レッドミラージュは新馬戦で好位に居ながらまったく伸びなかった事で早くも芝を見切ってダート路線に向かう事が確定。
距離が長かったと言う意見もあったが、レッドミラージュの父はダート路線で活躍したスキャンなので芝よりもダート向けなのは明らか。
次走はダート未勝利戦からとなるので、仕切り直しのダートで何処までやれるかがレッドミラージュの正念場だろう。
因みに同レースに出走したルビーロウはこの後も芝路線を目標とするようで、ゴール前で最後に差されたとは言え、負けてなお強しの結果だった。
この結果を受けて早くも宮藤は秋子に勝った気になって喜んでいるが、これからの結果次第では逆転する可能性もあるので勝敗はまだ不明である。
「あまり伸びなかったのは芝が向かないからかな?」
「さぁ、それは次走のダートで結果を見ない限り分からないわ」
敗因を探ろうとするが、それは途方も無く難しい問題なので安易に答えを決め付ける訳にもいかないのだから。
ダートなら確実に走ると言う保障も無いので、まずは父スキャンの様にダートで走るかをチェックする必要がある。
「まぁ……晩成と言う可能性もあるし、じっくりと見守った方が良いな」
「……その可能性もありますね」
秋子はサイドボードに仕舞っている産駒の成績を記したノートを手に取り、レッドミラージュの敗因だと思われる原因を3つ記入。
芝、距離適正、晩成と3つの敗北した可能性を着順の横に記入して、ノートを閉じる。
そのノートには秋子が所有した馬の成績から敗因が細かく記載されており、年季が入った物だと一目で分かる。
こういう情報は地味に思えるが、1つ1つが積み重なれば膨大な量になり、資料として機能するのだから。
秋子にとっては大事なデータが収められているので、そこいらの物よりも価値があるだろう。
「さて、このまま宮藤さんに負けるのは癪ですし、ファントムロードかアイシクルランスに頑張ってもらいますか」
「今年の2歳馬は芝路線がファントムロードとアイシクルランスだろうし、また何処かでぶつかる可能性はあるかもな」
先の事になるのでルビーロウと再戦するかは何時になるか不明だが、少なくとも負けっぱなしで退く事は秋子のプライドが許されないのだから。
さて、今週の競馬にはホワイトウインドが復帰2戦目となり、格上挑戦でBSN賞に出走する事に。
格上挑戦とは言え、夏のダートハンデ戦で距離が1200mと出走馬の数が揃い難いのが幸いして、フルゲートにならなかった経緯が。
何よりもハンデ戦という事で、ホワイトウインドの斤量は53kgと他の馬よりも1kg軽い状況で出走出来るのだから。
OP戦だがホワイトウインドの成績も負けていなく、ダート短距離では2戦2勝と安定した実績を残す。
最近は馬体もガッチリとしてきて馬体重も増加しているので、ひ弱だった2歳時に比べると遥かに成長している。
なので、格上挑戦しても見劣りしないと言う見解が秋子と調教師の中で一致したので、今回の出走はあっさりと踏み切っている。
「ここを勝てば一気にOPクラスに昇格出来るので、チャンス到来ですね」
「ハンデも軽いし、出走馬のレベルは夏明けらしくそれほど集まっていないからな」
人気は前走負けたのが原因なのか格上挑戦が原因なのかは不明だが、6番人気と微妙な売れ行き。
競馬新聞には▲△△△と本命と抵抗を示す◎と○は1つも無いが、短評部分は“チャンスあり”と書かれていた。
初のOP戦の壁は高くホワイトウインドの前にそびえているかもしれないが、飛び超える可能性もある。
そして、レース開始時間になり各馬がゲート内に収まっていく。
ホワイトウインドは6枠7番からのスタート――前日に雨が降った分、ダートはぬかるんでいる状況で、外寄りのゲートは内枠に比べると幾分マシ。
スタートすると同時に大量の泥が飛び跳ねて、出遅れた馬の馬体と騎手を真っ黒に汚していく。
ホワイトウインドはキッチリとゲートを出たが、行き脚が悪かった様でベストポジションを取れなかった。
ただ、ダートを被らない位置に居るので走る気を無くす可能性は少なく、後は直線で脚を伸ばせるかが問題。
「……位置取りは大丈夫ですね」
「およそ8番手辺りで、ダートを被らないように外目を走っているしな」
「前が止まり難い馬場だし、中団からでもキッチリと交わすかな?」
雨が降った時のダートは脚抜きが良くなり、スピードが出やすくなる馬場に一変するのだから、名雪の心配も当たり前。
そして、あっという間に1200m戦の為、直線に入り各馬が先頭を走る逃げ馬を追いかけ始める。
ホワイトウインドは外から騎手の鞭で気合を入魂されて、良い脚でグングンと伸びているが、逃げ馬が付けたリードを縮める事は厳しい状況。
そして、最後は良く伸びて追い込んだが、逃げ馬と先行抜け出しの馬を交わせなかったので3着に敗れてしまった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。