競馬場での乗り方は学んだと思うから、次走は前に付けるだろうな」
    「あれだけ前が残るペースで2着に入ったのだから、次走は初のG�祇錣世韻病臂翩廚修Δ世諭�

 

     と、3人とも期待感の満ちた表情をしており、来月のJBCSでは勝利する事を望んでしまっている。

     それくらい期待が出来る程の結果で勝利したサクラハイスピードはJBCCの方に回ると調教師が断言している状況。

     即ち、強力なライバルが1頭居なくなった事でヤマトノミオが勝利する可能性がグッと高まったのだから。

 

 

     そして、本日の競馬が新たな短距離王者を決定するスプリンターズS。

     高松宮記念を勝利したビコーペガサスが暫定王者として評価されている中でのスプリンターズSが開催される。

     安田記念の惨敗が短距離王者として認められなかった様で、ここを勝利すれば汚名返上して復権に返り咲く事が可能だろう。

     だが、3歳スプリンターのヒシアケボノやドバイからの遠征馬――ソーファクチュアルに古豪のストームブレイカーなど多様多種の馬が集結。

     今回のスプリンターズSを勝利した馬が高い可能性で次世代の短距離王者になりえる資格があるのだから、どの馬も必死に狙って来ている。

     まぁ、このレースで引退を予定しているソーファクチュアルだけは種牡馬価値を高める為だが。

     そんな訳で、スプリンターズSの出走時間が刻々と近づいてきた。

 

    「最終的には4番人気かぁ」
    「仕方ないわね……重賞2勝馬とG�犠,素呂任鷲床舛�変わるし」

 

     やれやれと言いたげに秋子は軽く肩を竦めてから、パドックを闊歩する各馬の様子を見やる。

     ストームブレイカーの馬体重は前走比−6kgと電光掲示板に表示されている。

     しっかりと調整はされてはいるようで、後はレースで走りを披露するのみ。

 

    「踏み込みも良いし、後は久しぶりの1200m戦に対応してくれれば良いんですが」
    「1年振りだからな。その点は非常に厳しいと思うが何とか走って欲しいんだがな」

 

     基本的にストームブレイカーは短距離馬なのだが、1200m戦は今回の出走も含めて2回目と少ない方。

     出走している距離は1400m〜2000mとなっているので、1200mは相対的に出走回数が減少している。

     その距離をこなしてきたストームブレイカーが1200mを走るかと言われれば難しいが、中には距離短縮で勝利する馬もいる。

     なので、可能性は低いが走る可能性は秘めているのだから。

     そして、ストームブレイカーは誘導員に曳かれて8枠17番のゲート内に収まる。

     最後に8枠18番の馬が入って、一斉にゲートが開く。

     真っ先に飛び出したのはヒシアケボノ――500kgを軽く超える巨体が京成杯オータムハンデと同じように先行している。

     ストームブレイカーは外枠が幸いして少しだけ他馬よりも走る距離が長いので、騎手は普段と同じく中団に徹していた。

     1200m戦なので、いつもよりも若干仕掛けが早くなると思われるが、好位に付けている。

     ビコーペガサスはストームブレイカーよりも僅かに前に位置して、その前を走るソーファクチュアルをマークしているようだ。

     そして、残り600m。

     まだ半分の距離しか駆けていないが、中団に位置していた馬が徐々に進出しその中にはストームブレイカーも含まれる。

     そして前方にはヒシアケボノがじっくりと脚を溜めている状況で、簡単には交わせそうも無い。

     ストームブレイカーは残り400mの時点で、外から勢い良く加速させて10番手から5番手まで進出。

     スタミナを信用したのか、前を走るヒシアケボノを捕らえられないと思ったのかは騎手の判断でしか分からない。

     そして、直線に入るとG�気蕕靴ご儺劼寮垢蠑紊�りが競馬場を包み込み、各馬が一斉に上がっていく。

     ソーファクチュアルは馬場の中央から鋭く伸びるが、その外からはビコーペガサスが馬体を合わせて仕掛ける。

     先頭はヒシアケボノが他馬に譲る気配を見せずに駆けており、ストームブレイカーは必死に追い上げているが、届きそうも無い状態。

     ビコーペガサスもソーファクチュアルもヒシアケボノに追いすがるのが精一杯らしく、残り100mの時点で止まってしまった。

     ストームブレイカーの結果は2着にもなれず、僅か首の上げ下げの差でソーファクチュアルにも敗れた4着だった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:ソーファクチュアル……父はマンノウォーの血を引くノウンファクト。
     注2:サクラハイスピード……元中央馬だったが94年に大井に転厩した。