2月になり春が近付くにつれ少しずつ降雪量は減少していくが、凍える様な冷たい気温と吹雪いてくる風が容赦無く身体に叩きつけてくる。
それでも競馬関係者は明日への夢を繋ぐ為に、歩いているのだがそれを遮る様に踝付近まで積もった雪が歩行を鈍らせてしまう。
だが、ある大手牧場は雪が積もっても調教が行える様に雪を溶かす塩を撒いて早期的に勝ちを量産する事が可能になった。
早いうちから調教を積めると言う事は他馬よりも調教時間が増加し、早い時期――2歳戦から活躍馬が輩出される。
勿論、調教時間を増やした事による故障発生が高くなるデメリットがあるので、耐えられる馬が居ないと意味が無い。
ミホノブルボンの様に2流の血統でも調教に耐えられれば、1流馬になりえる可能性があるのだから試さない訳にもいかないだろう。
他の牧場がこの事を取り入れるかは、それぞれだがKanonファームは利用しない方針と決定された。
その代案として、配合相手の成長力が早い馬に徐々にシフト化していく案が取り入れられた。
だからと言ってステイヤー血統の種牡馬を配合しないと言う訳ではなく、血の偏りを止めるには異種血統や長距離馬の力が必要なのだから。
「……さて、今年はどういう配合にしましょうかね」
最近の牧場成績から、見知らぬ馬主や調教師が馬を見に来る回数が徐々に増加しており、秋子とのパイプが増えてきた事を示している。
ただ、大手牧場に比べると庭先取引は未だに0だが、相手が気に入るような馬体と血統さえ持ち合わせていれば調教師が馬主に伝える事がある。
そうして取引されてデビューして成績が良ければ、また新たなに購入をしてくれるのでパイプが増加しやすい。
その事を踏まえつつ、秋子は繁殖牝馬に種牡馬をあてがう為に自室に篭って一部を除いて部屋中に乱雑に積み上げられた種牡馬辞典を開いていく。
今週の競馬には初ダート戦を迎えるサンシャインレディが橿原Sに、バイオレットSにはヤマトノミオが出走。
そして、最後の締めは重賞――G�靴竜�都牝馬Sにサイレントアサシンが、初重賞挑戦。
どれも競馬新聞の評価は一定――下から数えた方が目に付く位置になる位のオッズ。
「このオッズだと厳しいな」
オッズで競馬が走る訳では無いが、そうぼやいてしまう程の人気の無さが実感してしまう。
秋名は競馬新聞をじっくりと隅々まで読み漁っているが、どれもあまり良い評価は書かれておらず端麗な眉が歪められつつ舌打ちをしてしまう。
「サイレントアサシンはもうちょっと評価高いと思ったんだがな」
「まぁ、低評価に反発して逃げ切りを収めてくれるのに期待した方が良いね」
と、名雪は低評価に関しては受け入れているようで、2人の意見はバラバラだが勝利を願う事は変わりない。
「今年2つ目の重賞制覇になると良いけどな」
祐一の本心もサイレントアサシンの重賞制覇を願っているのは必然だが、重賞4勝馬のヌエボトウショウが居るので非常に厳しい。
それ以外は五十歩百歩或いはどんぐりの背比べと言えるくらい、メンバーは小粒。
なので、上手く展開が嵌ればサイレントアサシンの逃げ脚が炸裂する可能性が高い。
展開予想をするも、どう足掻いても逃げて勝利する事でしかサイレントアサシンには手段は残されていないだろう。
土壇場で普段の脚質を変更して勝利する程、重賞の壁は甘くなく染み付いた癖は簡単に抜けないのだから。
数分後。
1つずつKanonファーム生産馬がレースに出走し、レースが終わる度にTV画面に全馬の着順結果が表示されていく。
まずは橿原Sに出走したサンシャインレディについては初のダート戦で戸惑い、泥を被った挙句に走る気を無くしての惨敗だった。
結果は16頭中15着で、今後は1回もダート路線を使用する事は無いだろう。
1回叩いたので次走からは芝レースを専念し、勝利を目指す事になる。
バイオレットSに出走したヤマトノミオだが、今回は本当のダート馬と言える程の実力馬とぶつかってしまい呆気無く惨敗。
その馬の名はホクトベガ――織姫星から取られた馬名であり、父にナグルスキーを持つ。
デビュー戦はダート1200mながら、2着馬に1.5秒も差を付けてしまい物が違うのは確実だった。
そして、ヤマトノミオの着順は12頭中8着と、まだまだOP戦の壁は非常に高いと言える。
「んー、ホクトベガは強いね……芝ではどうだが分からないけどウインドバレーよりも強く感じるかな?」
「一度は対戦させてみたいけど、フェブラリーSの結果次第で引退だしな」
それくらい際立つ強さを見せ付けたので、3人には異論が無い様でホクトベガとの対戦を夢見始めた。
そして、サイレントアサシンが出走する京都牝馬Sの時間が迫ってきた。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。