キラキラと真新しい優勝カップが陽光を反射させ、黄金の輝きが目を眩ませるほどの存在を見せ付けている。
「NHKマイルカップの優勝カップは意外と小さいな」
NHKマイルカップ当日はKanonファームで観戦した名雪が、嘗め回すように優勝カップを手に持ちながらジックリと眺め、本音を吐露する。
「これで重賞制覇は11個目か……ここ5年での達成は早いのか遅いのか判断しにくいなー」
名雪はもう一度、優勝カップ全体を眺めてからサイドボードの上に戻す。
白いYシャツに色褪せたジーンズというシンプルな出で立ちでリビングに下りてきた名雪は、ソファーに座って話している秋子と秋名の会話に加わる。
「お帰り。イチゴサンデーが優勝して良かったよ」
後はオークスの結果次第で選考されるかの結果がガラリと変わる可能性があるので、予断は許されないだろう。
「で、名雪ちゃんが見た限りではイチゴサンデーの走りはどう思う?」
秋名はソファーの背もたれにだらしなく寄り掛かりながら、名雪にイチゴサンデーの走りを評価してもらう。
「そうだね……相変わらず叩き合いになれば強い事が分かったけど、一瞬の切れが足りない様に感じたかな」
評価すべき点と足りない点をサッと名雪は述べて、秋名を納得させる事が出来たのか、評価を聞いた本人は小さく頷いていた。
「そんなもんだよな。もうちょっと瞬発力があれば安心出来るんだが、現状の叩き合いに強いだけだと、離された状態で抜かれると一間で終わりだしな」
毎回叩き合いの状況には持ち込めないので、桜花賞の時のように離されていると、イチゴサンデーには厳しい状況でしかない。
「まぁ、選考されるかは分からないけど、今後の事を考えると短所を補った方が良いかもね」
こっちに放牧されるかは知らないが、と秋名は無責任な発言をしてしまうが、誰も気にした様子は無い。
現状に行う厩舎仕事を1つ1つ終わらせて、名雪が家に戻るといつもと違った雰囲気がリビングを包み込んでいる。
「では、イチゴサンデーの勝利を祝って乾杯」
全員が並々と飲み物が注がれたコップを掲げて、秋子の乾杯の言葉で祝賀会が始まる。
「相変わらず、料理の腕も天才的だな」
にこやかに料理を食べている秋名、名雪と従業員に秋子は笑みを浮かべつつ、自身もゆっくりと料理を口に運んだ。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。