散り振る粉雪が競馬場に降り、当日レースが中止になる事態が起き、月曜日に開催されたレース結果はほぼ荒れてに荒れつくした結果に。
本来なら体調が良い時期――日曜日に出走する予定だったのが降雪で延長してしまえば、体調は著しく落ちてしまい7分仕上がりの馬が勝ち上がる自体に。
その中に含まれる馬はKanonファームで生産されたヤマトノミオとブルーフォーチュンが含まれていた。
特にブルーフォーチュンは絶好の馬体となっていただけに勝てる確立が高かったが、この降雪のおかげで月曜日の結果は4着と惜敗。
2勝目を上げた時以来の馬体の出来だっただけに一瞬で、勝てるレースがスルリと手から零れ落ちてしまった。
どれだけ強い馬が誕生しようが、競馬場という枠組みがある限り自然には敵わないのは当然で、天候に対応したドームが必要になるのだから。
因みにヤマトノミオが出走したレースは叩き台の意味で距離適正外のアレキサンドライトS――1800mに出走し、見所も無く最下位となった。
「こんな時だけは降雪を恨みたくなりますね」
「こっちの降雪で鬼を見るような視線で睨んでも仕方ないだろ?」
秋子は気分の問題です、と開き直りつつ相変わらず灰色の分厚い雲を睨み続けていた。
それくらい1つの勝てるレースが自然の力でおじゃんになってしまうのは、秋子からすれば天敵とも言えるだろう。
だからといって、1月〜2月の間だけは未出走という手段は常に資金難に悩まされるKanonファームでは難しい。
はぁ、と秋子は仕方なそうに溜息を吐いてから、諦めを帯びた表情で空を見上げるのを止めてしまう。
「……天候に関しては諦めた方が良いですね」
「特に台風と降雪に関しては、絶対に無理だからな」
台風で開催延期になった事は何度も起こった事例なので、秋名は先持って例を出して秋子の機嫌をこれ以上悪くならない様に釘を刺しておく。
むぅ、と口を軽く尖らせてしまう秋子だったが、秋名の言い分が正しいのでこれ以上この事に関しては口にしなくなる。
最後に未だに雪が振り続ける空をチラリと秋子は眺めてから踵を返し、窓の傍から離れていった。
さて、今週の競馬は淀短距離Sにサンシャインレディが格上挑戦で出走する。
淀短距離Sは名の通り京都芝1200mで行われ、短距離のレベルが増加している近代競馬には理が適っているレース。
ここで好成績を挙げたら約1ヶ月後に開催されるシルクロードSを目指し、1ヵ月後に行われる高松宮記念を狙う最適なローテーションなのだから。
或いは3月の上旬にある阪急杯からのローテーションもあるが短い間隔で出走出来る上、既に重賞勝ちがある馬は別定戦の阪急杯から始動が多い。
逆にシルクロードSはハンデ戦なので、OP戦を勝ちあがった馬が力試しに近い感覚で挑戦し、心体が充実した馬がその後の高松宮記念に駒を進める。
果たしてサンシャインレディは格上挑戦ながら、どこまでやれるかが秋子にとっては一番の見所になるだろう。
現在の人気は12頭中10番人気で、殆ど人気が無いので気楽に走ってくれれば良いが出来ればある程度の結果も欲しい。
贅沢な悩みだが、これくらいの考えを持っていないと牧場経営は厳しいだろう。
「去年は1200m戦で2着と5着なんですけどね、人気無いですね」
「基本的にマイラーだと思われているんだろ」
秋名は簡潔に秋子が思っている事を言い、TVから流れるパドックの様子を窺っている。
馬体重は前走比+8kgとなっているが、冬の間の調整だから汗がなかなか出ないので増加しているのは仕方ない。
それでも、筋肉の張りは良い方なので時間掛けてジックリと調整していたのが窺えるだろう。
暫くパドックを周回すると、騎手が騎乗して地下道を通り本馬場に向かって行った。
現在の京都競馬場は冷たい風が吹き荒れて、横から叩きつける様に降り注ぐ小降りの雨が。
馬場状態は最悪の一点張りである不良状態で、これだと切れ味を身上とするサンシャインレディには厳しい条件が襲い掛かってくる。
そして、スタートが切られサンシャインレディは8枠11番からのやや立ち遅れた形でゲートから出る。
スタート直後から既に馬体は飛び跳ねる泥で汚れ、全て馬と騎手が雨と泥の2重苦で汚れていく。
1200m戦なので、一気にレースは600m地点に近づいて行くが坂の下りで脚を捕らわれたのか中団に位置していた1頭が故障発生。
転倒する事は無かったが、ズルズルと後退して行き、3と書かれたハロン棒の横でピタリと左前脚を痛々しく、上げたまま停止してしまう。
その馬のゼッケンには11と書かれており、サンシャインレディが故障発生したと一目で分かる事態であった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。