平安Sでエアスパイラルが2着に食い込んだ事で、馬単は万馬券となり配当は1万近くも付いて遅めのお年玉となった。

     これでエアスパイラルの実績は芝よりもダート路線をメインに向かっていく事が決定し、次走は何かしらのOP戦から復帰予定。

     今年のKanonファームの生産馬の成績は3戦1勝2着2回と全て重賞なので、去年に続いて好調をキープしているが、惜敗の数も又続いている状況。

     一般戦はまだ出走していないので、どのようになるか不明だが、勢いに乗って勝利しておいた方が後に繋がるのは確か。

     因みに一般戦に出走可能の馬はブルーフォーチュンとホワイトウインドで、ダンシングウイナーは2勝馬だが、3歳馬なのでOPクラスに在籍中。

     2歳馬を除いて8頭の所有馬がおり、内6頭がOPクラス或いは重賞馬なのは大手牧場を除くと羨望されてもおかしくない。

     これだけの実績を挙げているが、いつ成績が落ちてもおかしくないのが競馬で、日々新たな血統を取り入れる事を念頭に置かなければならない。

     そのため、今年の種付けは名雪が秋子から任意を任され、種付け配合を考えなくてはならない日々が続いている状況。

     後に牧場――Kanonファームを引き継ぐためのテストでもあるのだから、安易に決定は出来ない。

 

    「フラワーロックはミスタープロスペクター系と相性が良いから、芝種牡馬を探してみるかな」

 

     名雪はミスタープロスペクターの血統で芝の実績を持つ種牡馬を探し出すと、良さげな実績と価格の種牡馬を見つける。

 

    「へクタープロテクターか……父はミスタープロスペクターの直仔でウッドマン、G�犠〕�は1200m〜1600mまで5勝と」

 

     今年発行された種牡馬事典に掲載されているヘクタープロテクターの立ち姿写真を見ると、ややくすんだ栗毛に左前脚の白い毛の部分――白が1つ。

     フラワーロックとの配合はアウトブリードになるので配合しやすく、何も問題がなさそうだ。

     今年の7月から産駒デビューするので、どれだけ走るか見極めたい所とも言えるが結果次第では今年よりも種付け料が高騰する可能性もある。

 

    「取りあえず、産駒デビュー前の評価は現状ではそれなりに良いと風の便りで聞くし、候補にしておこう」

 

     うん、と名雪は自身を納得させるために頷いてから、ノートに候補種牡馬として記しておく。

 

    「後はサイレントアサシン、ルリイロノホウセキとエレメントアロー、それにワイルドローズ……これじゃあ時間が掛かるなー」

 

     軽く肩を竦めつつ、名雪は新たに候補となるべくの種牡馬を探すために再度、種牡馬事典のページを開き始めた。

     こうして大量の種牡馬写真を眺めているとバラエティ豊かな血統がある事が窺えて、それらの血統が地味に日本競馬を支えているのが分かる。

     高額の種牡馬だけではなく、低価格の種牡馬でも血統の裏づけがあれば重賞馬を輩出可能なので、秋子が色々な種牡馬を使用したのはそうした理由が。

 

    「あれだけの成績を残しているから、それを超えないと駄目だろうし……だからと言って安易に高額馬を使うのはなー」

 

     と言いつつも、名雪は再び種牡馬事典のページを開いて、次の候補種牡馬を探していく。

     次の繁殖牝馬はエレメントアローの様で、内国産の血統で大半を占められており、そろそろ海外馬の血を選択した方がスピードの幅が出ると思われる。

     エレメントアローの血統はノーザンダンサー、ミスタープロスペクターと流行の血統を1つも持っていないので配合をしやすいのが強み。

 

    「そうなると、コマンダーインチーフとかが面白いかな? ダンシングブレーヴはマリー病に患って馬体の張りが弱いし」

 

     或いはニジンスキー系のフレイズも面白いか、と名雪は口にしながら楽しげに種牡馬事典を読み漁っていく。

     ここまで候補として選ばれた種牡馬は産駒がデビュー前か、新種牡馬のどちらかで、そろそろ一定の成績を出して既存する種牡馬を選ぶ必要が。

     重賞勝ち馬を出して種付け料が安い種牡馬は最近の中ではサクラトウコウ、トウショウペガサスが筆頭だろう。

     前者は主に天皇賞・秋でビワハヤヒデの2着に入ったネーハイシーザーが。

     後者は阪神ジュべナイルフィリーズを制したスエヒロジョウオーを輩出しているが、共に種付け料はそれほど値上がりしていない。

     特にトウショウペガサスは伯父に天馬トウショウボーイが居る血統なので、思ったよりも悪くない。

     ここまでの候補として決定した種牡馬の種付け料を見ても、凡そ700万近くで秋子から渡された予算――1500万にはまだちょっと余裕あり。

     名雪は余ったお金を有効活用するために種牡馬事典のインデックスを開いて、その後は特定の種牡馬のページを開く。

     そして、そのページを見てから名雪は溜息を吐いてしまう。

     その種牡馬はノーザンテーストからリーディングを奪取したリアルシャダイ、トニービンとブライアンズタイムで到底、残りの金額では不可能な価格。

 

    「ウイニングチケットがトニービンの産駒だし、代替種牡馬としても大丈夫かな?」

 

     うーん、と名雪は腕を組みつつ唸り、悩ましい表情を浮かび上げている。

     これ以上は流石に考えるのが厳しくなったのか、軽く左右に頭を振って眉間を押さえてしまう。

     そして、軽く背伸びをしてから種牡馬事典とノートを閉じてリビングに降りていった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:ウッドマン……5戦3勝しかしていないが、初年度からヘクタープロテクターを輩出。
     注2:ヘクタープロテクター……フランス2000ギニー、ジャックルマロワ賞などを制しているマイラー。
     注3:コマンダーインチーフ……パリ大賞典を制してるダンシングブレーヴ産駒。
     注4:フレイズ……ブリーダーズターフを制しており、ジャパンカップにも来日している。
     注5:トウショウペガサス……重賞勝利数は2つのみ。
     注6:サクラトウコウ……重賞勝ちは2勝だが、兄にサクラチヨノオー、サクラホクトオーがいる。
     注7:リアルシャダイ……代表産駒にライスシャワー。