桜花賞。

     牝馬クラシックの1冠であり、阪神芝1600mで施行される伝統的なレース。

     元のなった原型のレースはイギリス牝馬クラシックの1冠目の1000ギニーを範しており、今ではすっかりと桜花賞の名は根付いている。

     タイミングが良ければ桜が満開の時期に桜花賞が開催されるので、桜の女王決定戦とも呼ばれ、咲き散る桜の中で駆ける馬は気品ある走りを見せる。

     2冠目のオークスに比べると800mも距離に違いがあるので、スピードタイプの馬が実績を残しやすい。

     ただ、阪神競馬場で開催されるのが影響あるのか、魔の桜花賞ペースと呼ばれる乱ペースの為、1番人気が敗れる事が多い印象が。

     だが、今年は咲き乱れる桜の下で行われる事は無く、諸事情により“京都競馬場”で開催される。

     そのため今年は阪神競馬場で開催されるよりも直線にある坂が無い分、パワーよりもスピードが重要になっている。

     そして何よりも、コース体型によるペースが乱れにくいので如何に若く精神的に幼い牝馬を扱うかが騎手の腕に掛かっていると言っても過言ではない。

     本来だったら阪神競馬場で開催される筈だった桜花賞はどのような結果になるかは予想し難くい状況になっていた。

     さて、そんな中で1番人気に支持されたのは阪神ジュべナイルフィリーズで2着になったイチゴサンデーでは無い。

     クイーンCを勝利したエイシンバーリンでも無く、トライアル重賞のチューリップ賞を制したユウキビバーチェでも無い。

     1番人気になったその馬の名はライデンリーダー。

     笠松競馬所属の牝馬で10戦10勝の実績で中央に乗り込んで来たステップレース――フィリーズレビューでは初の芝ながら2着に3・1/2馬身の差を。

     そのため11戦11勝の実績を持つので圧倒的1番人気に支持されるのは納得出来るが、中央馬も意地を見せるだろう。

     因みに去年のヒシアマゾンの様にヤマニンパラダイスが出走すると思われていたが、故障により戦線離脱していた。

 

    「1番人気はライデンリーダーに譲ったけど、うちのイチゴサンデーも負けていない筈だけどなー」
    「それは同感ね。クイーンCの敗戦が響いているみたいだけど、強いレースを見せ付けたのはイチゴサンデーなのだから」

 

     名雪は顎に手を添えながら真剣な目付きで現在は装鞍所で鞍を着けていると思われるイチゴサンデーの事を思いながら喋っていた。

     秋子も名雪の言い分に同意しているが、現在座っている場所が京都競馬場の馬主席なので、普段よりも小声で口を開いていた。

     レース直前に雨足が強くなり、1枠1番と泥を被りやすい所からスタートし一瞬塞がれる不利を覆しての3着なのだから、侮れないのは確かである。

     それでもイチゴサンデーの人気は4番人気に留まっており、微妙な人気と言っても良い位。

     因みに人気順は以下の通りであり、現状ではライデンリーダー以外の馬は差が無い状況。

     1番人気:ライデンリーダー。

     2番人気:エイシンバーリン。

     3番人気:プライムステージ。

     4番人気:イチゴサンデー。

     5番人気:ダンスパートナー。

     と、なっておりその下にユウキビバーチェが6番人気で支持されている。

     ライデンリーダーはここまでの実績が抜き出ているが、芝2戦目でG�毅曳嵜裕い聾靴靴じ�解があってもおかしくない。

     ハイセイコーやオグリキャップは芝を慣れる意味で数戦してからG�気膨�戦し、実績を残しているのだから、臨戦過程が全然違う。

 

    「付け入る隙があるとしたら、殆どがそこにあると全員が思っているんじゃないかな?」

 

     名雪は馬主席特有の本皮を使用した1人掛けのソファーに座りながら周辺を見回してみるが、他の馬主の表情はなかなか分かり難い状況。

     簡単に表情は分からないか、と名雪は一言呟くと制服の上に羽織っているケープを結ぶグリーンのリボン部分を軽く弄りながらソファーに深く座り直す。

     名雪の着ている制服はえんじ色に近い赤色の制服で、上着部分とスカート部分が一体化しており、ミニスカートなので変わった形としか言いようが無い。

     そして、騎乗して育成馬を調教している名雪の脚線美が映りえるニーソックスが脚を包んでいるので艶かしい格好であった。

 

    「うーん……あまり、この制服で競馬場に来るものじゃないね」
    「……そうね。いくらなんでも目立ち過ぎるし、多くの視線が名雪に集まっているものね」

 

     名雪は眉を八の字に顰めて、げんなりした表情を覗かせるが数秒後には仕方なさそうに今日だけは我慢する事を決意したようだ。

     秋子はそんな娘を見て、苦笑いを洩らしてしまう。

 

 

     そして、パドックの時間が近づいており、周辺に座っていた馬主が少しずつパドックに向かって移動し始め、秋子と名雪も少し遅れて向かって行った。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:ライデンリーダー……笠松の名馬で、2歳時は9戦9勝。
     注2:ダンスパートナー……父はサンデーサイレンスで、現在は3戦1勝 馬。
     注3;ユウキビバーチェ……父はトニービン。