AJCC――アメリカジョッキークラブカップ。
日米親善と友好を目的として設立された重賞――G�兇任△蝓▲縫紂璽茵璽�ジョッキークラブから優勝カップが贈呈された経緯がある。
そして、出来たレースがこれであり距離2200mと非根幹距離のレースなので主要レースとは言いにくいだろう。
ただ、有馬記念に出走出来なかった馬が回ってくる可能性が高く、先週京都で開催された日経新春杯と同じくらいレベルが高い。
日経新春杯は距離2400mとクラシックディスタンス向きで一級線の名馬が多く出走するが、AJCCはズブい馬の独断場になる事が多い。
その為、今回出走している馬の中ではミストケープが新興勢力に分類され、殆どの馬が過去に重賞勝ちを収めている。
唯一のセン馬として出走しているレガシーワールドは有馬記念2着と、このメンバーの中では1番勢いを持っており最有力候補の1頭だろう。
だが、ジャパンカップ→有馬記念とG�毅河∪錣�らG�兇暴仭�するのは激戦による見えない疲れが残っているかもしれないでチャンスとも言える。
格上挑戦のミストケープにも光明が差し込んでおり、ハンデの軽さ――52kgの軽量を活かしきれば勝利も有り得る。
「10頭立てですし、囲まれる心配が余り無いのは良いですね」
「極端なレースをしなければ大丈夫だろう」
ミストケープは3枠3番からのスタートで2連続開催中の中山競馬場では内寄りの芝が荒れている状態。
サッとスタートから外の方に持ち出さないと、剥げかかっている芝に脚を囚われてスタミナを浪費してしまう。
なので、如何に好位を奪うかがミストケープの騎手に懸かっていると言っても過言では無い。
「稍重で内枠は非常に厳しいですから、どんな競馬をするんでしょうね?」
「しかも現在も小降りながら降り続いているからなぁ、外に出すしかないだろう」
TV画面には中山競馬場の馬場状況が映しだされており、空を覆う灰色の雲から小降りの雨が降っている様子が明確に放送されている。
父ムクターは稍重〜不良馬場までの馬場状態で4勝もしており、良馬場で行われたアイルランドダービーは惨敗。
と、それくらい馬場が悪化していた方が成績は卓越した特徴を持っていたので、ミストケープも受け継いでいる可能性はある。
「父は馬場が悪化した方が成績は安定していたし、期待しとくか」
秋名がその一言を呟くと同時に、ゲート入りが行われていくのが確認される。
ミストケープはゲート前まで軽く直立しつつ、脚を踏ん張らせてゲート入りを軽く拒否するも、2度目にはキチンと入った。
そして、最後に10枠の馬が誘導員に曳かれつつゲートイン。
ガシャンとゲート音が響くと同時に10頭の馬がゲートから綺麗に飛び出し、1頭も立ち遅れた馬はいない。
ミストケープの騎手はスタート直後に斜行にならない程度に、3枠3番から2頭分程の位置まで外に出す。
ホワイトストーンは1枠1番からレガシーワールドは4枠4番のスタートなので、この2頭はミストケープよりも外に出したい所だろう。
現在はやや荒れ気味――芝が剥げて砂が見えている状態となっている芝の上を走っているのだから。
ミストケープが外に持ち出した事で、2頭は自身達の前にいる先行勢の馬を外から交わさなくてはならない状況に。
レガシーワールドの横にはガッチリとミストケープの馬体が壁となって、荒れた芝の上を走らされているが、ホワイトストーンに比べればマシ。
1番芝が荒れている箇所は内ラチ付近の場所であり、丁度ホワイトストーンが疾走している場所が該当するのだから。
「良く封じ込めたな……これでレースの展開が変わるかもしれないな」
「好判断かはまだ分かりませんが、天秤はこちらに少しだけ傾いたかもしれないですね」
スタートして200mを通過した所で、各馬が強靭な四肢で跳ね上げている雨を大量に含んだ芝が飛び跳ねて騎手と馬を徐々に汚していく。
観客の前を1頭の馬が通るたびに歓声などが響き、その声に反応して入れ込む馬もいれば、キッチリと折り合っている馬がいる。
ミストケープとホワイトストーン、レガシーワールドは問題無く疾走しているので、現状はこのペースで走れば良い。
既に1コーナーと2コーナーを過ぎて向こう正面でレースが展開され、残り距離は1000mといった所。
ミストケープの騎手は相変わらず2頭を内に封じ込めているが、何処から交わしていくかシミュレーション中だろう。
切れる脚は無いが持続力のある脚を持つのがミストケープの特徴で、マークしている2頭はどちらかと言うと一瞬の切れ味が鋭い。
いくら内に封じ込めているとは言え、能力の差はミストケープの方が遥かに劣っているのだからカバーが必要。
逃げ馬が単騎で3コーナーに突入しその馬から2馬身程離れて、先行馬が3頭続く。
その次にミストケープが外に、ホワイトストーンとレガシーワールドが内で抜け出す隙を窺っている。
その後ろには3頭の差し馬が徐々に差を詰めてきて、レースが更に動き出す。
後方馬は外に持ち出さずにホワイトストーンとレガシーワールドの隙間を狙い、1頭は外を、残りの1頭は芝が荒れた内側に。
そして、直線。
逃げ馬のペースはまだ止まっていないが徐々に先行馬が馬体を合わせて、競り合いつつ伸びてくる。
だが、その先行馬の外から勢い良くミストケープが伸びて、先行馬に馬体を合わせた事でホワイトストーンとレガシーワールドの進路が1頭分のみに。
最内には差し馬、徐々に下がってくる逃げ馬、逃げ馬を捕らえかけている先行馬3頭。
更にホワイトストーンとレガシーワールドの間を突いた馬に、外に持ち出した差し馬がいる。
こうなるとホワイトストーンとレガシーワールドは一旦下げるしか抜け出す方法は残っていない。
残り100m。
しぶとい脚を披露して、ミストケープが一気に先頭を奪う。
1馬身と徐々に差を付けたが騎手は最後まで手綱を力強く追う事を忘れず、ゴールを先頭で駆けていった。
そして、脚を余したと思われたホワイトストーンがミストケープを追いかける様に一気に首差まで迫ったそこまでだった。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:ホワイトストーン……菊花賞でメジロマックイーンの2着になったなどの実績あり。
注2:レガシーワールド……セン馬でクラシックには出走できなかったが、セントライト記念の勝ち馬。