イチゴサンデーの桜花賞は惜しくも3着に敗れてしまったが、1着のワンダーパヒュームと2着のダンスパートナーとの差は1/2と頭差。
即ち、惨敗した訳ではないので逆転の余地があるのは確か。
実力の差では無く僅かな勝負のあや――内から追撃したが併せていた馬が思ったよりもイチゴサンデーに付いて行けなかった。
そのため、競り合う事で脚を伸ばすイチゴサンデーには相手がスタミナを保たなかった事で伸びを欠いた。
同じサンデーサイレンス産駒のダンスパートナーに併せていたら、鋭く伸びて交わした可能性もある。
もうちょっと遅く他馬と競り合っていれば2着はあったかもしれないが、既に桜花賞は終わっているので、次の事を考える方が手っ取り早い。
「これでオークスの優先出走権は得た事になりますが、次走はどうしましょうか?」
秋子は受話器を耳に軽く当てながら、イチゴサンデーの調教師である折坂調教師と話し合いを行っている。
オークスに出走しても問題なさそうだが、一気に距離が800mも延長されるのは調教師も慎重になってしまい簡単に決定が出来ない。
NHKマイルカップなら桜花賞と同距離なので距離適正は問題無いが、牡馬との混合戦は2歳戦ならともかく3歳になると差は大きく拡がる。
「わたしとしては未知の距離であるオークスよりもNHKマイルカップの方が良いと思いますね。どっちを選んでも回り道は出来ませんし」
牡馬を相手に1600m戦か、同じ牝馬同士で未知の2400m戦で秋子が選んだのは前者。
調教師がローテーションを決定する権利を持つので、秋子の意見はあくまでも1つの意見に過ぎず、決定権は無いに等しい。
基本的にローテーションと調教に関しては調教師に任せた方が理論に適っており、馬の所有者に過ぎない者が口出しすると全てがご破算になる事も。
「主な決定はそちらに任せますが、距離適正はどう思われているんでしょうか?」
調教師の言葉は2200mぐらいまでと曖昧な答えが返ってきたが、秋子としてはそれが聞ければ十分だったようだ。
受話器からは後日までに次走を決定しておきますと、調教師の返事を聞いてから、お互いに受話器を元に戻した。
「で、ローテーションはどうなったの?」
名雪はソファーの背もたれ部分に肘を乗せて、頬杖をつきながら秋子に質問をする。
曖昧な表情を浮かべつつ現時点は未定と言う事を名雪に伝える秋子だったが、名雪の方は納得していない表情になっていた。
「ハッキリと早めに決めた方が良さそうだけどなー」
「そうかしら? 焦っても無理があると思うわよ。NHKマイルカップまで後1ヶ月もあるんだし、皐月賞次第でも平気じゃない?」
そうかな、と名雪は顎に軽く手を添えて考えてしまうが、あまり焦っても意味が無いと納得したようで小さく頷く。
「そういえば、今週は皐月賞だったね……フジキセキが居ないのに何処までサンデーサイレンス産駒は走るのかな?」
「駒を進めたのはジェニュインとタヤスツヨシの2頭だったわね。どちらもそれなりに走っているし、掲示板になら載るんじゃないかしら」
ここの結果次第ではサンデーサイレンスの種付け料は一気に高騰してもおかしくないので、今後も種付け出来るかが決まってしまう。
桜花賞も2着ダンスパートナー、3着イチゴサンデー、4着プライムステージと、サンデーサイレンス産駒が爆発した結果を残している。
間違いなく、過去の歴代種牡馬よりも凌駕する産駒成績を誇っているので、日本に名を残す種牡馬になりえるだろう。
「今、考えると良くサンデーサイレンスを種付け出来たと思える状況ね」
「運が良かったんじゃない? 初年度の当時は人気が無かったし、種付け料も800万と今に比べると300万も安いし」
秋子がサンデーサイレンスの種付け権利を購入出来たのは僥倖であり、今後は既に購入しにくい状況になってしまっているのだから。
さて、今週は皐月賞が中山競馬場で開催される週だが、Kanonファームの出走馬は前日――土曜日にエアスパイラルが京葉ステークスに出走。
華やかになる日曜日に比べると観客の入りはまだらで、中山グランドジャンプが開催される割には、微妙な観客数。
阪神競馬場の方はマイラーズCが行われるので、G�兇蕕靴�日曜日の皐月賞には及ばないが動員数は多い方だろう。
障害レースは日本では欧州に比べると幾分かマイナーなので、この観客数でも仕方ない。
閑話休題。
エアスパイラルは平安S――1月以来の出走となり、初の1200m戦と不利が多く、人気は前走2着に入りながら6番人気に留まっていた。
そして、レースの結果は距離が短すぎたのか、伸びを欠いて8着と微妙な結果になってしまった。
流石に前走から600mも短縮された状況ではついて行くのが精一杯だったようだ。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ジェニュイン……この時点では若葉Sを勝利しているが、2着からの繰り上がり。
注2:タヤスツヨシ……ラジオNIKKE杯2歳Sを勝利。