秋空らしく、透き通るような青い空にうっすらとしたうろこ雲がいくつも浮かんで、地面にはススキが風で揺らいでいる。
秋の情景らしく多数のススキが風に揺らいでおり、Kanonファームの近くに生えているススキ群は牧場らしい雰囲気を醸し出す。
特に今年生まれたサッカーボーイの産駒が栃栗毛だったので、たてがみと尻尾の毛がススキの色と同様だからか、生産馬の中で一番雰囲気が合っていた。
神秘性を漂わせているのは確かで、駆ける度に揺れるたてがみと尻尾が風に揺れるススキと同調して優雅さを見せ付けている。
閑話休題。
さて、Kanonファームの生産馬がようやく少しずつ勝ち上がるようになってきており、今年の成績は去年より悪い状態だが現在は敗戦の数が減少中。
重賞制覇は相変わらず厳しい状況だが、京都で開催された京都大賞典ではミストケープがレコードタイムで駆けたマーベラスクラウンの3着に入った。
とは言え、2着馬とミストケープの差は頭差で、2着馬に至ってはマーベラスクラウンに鼻差まで迫っているのだから、ほんの少しの差で敗北。
これで今年のエリザベス女王杯で1年振りの勝利に目処が立ったわけで、後は調整ミスにならない事を祈るのみ。
今年のミストケープはまだ未勝利なので、ここで勝利しておかないと引退を伸ばした意味が殆ど無く、今年の最高成績が3着で終わってしまうのだから。
因みに予定ではエリザベス女王杯が引退レースなので、有終の美を飾って飾って欲しいのはKanonファームの全員が想う事だろう。
「今年は未勝利だし、そろそろ勝って欲しいな」
「去年のエリザベス女王杯以来、勝ち鞍から遠ざかっていますからね。勝利して欲しいのはわたしも同じですよ」
このまま引退時期を延ばしたのが失敗だと思われるのは癪に障るのだから、秋子としては何としてでも勝利して欲しい所だろう。
それくらい秋子の穏やかな語気が普段よりも強調されており、自身の判断ミスを悔やんでいるのが窺える。
そういう意味合いがあるので、今年のエリザベス女王杯に賭ける執念は去年より比べ物にならないくらいだろう。
ただ、今年のメンバーはヒシアマゾンと言う強豪の3歳馬が出走表明しており、早くも勝ち馬が決まった印象が広まっている。
他にもオークス馬のチョウカイキャロルが出走予定になっているなど、G�気蕕靴�強豪が集まってきた印象が。
迎え撃てるかは走らないと分からないが、少なくとも牡馬の一級戦で戦ってきたミストケープには大きく差を付けられる可能性は低い。
「エリザベス女王杯を2連覇した馬は1頭のみですからね。チャンスであるから狙わないと損ですから」
「そうだったな。G�毅河�覇なんかをうちの生産馬が達成したら偉業だろうな」
牡馬に比べると牝馬が同一G�気鯱�覇するのは非常に難しく、繊細に調教を行わないと活躍期間が短いのが牝馬特有の特徴なのだから。
ミストケープの様に重賞制覇しつつ6歳まで現役の牝馬の方が稀有な存在で多くの牝馬は4歳或いはG�祇�覇直後に引退し、故郷の牧場で繁殖生活が。
「やれやれ、ようやく今年のエリザベス女王杯でミストケープも引退か」
「長い時を走っていましたからね……最後くらいはスパッと勝利して欲しいです」
秋子は感傷深くポツリと一言呟きつつ、ミストケープが繁殖牝馬として戻ってくるのを楽しみにしているのが窺える表情になっていた。
今週の競馬にはヤマトノミオがおよそ5ヶ月振りに復帰する。
出走するレースは京都競馬場で開催されるOP特別――エニフSで距離はダート1400m。
普段の距離適正よりも200m近く、長い距離になるので不適切なレースになるが、使えるレースが残っていないのが原因。
交流重賞のジャパンブリーダーズカップスプリントに出走予定はあったのだが、本賞金も実績も足りないので呆気無く除外されている。
なので、距離が長いのを承知でエニフSに出走させる経緯があった。
「……さすがに距離が長いのが分かっているようで、人気はありませんね」
「1200m戦じゃないしな、勝つのは難しいだろう」
秋名はあまり評価していないようで、頬杖をついてTVを見ているのがその証拠だった。
視線はTVに向いているが、細められた目付きは射抜くような威圧感が浮かびあがっている。
そして、レースがスタートする。
ヤマトノミオは騎手が控えさせたのか、後方からレースを進めるようで距離適正の壁がある事を懸念しているのが分かる。
基本的にヤマトノミオは中団辺りに位置づけて、走るタイプなので後方からレースを進めるのは出遅れた1戦以来。
「いつもの位置取りだと伸びないと判断したのか……」
「直線の途中で止まってしまう可能性がありますし、それなら脚を溜めて直線に賭けた方が良いでしょう」
そう言っている間にレースは既に直線に入っており、中団に位置していた馬が力強く伸びている所がTVに映し出された。
残り100mで、その馬が外から先頭で粘る馬をジリジリと抜き、半馬身だけ交わしたところがゴールだった。
ヤマトノミオは後方から追い上げたが、結局は距離適正外だったので、16頭中10着が限界だった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。