真っ青に澄んでいる空が西側から薄っすらとオレンジ色を帯びて、太陽がゆっくりと地面に沈んでいく。

     夕日に当たってオレンジ色の雲や黒い雲が結成されており、その形は大小様々なものがポッカリと浮かんでいた。

     真下――大地の方では楕円に近い構造をした場所で、ポツポツと黒い斑点――凡そ15個前後が動いており、更に黒いものがひしめき合っているようだ。

     その場所は綺麗な緑と茶色で区切られており、内側に茶色い物質が敷き詰められ、その外側にはやや色合いが褪せた緑色に輝く物質が。

     そして、その場所から上空にも響くほどの大音響が空を震わせており、数分毎に同じ事が数回繰り返されている。

 

 

     この場所は関東にある府中の施設――東京競馬場で本日はG�気離侫Д屮薀蝓治咾�開催されるので多数の観客が押し詰めていた。

     数万――いや、数十万人がこの場所で1頭の馬が優勝するシーンを見るためとギャンブルとして貨幣を賭けに来た人物が半数を占めているだろう。

     幾らの金額が動くかは定かではないが、今回は凡そ200億は下らないと言われており、日本の競馬が如何に売れているかが分かる実態だろう。

     因みに海外では大レース――主にザ・ダービーやケンタッキーダービー、BCシリーズが最も売れている平地競走。

     欧州では平地よりも障害戦の方が人気あり、特にイギリスのグランドナショナルはダービーを凌ぐ人気を誇るのが特徴。

     閑話休題。

     それくらい、日本の競馬が売れている実態なのだがフェブラリーSの人気は今一つ低い。

     日本競馬は芝が主戦場(一軍)でダートは落ちこぼれ(二軍)の扱いとなっている事が多く、その理由は単純に地方競馬場が都落ちの印象が強いから。

     だが、近年はグレートホープ、トウケイニセイ、スイフトセダイ、トミシノポルンガなどが輩出され、印象が少しずつ変わり始めている。

     勿論、オグリキャップやハイセイコーが中央で活躍した成果があるのがダート路線が認知された遠因の1つだろう。

     フェブラリーSの出走馬は上記の4頭――グレートホープ、トウケイニセイ、スイフトセダイとトミシノポルンガがおり、熾烈な争いが見られるだろう。

     更にミスタートウジンが出走しているので、東京大賞典と同じメンバーが一堂してウインドバレーの首を狙いに来ている。

 

    「やれやれ、それ程東京大賞典で負けたのが腹に来たようで」

 

     こっちは7割の出来なのに、と秋名は周辺の人物――ライバル馬主に聞こえないように名雪の耳元で囁く。

     高級だと一目で分かるソファーに深く腰掛けて、スラリとした長い脚を組みつつ形の良い胸を見せ付ける様な挑発的なポーズで座っている秋名。

     服装はドレス類を相変わらず嫌っている事が窺える――男性用のスーツで襟元のボタンを2つ外して、緩めているブルーのネクタイを身に着けている。

     他馬主の家内は派手目なパーティーワンピースなどを身に包んでいるので、秋名だけが異端な出で立ちであった。

     名雪と祐一は中学校の制服を着ており、特に特徴がある訳でも無い。

 

    「体調が7割前後に戻っただけでも僥倖かもしれないですね」

 

     公共施設におり、これからG�祇錣�行われるので名雪の口調は自然と敬語になっていた。

     秋子の教育による結果と言えるが、その本人は風邪で1人寂しく家で静養中 だが、スタッフも居るので大丈夫だと秋子の弁があったのでここに3人いる。

     ふむ、と秋名は軽く顎に手を添えて名雪の発言に同意した時に背後から声を掛けられる。

 

    「お久しぶりです。水瀬さん(・・・・)」

 

     その声は、実に卑しい感じで誰が聞いても嫌な思いをしそうな程で、その声の発言者は気付いていないのかも知れないが、秋名は顔を顰めつつ舌打ちを放つ。

 

    「……ええ、お久しぶりですね」

 

     秋名は相手の方を向かないまま、秋子の振りをして挨拶を返すが、相手は秋名と秋子を間違えている事に気付いていない様で、そのまま話を続ける。

     髪型以外は外見の殆ど一緒なので、秋子と秋名に良く会う人物で無いと勘違いする人物が多いので、それを利点とし口調も秋子そっくりにする。

 

    「……御用は何でしょうか?」
    「おお、そうでした。単刀直入に言いますけど白毛馬を譲っていただけないでしょうか?」

 

     毎回電話して白毛馬を譲って欲しいと強請ってくる人物が、この本人であり、実に狸親父と言うのがピッタリな風貌と性格。

     なので、牧場組合や競馬関係者の評判は非常に悪く、追放したいと思う人物が多くいるが、“大事なスポンサー様”なのでその点だけが取り柄。

 

    「お断りしますわ、うちの大事な血統になりえる牝馬なのですから」

 

     丁寧な言い方だが、その言葉には威圧感が押し込められており、さすがに相手もたじろいてしまう。

 

    「……ぐっ、ならばフェブラリーSで勝負しませんか?」
    「……勝負ですか?」

 

     相手は未だに引き下がらず、余程白毛馬が欲しい様なので秋名に勝負を持ち掛けてきた。

 

    「お互いに出走馬がいるのですから、上になった方が……」

 

     秋名はすぐさまその発言を遮るように却下し、こっちの方にメリットが1つも無い事を口に出し怒気を込めて一蹴する。

     そして、数分もしないうちにフェブラリーSが始まった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特になし。