イチゴサンデーは無事に千葉県白井市にある競馬協会が運営の競馬学校で検疫期間――7日間を過ごして、故郷のKanonファームに戻ってきた。
その際、競馬学校では多数の生徒がアメリカG�気鮴�したイチゴサンデーに騎乗してみたい眼差しを向けられていた様だ。
特にイチゴサンデーの様な騎乗馬を掴める事が出来れば夢を見られる可能性があるのだから、そのような眼差しを向けられるのは当たり前。
国際G�気忙慊蠅気譴討い襯▲瓮螢�ンオークスを制したのだから、誰もが注目してしまうのは必然だろう。
だが、気性の激しさに畏怖を感じた者が居るくらい、イチゴサンデーは激しく動き回って検疫期間を7日間切り抜けたと競馬学校内で逸話が残ってしまった。
閑話休題。
無事にKanonファームに戻ってきたイチゴサンデーは広々とした放牧地で寝転がったり、駆け回ったりしてストレスを発散させている。
漆黒に近い毛色――黒鹿毛が陽光に照らされて、ますます威風堂々とした馬体として映りえる格好であった。
さて、イチゴサンデーが放牧されている間に次走のローテーションを決めなくてはならない。
ひとまずの目標は秋華賞とエリザベス女王杯に合わせる事になっているが、ステップレースを叩くがどうかが議論に。
秋華賞は通常通りに開催されるなら、10/15と約3ヵ月後に京都で行われる。
その合間にあるステップレースは9月の阪神で開催されるローズSと同月の中山で開催の紫苑ステークスの2つが。
8月には札幌競馬場でクイーンS――秋華賞のステップレースではないが、レース間隔が適した古馬混合戦がある。
8月のクイーンSは現在放牧中なので今から調整しても間に合わないのから消去法で真っ先にカットされる。
即ち、残りの案は3つ。
ローズSか紫苑Sのどちらかから復帰し、秋華賞を目指すプラン。
どちらもステップレースとしては重要な位置付けだが、相手との力量を図るならローズSの方が望ましい。
そして、残り1つの案は直接秋華賞を狙う案が。
これは10月に開催される事を踏まえたローテーションなので、1番イチゴサンデーの体調に合わせやすいメリット。
中間にレースを使えないと言うデメリットがあるが、残暑が激しい9月に出走させる事無く、秋華賞に望めるメリットの方が強い。
「さて、どちらにしましょうか?」
「わたしとしては直接狙う方が負担は少ないと思うので、ローズSか紫苑Sに出走するのは反対ですね」
この場――リビングのソファーに座っているのは秋子とイチゴサンデーの折坂調教師が。
イチゴサンデーの今後に関するローテーションの話し合いで、折坂調教師は夏の間は預かっている馬を北海道で使う事が多く、話し合いの方はついで。
「中間を使えば秋華賞で体調が上向く可能性もありますし、簡単に決定出来ませんね」
「ええ、アメリカンオークスを勝利した馬ですから秋華賞は落とす訳にもいかない状況なので、こちらも迷いますよ」
勝者故の期待感がイチゴサンデーの秋華賞制覇を当たり前だとみられている節があるので、下手に敗北すればフロックだと思われかねない。
そのため、イチゴサンデーのローテーションはあっさりと決める訳にも一進一退の話し合いが続いている。
「所で、イチゴサンデーの下の方はどうですか?」
現在、放牧されているファントムロードについて秋子は折坂調教師に手応えを尋ねてみる。
流石にイチゴサンデーのローテーションに関する話し合いが平行線だったので、ファントムロードの話にはあっさりと乗ってくる。
「今の所はまだまだひ弱ですけど、3歳秋頃から本格化しそうな気がしますね。姉よりも距離適正が長いと思いますし、ジックリと育成する予定ですよ」
1200m戦を勝てたのは偶々だと思いますが、と折坂調教師は一言付け加える。
なるほど、と秋子はあっさりと納得したようだ。
「それと産駒の成績はダート路線での活躍が圧倒的に多いので、ファントムロードもダートは走るかもしれません」
「ダート馬ですか……今の所、その姿はあまり想像出来ないですね」
と、ファントムロードの事が話し終えると、再びイチゴサンデーの話題になると思いきや、リビングには沈黙で包まれてしまった。
そして、折坂調教師が帰ってしまうとリビングは賑やかだった状況がすっかりと静かになってしまう。
結局、今回の話し合いではイチゴサンデーのローテーションは決定が出来なかった。
「さて、本当にどうしましょうね?」
と、秋子は独り言を呟いてから深くため息を吐いて、リビングの窓から放牧地を駆けるイチゴサンデーの姿を見つめていた。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。