エアスパイラルがながつきSを勝利し、ダート適正もある事をここでハッキリと証明したが、世間の評価はまだまだフロックだと思われている節が。

     勝利した時の人気は7番目だったので、ノーマークに近い状況だったからこそ勝利出来たと言う声もあるのは事実。

     競馬はどのレースもそうだが、そのレースで1着になった馬が1番で、それ以降は敗北者なのだから運や偶然が勝利を呼び込んだ馬が勝つと言える。

     実際にKanonファームではタイフーンが引退した穴埋め代わりとして、OP特別を勝利した事をささやかに祝っていた。

     今年の勝利数――重賞とOP勝ちが少ない方なので、1つでもOP戦が勝利出来れば嬉しい出来事なのだから。

 

    「これでタイフーンが引退した埋め合わせは出来たわね」
    「もうちょっと、タイフーンに走って欲しかったけど喘鳴症だったから、仕方ないね」

 

     引退を決定させた名雪が言う台詞ではないが、本音は喘鳴症でなければ役続行させていたのは事実だろう。

     それくらい喘鳴症は厄介な病気なので、数多くの引退した名馬が事実を示している。

 

    「これで今年の勝利数はいくつだっけ?」

 

     秋子は名雪の質問を答えるためにサイドボードに置かれている背表紙がボロボロのノート――所有馬の詳細が書かれているのを取り、ページを開く。

     流暢な文字で書かれているノートは秋子の女性らしさが滲み出ており、名雪はジッとノートの中身を横から覗き込んでしまう。

 

    「えっと、今年は7勝だから去年の総勝利数よりも8勝近く減っているわね」
    「結構厳しいなー、今年は」

 

     名雪は秋子の言葉でグッタリとテーブルでうつ伏せ状態になってしまい、うな垂れた状態で口を開いている。

 

    「その分、重賞2着が多いのが、今年の特徴なんだよね?」
    「そうね。あと少しが足りないのは分かっているので、非常にもどかしいわね」

 

     今年の競馬開催が終了するまでの残り期間は2ヶ月近く残っているが、重賞を勝利出来るかは微妙な所であった。

     今のところ、重賞制覇を期待出来る馬はイチゴサンデーとストームブレイカーのみで、手札としては数が少ない。

     ミストケープは今年の成績が今一つなので、過信は出来ない状況でもあった。

     なので、一番期待出来る馬は新参で勢いがある2歳馬――イチゴサンデーでファンタジーSか阪神ジュべナイルフィリーズに期待されている。

 

    「まぁ、まずはストームブレイカーのスプリンターズSの結果がどうなるかだね」

 

     本日の競馬にはストームブレイカーが数少ないスプリントG�機宗愁好廛螢鵐拭璽今咾暴仭�する。

     流石に短距離王者――サクラバクシンオーがいる路線では厳しいと言う見解がKanonファームでは流れている状態。

     ストームブレイカーが1200mを走ったのは1992年と2年前の1走のみで、その時の結果は8番人気で7着と惨敗していた。

     2年振りとなる距離で簡単に勝てるとは思えず、サクラバクシンオーと言う絶対王者がいる限り不可能に近い。

     そんな訳で、スプリンターズSは期待しないで観戦する状況になっていた。

 

    「競馬新聞も注が一つだけ、載っているくらいだしそんなに期待は出来ないね」
    「走ってみないと分からないけど、10番人気ではちょっと……ね」

 

     秋子も流石に今回は厳しいと言う見解を示しており、気楽に観戦するようで手元にはコーヒーカップが握られている。

     コーヒーカップのふちに軽く唇を付けながら、秋子は競馬新聞をもう一度読み直しており、短評などを細かい場所を読んでいる。

     その短評には厳しいと書かれているだけで、至極単純に分かりやすい評価だった。

     ただ、欄外には前走から400mも距離短縮になるので、はまれば来るかも知れないと書かれているが、秋子には気休めしかならないだろう。

     レース開始時間が迫り、後数分もすればG�気離侫.鵐侫 璽譴閥Δ亡儺劼亮蠻鏤劼�聞こえてくるだろう。

 

 

     そして、スターターの上に上がった競馬職員が赤旗を優雅に振り、それに合わせるようにファンファーレの生演奏が行われる。

     それに合わせるように大勢の観客が手拍子で盛り上げて、各馬がその間にゲートに入っていく。

     ストームブレイカーは5枠7番からのスタートとなり、馬場の中心からになるので、スタート次第では不利になってしまう。

     全頭が無事にゲートに入り、数秒後にゲートオープン時特有の音を立ててスプリンターズSのスタートが切られる。

     サッと良いスタートを切ったのはサクラバクシンオーで、逃げの体勢だと思われたが、4番手辺りにゆっくりと下げていく。

     そして、ストームブレイカーは1200m戦のスピードに付いて行けないのか10番手と後方から進めている。

     電撃の6ハロン――1200m戦らしく、1分ものので決着が付くので瞬きした間で一気にレースは変わってしまう。

     3コーナーから4コーナーに掛けて動き出したのは、ストームブレイカーで前走の京王杯オータムハンデを走った後だからなのか、やや反応が良く感じる。

     残りの300mの間に一気に10番手から5番手に上昇し、内にはサクラバクシンオーが王者らしく、他馬の挑戦を受けながらジワジワと上がる。

     残り200m。

     ストームブレイカーの勢いは未だに衰えず、馬場の外から猛然と追い上げて4番手に。

     だが、サクラバクシンオーの騎手が鞭を一発二発、と振るうと一気に加速し、先行抜け出しを図っていた3頭の馬をいっぺんに交わす。

     そして、そのままサクラバクシンオーが勝利し、ストームブレイカーは良く走ったもの4着が精一杯だった。

 

 

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     特になし。