残暑が厳しい時期――9月が到来し、毎日の様に空から照らされる日光は真夏日を続かせている。
それは本州の話であって、北海道では既に木々の葉が黄色や赤色に色付いて秋の到来を示していた。
本州に比べると幾分か過ごし易い状況だが、牧場で働く人物にとっては滲み出る汗を拭いつつ、牧場作業を毎日行わなければならない。
だが、それを差し置いて自家生産馬が活躍するのを見られるは感傷深い事なので、誰もが手を抜かないで日々の繰り返しを続けている。
どこの牧場も最大の目的であるG�祇�覇と言う壮大な夢を追い続けるために。
そして、今週の競馬――京成杯オータムハンデにストームブレイカーが今秋で最後のG�祇�覇に望みを賭ける為に始動。
ストームブレイカーにとっては今秋で引退が決定しているので、京成杯オータムハンデ後のG�気謀劼韻覦婬す�みは気迫が伝わってくる状態。
今でも呼ばれ続けている“善戦マン”と言う蔑称に終止符を打つチャンスは残り3戦しか残されていないのだから。
そのうち出走予定のG�気錬伽錙宗愁好廛螢鵐拭璽今咾肇泪ぅ襯船礇鵐團�ンシップ。
どちらの現状も短距離路線を引っ張る王者が居ない事ですっかりと空洞化しており、絶対王者が居ないと言う事はストームブレイカーにもチャンスが。
だが、今年の出走馬はG�靴箸六廚┐未曚匹旅訐�メンバーで筆頭として、本年度の皐月賞を制したジェニュインの存在が挙げられる。
未勝利から4連勝して一気にOPクラスまで駆け上がった上がり馬――ヒシアケボノと2頭の精鋭3歳馬が出走するのだから。
その中では高齢の部類になってしまうストームブレイカーだが、様々なレース経験はベテランの域に達しているので3歳2頭には引けを取らないだろう。
だが、実績面は大きく水をあけられているので必勝体勢でも過信は出来ない。
「やはり、ジェニュインとヒシアケボノが人気を占めているわね」
「皐月賞馬のジェニュインはともかく、ヒシアケボノには負けてほしくないなー」
と、名雪は競馬新聞を眺め、ストームブレイカーの支持された事が分かる印――○▲▲▲○、と3番人気になっている事を満足そうな表情を浮かべる。
単勝1倍台のジェニュインに比べると人気は劣っているが、人気があれば確実に勝てる訳ではない。
特にジェニュインは皐月賞馬と言うハンデがあるため、他馬よりも斤量が重く57.5kgは3歳馬には破格のトップハンデなのだから。
「弱点を突く事と言えば、このハンデだろうし、3歳でこの斤量は厳しいと思う」
「そうですよね。この後は天皇賞・秋を目標にしているみたいですけど、毎日王冠から始動した方が疲れは残らない筈ですけど」
余所の事情は分かりませんが、と秋子はその言葉でジェニュインのローテーションの言及は止める。
ストームブレイカーの勝率が少しでも上がれば良いのだから、相手がここに出走させた理由を知っても意味が無いのだから。
そんな訳で、京成杯オータムハンデのレース時間が刻々と迫っており、現在はゲート前で誘導員にリードを曳かれて闊歩している。
ストームブレイカーの本馬場入場は実に落ち着いたもので、ベテランらしい風格を堂々と見せ付けていた。
ジェニュインもG�鞠呂蕕靴�堂々と走っていたが、サンデーサイレンス産駒特有の気性の荒さがあって、抑えが効かない様な形だった。
「やはり、歳を重ねる毎に落ち着きは出てきたので安心して見ていられますね」
「まぁ、落ち着いていれば必ず勝てる訳でもないが、勝てる可能性が上がるから良いか」
と、返し馬の様子を思い出しつつ秋子は安堵感を秘めた表情で、ゲート前を歩くストームブレイカーをTV越しで見る。
そして、レース開始時間になり中山競馬場特有の重賞ファンファーレが響き、各馬がゲートに入っていく。
ストームブレイカーは1枠1番と最内からのスタートとなり、包まれる可能性が有り得るので絶好のスタートを切らないと危ない。
最後に8枠12番の馬がゲートに入り、京成杯オータムハンデのスタートが切られる。
好スタートを切ったのはヒシアケボノ――500kgを超えた馬体を揺るがしながら、好位置をキープし駆けていく。
ストームブレイカーは良くも悪くも無い形でゲートから出たが、前には1頭の馬が居るので最内は取られたと言っても良い。
こうなると上手い具合に前が開くのを待つしかなく、最内から大外に持ち出して脚を使ってしまうと言う愚弄を犯す必要は無い。
「ここでしっかりと我慢して、直線で進路が開けば良いんですが……」
「ペースは平均的と言うより前が遅いみたいだからな。下手すると前と横が開かないまま終わる可能性があるな」
中団の外目を走っているジェニュインは虎視眈々と先頭の様子を伺っているようで、ベテラン騎手が騎乗しているのでペース判断は間違えないだろう。
残りの距離は1/3程――1600m戦の為、500m付近から徐々に各馬が動き出していく。
直線は約310mと非常に短いが、最後の最後にそびえる中山名物の坂が行く手を拒む。
ジェニュインは最終コーナーに入った時点で、8番手から5番手に外から上がって先行馬を射程内に捕らえる。
大外一気と言う訳でもなく、外に出たがっていた馬の進路を横から押し込んだ為、煽りを食らった馬は勝負所で置いていかれてしまう。
先行していたヒシアケボノは馬場の中央を重戦車の様なパワー振りを見せ付けており、寄って来た馬に怯まず押し留めている。
残り200m。
ストームブレイカーはヒシアケボノが寄られた相手を押し留めている隙に最内からスルスルと抜け出して一気に突き放そうとする。
だが、外からジェニュインが中央からはヒシアケボノが追い上げてきている。
最初に坂を駆け上がって来たのはストームブレイカー。
残り100mにも満たない距離だが、上位3頭は必死に脚を伸ばし先頭でゴールを駆け抜けようと叩き合っている。
そして、最後の最後で2着のジェニュインに頭差だけ抜け出したストームストームブレイカーが1年振りの重賞制覇を飾った。
戻る ← →
この話で出た簡潔競馬用語
注1:ヒシアケボノ……500kgを超える馬体重が別の意味で人気者に
なっている。