秋子からの課題を出された名雪は殆どの時間の割り当ては牧場仕事をしつつ、種牡馬事典を読み漁る方に切り替えている。
まだ、1月なので種付け時期の5月まで4ヶ月も時間があるので焦る必要は無いのだが、名雪は様々な種牡馬の血統を繁殖牝馬に合うかをジックリと思考。
本年度の種付け予算は1500万――中程度の価格で種付け出来る種牡馬を6頭の繁殖牝馬に回すか、高額の種牡馬で1頭の繁殖牝馬に回すかの方法が。
秋子はこの事に関しても全て名雪に任せるようで、決して口を挟もうとしない。
なので、名雪はどちらの案を採択するかで頭を悩ませており、この時期から種牡馬事典を読み漁っているのは間違っていない。
「うーん……さて、どうしようかな」
名雪はクルクルとリズム良く、指先でボールペンを回しながら種牡馬事典の目次を部分から、お目当てになりそうな種牡馬を探す。
インブリードもアウトブリードもOKだろうしなー、と名雪は独り言を喋りながら、ペン回しを止めて秋子から借りて成績表が書かれたノートを開く。
そして、繁殖牝馬のページには配合した種牡馬が書かれており、そこから何かヒントとなるものを探すが、これといったものは書かれて無かった。
名雪は既に繁殖牝馬の血統図を秋子が所持するノートとは別に書き込んで、種牡馬の血統を書き込めるように作っているが、種牡馬の部分は白地のまま。
「独自で考えるしかないか……楽しいから良いんだけど」
名雪の表情は眉間にしわが寄っている状態だが、目は楽しそうに種牡馬事典の中身を追っている。
インブリードにするなら3×4、などを呟きながらページを開いているのは競馬を知らない人から見れば、意味不明な状況だろう。
「ミストケープにはオペラハウスでも良さそうだけど、競馬協会の所有種牡馬だから牡馬の場合はセール出さないと駄目か」
種付け料は50万と安いが、欧州でG�気鬘馨,靴討い詭焦呂乃�離適正はクラシックディスタンスが最も向いていると思われている。
切れ味よりも長く脚を使えるのが特徴と言えるほどのスタミナを持つので、長距離で鳴らしたミストケープとは類似した箇所が多い。
ただこの配合には短所もあり、現在のスピード競馬が3年後には更に高速化している可能性も含んでいるため、これ以上スタミナを増やしても厳しい。
「ミストケープに短距離の種牡馬を付けたとしても、中途半端な性能になりうそうだし、とことん長所を伸ばした方が良いかな?」
うーん、と名雪は嬉しい悲鳴に近い唸り声を上げて、ノートに候補種牡馬として、オペラハウスの名を書き込む。
あくまでも候補なので、1頭でも良い種牡馬が見つかればガラリと変わる可能性を示している。
ただ、ミストケープは今年の種付けが初めてとなるので、どの様な配合が合うかは未確定要素。
だからこそ、世界中で流行しているノーザンダンサー系を父に持つオペラハウスを候補として最初に決定したのである。
「他の繁殖牝馬は後で候補を見つけるかな」
名雪は軽く背伸びをしてから、自分の部屋に置かれている競馬関連の本をざっと見渡しつつ、苦笑いを洩らしてからリビングに向かっていった。
さて、今週の競馬は先週のガーネットSに続いて、ダート重賞である平安Sが開催される。
出走する馬は近走は芝からダート路線に変更して結果を出してきたエアスパイラルが。
最近のダート成績は4戦2勝3着1回と底を見せていない状況で、競馬新聞は惑星として評価しているのがちらほらと。
そのため人気は14頭中10番人気と低評価になっているが、競馬新聞の印は注が押されている。
「ダート初の重賞挑戦だし、そんなに期待はしないでおいた方が良さそうですね」
「一応、きさらぎ賞で2着になった実績はあるけど2年前の話だし、気楽に見た方が良いだろう」
ダート路線は最近メンバーが集まってきているし、と2階からリビングに下りてきた名雪が横から口を挟む。
そして、名雪がソファーに座ると同時にレース開始時間になり、各馬がゲートに入っていく。
エアスパライルはスムーズにゲートに入って、最後に8枠14番の馬が入るまで、軽く脚掻きを行っている。
スタートが切られると、エアスパイラルは綺麗とは言えないが無事にゲートから出て、6番手に位置を付けた。
「行きっぷりは良さそうだけど、重賞でいつもと同じように脚が使えるかな?」
「どうだろうな……浦和記念を勝利したライブリマウントが居るし、厳しいと思うが」
秋名と名雪が、その様に話しているとレースは既に3コーナーと4コーナーの中間辺りに突入。
エアスパイラルは動く様子も無く、ダート路線に入ってから冴える切れ味を発揮させようとしているようだ。
直線に入ると各馬が一斉に仕掛けて、急激にペースが速くなりエアスパイラルに最も向いている展開に。
外に持ち出して徐々に差を詰めるが、ライブリマウントの脚は衰える様子は無く、1・1/2馬身まで追い詰めるのが精一杯だった。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ライブリマウント……実際は浦和記念ではなく、ウインターSを勝利していた。
注2:オペラハウス……父はサドラーズウェールズ。