――今年1年の締めくりとして競馬ドラマが有馬記念で出演され、感動が中山競馬場を包み込んだ。

     それは、トウカイテイオーが1年振り或いは365日振りの出走でまさかの勝利を飾ってしまう事で常識を覆す結果に大騒然が。

     観客も関係者も常識を覆す結果に惜しみなく賞賛を送り、トウカイテイオーは実績面こそは父シンボリルドルフに劣るが、人気面は既に父を超えたと断言。

     3度目の骨折から立ち上がっての勝利と言うのも奇跡で、珍しい事柄いくつも交じり合ったのが今年の有馬記念だろう。

     有馬記念を最後に現役引退となったが種牡馬の成績は別して、新天地で頑張って欲しい所だ。

     筆者も中山競馬場で観戦していたのだが、馬券の事などは全て頭の中から消え去り、ただただ目の前で行われたレース結果に感動するだけだった。

     因みにその時に購入した馬券はビワハヤヒデとミストケープの馬単で掠りもしなかったが、トウカイテイオーが優勝した時点でどうでも良い紙屑に。

     このレース――有馬記念は歴史に残るもので、この偉業を眼前で観戦出来た人は伝えていく事が義務かもしれない。

     さて、下半期に行われた他のG�気鮓�ていく。

     天皇賞・秋はヤマニンゼファーがマイラーながら2000mの距離に克服し、G�犠〕�馬の底力を見せ付けた結果だろう。

     2着に粘ったストームブレイカーもどちらかと言うとマイラー寄りなので、今年の天皇賞が転化期となり、今後はステイヤーよりもマイラーの方が勝率を上げるかもしれない。

     そして、ジャパンカップは久しぶりにセン馬のレガシーワールドがG�犠〕�――それもマイナーとは言え国際G�気任両〕�なのだから快挙に暇が無い。

     因みに2着のコタシャーンの騎手はゴール板と残り200mを示す2と書かれたハロン棒との誤認で手綱を緩めてしまったのが1番の敗因。

     これが無ければ結果は逆転されていた可能性が高いので実にラッキーと言えるが、コタシャーンの陣営にとってはアンラッキーだろう。

     ジャパンカップの前日に行われるジャパンカップダートはウインドバレーが 引退してしまった事で又も地方馬が勝利してしまう。

     ウインドバレーが不在の中で勝利した馬はかってのライバル――トミシノポルンガが僅差を制して4つ目のダートG�気髻�

     続いては年々層が厚くなってきているマイルと短距離路線に視線を移す。

     マイルチャンピオンシップを勝利した馬は牝馬のシンコウラブリイで、前年の2着から見事にリベンジ達成。

     残念ながら、このレースを最後に引退し故郷の牧場で繁殖生活を迎える事になってしまったが、仔馬に期待しよう。

     近年競馬で最も短距離馬として実績を築き上げているサクラバクシンオーが出走したスプリンターズSは、赤子の手を捻るように高松宮記念からG�杵�覇。

     続いては牡馬クラシックと牝馬クラシックに唯一の古馬牝馬G�気任△襯┘螢競戰構�王杯を。

     菊花賞は3強の一角と言われていたビワハヤヒデが充実振りを見せ付けて、3強から一気に1強へのし上がったのは事実だろう。

     その結果が有馬記念で1番人気ながらトウカイテイオーに激走を許したものも、2着に食い込んだのだから実績面は遥かに上になった。

     牝馬クラシックは牝馬3冠を達成されていたベガが同じ“ベガ”の名称を持つホクトベガに敗れ、3冠達成にはならなかった。

     そして、エリザベス女王杯で旧3冠を狙おうとしたようだが、歴戦の古馬牝馬相手には、無尽蔵のスタミナを持つミストケープでは敵わなかった。

     少なくとも今年の最優秀3歳牝馬の座は間違い無く、ベガに送られるのは確実でG�毅仮,靴討い襪里世�ら。

     最後に来年のクラシックを占うため2歳馬に主点を。

     牡馬牝馬共に怪物が誕生し、その馬の馬名はナリタブライアンとヒシアマゾン。

     ナリタブライアンは2着馬に3馬身差だったが実に余裕のある走りで観客を沸かせて、早くも3冠馬候補として持ち上げられている。

     ヒシアマゾンもナリタブライアンと同類のタイプで一瞬の切れを身上とするが、その切れ味は日本刀で一閃したと比喩出来る位。

     少なくとも、この世代には2頭に敵う馬は1頭も居ないと断言出来る。

     と、93年度の下半期G�誼刺召�競馬雑誌に書かれており、特に評価が高い馬は来年のクラシックに軌道が乗るナリタブライアンだった。

 

 

     秋子は艶かしく吐息をゆっくりと吐き出し、本年度の生産馬成績をノートに書き上げていく。

     書き終わるとシャープペンをコロコロとノートの上で転がしつつ、軽くストレッチを行う。

 

    「ミストケープの有馬記念は5着、タイフーンのラジオNIKKEI杯2歳Sが3着と……今年は内容が濃くて来年もこの調子で続くと良いわね」

 

     Kanonファーム生産馬の本年度の成績は50戦16勝で重賞制覇は4つなので去年に比べると一気に躍進した。

     共に最終週の重賞で掲示板には載ったのは僥倖で、この結果ならば2頭の来期も期待出来ると言える。

     特にタイフーンはクラシック路線に乗ってくれそうな逸材で、下手なローテーションを組まなければ十分、ナリタブライアンと戦えるだろう。

 

    「さて、来年も生産馬に頑張ってもらわなくてはならないと」

 

     と、秋子はひとりごちてから、女性特有の柔らかく滑らかで形が良く、豊満な双丘の前に両手で握り拳を添えつつ、気合を入れてから自室に向かった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:コタシャーン……この誤認結果でネタ馬となっているが、アーリトンミリオンを制覇している。
     注2;ヒシアマゾン……父シアトリカルを持つマル外だが、このSSでは 出走可能の状況になっている。