サンシャインレディが亡くなっても競馬は止る事無く回り続けて、相変わらず毎週レースが開催されている。

     名馬なら追悼式くらいは各牧場で行われるが、ただの1600万下に在籍していたサンシャインレディでは普通に火葬されて終わり。

     競馬協会としても、ただの1600万下クラスの馬が亡くなっても感傷深くなるわけではない。

     競馬協会に所属している馬のうち1頭が亡くなっただけに過ぎないのだから。

     もちろん、Kanonファームの生産馬もサンシャインレディが死亡しても、レースに出走をし続けている。

     そんな訳で各馬のレース結果を1頭ずつ記していく。

     まずはOP馬――重賞勝ちのミストケープとストームブレイカーは、3月か4月から復帰予定となっている。

     ミストケープは3月下旬――3月29日に開催される日経賞で復帰し、距離適正が最も合っているので、ここ以外無いと言っても過言ではない。

     もう1頭の重賞馬――今年の京都金杯を勝利したストームブレイカーは中山記念から再動が決定し、現在は調整中となっている。

     去年のクラシックを駆けた2頭――ブルーフォーチュンとエアスパイラルに付いては以下の通り。

     ブルーフォーチュンは伏見特別に出走した後も厩舎で調整を続けられて、およそ1ヶ月後のテレビ山梨杯で運良く逃げ切り勝ちを収めた。

     これで3勝目だが、半兄であるウインドバレーの成績にはとても届かなくなっているけれど、上が重賞勝ちの馬は未勝利で終わる事が多いので十分。

     続いてはエアスパイラル。

     去年は短い距離――マイル前後で成績が上昇し、2連勝を飾ったのが最後になかなか勝ちあがれない状況が続いている。

     初富士S4着→山城S6着、と勝ち馬からの差は0.4秒程の差のみで、展開が向けば1600万下は卒業出来ると言う見解。

     続いてはダート路線を駆けたヤマトノミオ。

     アレキサンドライトSの後は京都で開催された橿原Sに出走するも、まだ距離が長かったのか5着に敗れてしまった。

     そして、今週の競馬――クラシック路線に乗る馬を決める重要な位置取りを 持つレースと評価されているきさらぎ賞にタイフーンが出走。

     これといった馬が出走しておらず、大半の馬が2勝或いは1勝馬で、タイフーンも2勝とは言え、OP勝ちと重賞2着2回3着1回では全然違う。

     圧倒的な人気では無いといえ、2.5倍の1番人気なら十分と言えるだろう。

     問題とすれば、少々善戦マンな所がタイフーンにはあり、デイリー杯2歳S以外は全て、接戦で敗れている。

     なので、秋子からすればこの点がタイフーンに関する最も悩みの種としてなってしまっている。

 

    「……大丈夫かしら?」
    「メンバーがメンバーだけど、気を抜く癖があるからちょっと心配だね」
    「それほどメンバーが揃っていないからチャンスなんだけどな」

 

     やはりと言うべきか、3人――秋子、名雪、秋名は勝てる可能性はあるが心配な点として気を抜く癖を上げてしまう。

     タイフーンの実績が1200mを中心になっているのは気を抜く癖を出せないからの可能性が高い。

     ここは1800mなので、上手い具合に扱かないと惜敗する可能性があるので、ビッチリと追う様にと騎手に指示を送っている。

     ここを勝てば間違いなくクラシック路線には乗れるので、秋子としては前週に開催された共同通信杯で勝利したナリタブライアンに追い付きたい所だろう。

     因みに前走のラジオNIKKE杯2歳Sは3着と敗れているが、距離の幅を図るための結果なので問題は無い。

 

 

     そして、きさらぎ賞が始まるまで数分を切り、既に誘導員が頭絡にリードをセットしてゲートに導いている。

     入れ込んだ素振りを見せる馬が1頭居たが、2回目の誘導でキチンとゲートに入った。

     タイフーンは7枠8番からのスタートで、外枠になるが内寄りの芝は荒れて既にボロボロな状態なので、今回は外枠の方が脚を捕らわれる事が無い。

     全頭がゲートに入り、数秒後にはゲート扉が特有の音を立てて開き、各馬が飛び出していく。

     出遅れた馬は1頭も居ないが、荒れた芝を避けるために殆どの馬が外の方に向かう様に指示が騎手から出され、意図的に内を避けているのが窺える。

 

    「やっぱり、あの芝では内は避けるよね」

 

     名雪が言う通り、降雪でボロボロになった芝がTV画面からでも分かるくらい剥げており道中でスタミナを消耗するのは誰もが避けたいところ。

 

    「道中では避けるだろうが、直線ではロスが大きいから内に入るのがいると思うぞ」

 

     1000mを通過した時点でタイフーンは中団のやや前に位置しており、既に先行勢を射程圏に捉えているようだ。

     ただ、大外に進路を向けないとタイフーンの横で壁になっている馬群が横からの圧力を強めて、外に弾き飛ばされる可能性がある。

     1800mのコースは外回りの為、外に居る馬はどうしても最終コーナーの遠心力で大きく外を回ってしまう事が多い。

     そして、京都競馬場の名物である下り坂に突入し、一気に加速する馬も居れば脚を溜めている馬もいる。

     タイフーンは後者で、気を抜く癖があるので一気に突き放すのは難しいので徐々に仕掛けていく。

     坂を下りきった時点で先行勢の馬は4頭おり、タイフーンはそこから2馬身程後ろに位置していた。

     残り300m近くになって、先行していた馬は徐々に勢いを無くすが、それでもまだ僅かに脚を余しているようだ。

     後方の馬もドンドンと上がっており、一瞬の切れで先行勢に追いつこうと騎手の鞭に応えている。

     タイフーンも手綱の扱きから鞭が入って、グンと一気に加速するが残り距離は200mを切っている。

     先行勢を捉え、更なる脚で1頭又1頭と抜き去って、勝利するかと思われた瞬間――外から小柄の馬が一瞬でゴール前のタイフーンを首差抑えて勝利。

     その馬のゼッケンには8の数字とサムソンビッグと書かれていた。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:サムソンビッグ……実際にこのレースを最低人気勝利した実績を持つ。