イチゴサンデーがアメリカンオークスを制した事は日本競馬として歴史に残る快挙として、翌日の競馬新聞では1面トップを飾る。
騎手の派手なガッツポーズ写真が飾られたり、イチゴサンデーとレトロスペクティヴの叩き合い写真が掲載されている。
歴史的な勝利として、イチゴサンデーはアメリカ競馬に名を刻んだ事になるなど、大げさに近い誇張で表現されているが、誰も咎めようにもなれない。
ハクチカラがアメリカに遠征して、11戦目――1年滞在しての勝利を挙げた以来のアメリカ競馬での勝利なのだから。
しかも、重賞――G�靴筍猫兇任呂覆�G�気覆里世�ら、優勝で盛り上がるのも当たり前である。
36年振りの勝利――様々な名馬がその道を辿り、道半ばで敗れていった
道が切り開かれた事になるのだから、後に続く馬への指針となっただろう。
今年、これから海外競馬で出走するダンスパートナーとナリタブライアンに最高の形でバトンタッチを果たしたのは間違いない。
この勝利が大きな道へと繋がる事を信じて、ドンドンと他馬が海外遠征を行うようになるのだから。
ガサガサと紙が擦れる音を立てながら秋子は競馬新聞を読みながら、満面の微笑みを浮かべる。
イチゴサンデーが勝利した事を掲載されている競馬新聞は全て購入されており、テーブル全体が軽く覆いつくす量がこの場に広げられていた。
「やっぱり、こうやって1日経ってから競馬新聞を見ないと実感が沸きませんね」
「だろうな。私も勝った時は夢かもしれないと思った口だからな。1日経ってからようやく実感が沸いて喜べたしな」
秋名も身近にある競馬新聞を手にとって、ペラペラとページを捲って記事を読み始めてしまう。
既に1回は読み終わっている筈だが、やはり自分達が生産した馬――イチゴサンデーが賞賛されていたら、何度も読み返してしまうのが一般的。
「自分達が生産した馬があっさりと海外制覇するとは思わなかったな」
「本当に1回目の挑戦で勝利するとは思いませんでしたよ……惨敗し糧を得て次に繋がると思ったんですけどね」
夜の帳の中でうっすらと電球を灯したリビングには秋子と秋名が2人きりで、ウイスキーグラスの中に注がれた琥珀色に輝くウイスキーを飲み明かす。
ウイスキーグラスを揺らすとそれに合わせるようにカラカラと角ばったロックアイスが音を立てる。
お互いにゆっくりとアイスロックで味が変わるウイスキーを楽しみながら、あれから口数が少なくなるも、嬉しげな表情は変わらない。
「……そろそろ、お開きにしませんか? 明日に響きますし」
「そうだな。最後にもう一回乾杯しておかないか?」
秋子は秋名の提案に対して小さく頷いてから、ウイスキーの量が少なくなったグラスを掲げ、秋名も合わせるようにグラスを掲げる。
カチーン、と小気味良い音を立てた2つのグラスは中に残っているウイスキーと氷が揺れ続けていた。
そして、誰も居なくなったリビングにはテーブルの上に残された2つのグラスだけが、その存在感を示していた。
そして、今週の競馬はエアスパイラルが久しぶりに出走を果たす。
函館で開催されるOP戦――マリーンステークスに。
距離は1700mと適正距離なので、マイル前後で活躍しているエアスパイラルには向いているレースだろう。
そして、前2走前の結果が続けて2着に入っている事が押し上げて、5番人気に支持されている。
その時は重賞の平安ステークスだったので、流石に実力差が大きかったと思われるが、今回は再びOP戦に挑戦なのだから勝機はあるだろう。
「うん……3ヶ月振りだけど、しっかりとした動きだね」
「キッチリと調教していたと聞いているし、去年の大沼ステークスで同距離同コースで3着になっているから、チャンスはあると思うがな……」
問題があるとすれば、3ヶ月振りの出走がどう響くかだけでパドックを見ていた限りでは入れ込んだ兆候は無かった。
チャンスと言えばチャンスだが、実質的にはどこまでやれるかが問題だろう。
前走は初の1200m戦だったとは言え8着に敗れているので、そろそろ引退の時期が迫っているかもしれないのだから。
なので、エアスパイラルにとってはこのレースは正念場とも言えるだろう。
「さて、どうなりますかね?」
「良さそうな気配はするけどな……そろそろ体力的には限界かもしれないな」
秋子と秋名、名雪はエアスパイラルが出走するマリーンステークスの結果を見るためにドッシリとソファーに腰掛けている。
そして、レースの結果はいつものように中団に位置していたが、ハイペースだった展開にも関わらず、伸びが悪く後ろから来た馬に抜かれてしまう。
その結果は15頭中12着で既に全盛期を過ぎたのが伺える結果となってしまい、エアスパイラルは近いうちに引退する事になるだろう。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。