――年明けから数日後。
毎年行われている前年度の活躍馬を表彰する92年度の年度代表馬選考が発表された。
年度代表馬は順当に皐月賞と日本ダービーを逃げ切ったミホノブルボンが満票近くの票を集め、前年の最優秀2歳牡馬に続くタイトルを。
年度代表馬以外でそれぞれの賞を得た馬は以下の通り。
最優秀2歳牡馬:エルウェーウィン。
最優秀2歳牝馬:スエヒロジョウオー。
この2頭はそれぞれGⅠ戦が1つしかない2歳馬なので仕方ないが、本来なら別の馬が選出されてもおかしくない。
最優秀3歳牡馬:ミホノブルボン。
最優秀3歳牝馬:ニシノフラワー。
順当と言い切っても良いくらいの成績――合わせてGⅠ4勝制覇を達成した2頭で選ばれなかったら、我々競馬記者の良識を疑われてしまうだろう。
年度代表馬の選出方法は新聞と放送の各競馬担当の記者が投票し1/3以上の票数を得たら、自動的に決定する。
だが、中にはへそ曲がりの記者がいるので稀に票数がバラケてしまい、年度代表馬審査委員会の審議で決定する事がある。
もちろん、個人の思いは大事だが競馬ファンが見ている事を忘れずに投票したい物である。
最優秀4歳以上牡馬:メジロパーマー。
最優秀4歳以上牝馬:イクノディクタス。
今回はメジロパーマーとだったが、最優秀4歳以上牡馬はメジロマックイーンとトウカイテイオーの3つ巴の票で、僅かの差でパーマーが制した。
最優秀短距離馬:ニシノフラワー。
最優秀ダート馬:ウインドバレー。
最優秀短距離馬の方は、古馬陣が不甲斐ない成績だったのでニシノフラワーが2つ目のタイトルを得ても不思議ではない。
最後に最優秀ダートのウインドバレーについては該当馬無しに投票していた人物が意外と多く、ギリギリの票数で選出された。
ミスタートウジンもそれなりに票を集めたのだが、フェブラリーSと東京大賞典ではダートGⅠでの格の違いがハッキリと現れる結果に。
今年はどの受賞馬が活躍するかが1番の楽しみだが、ミホノブルボンは脚部不安で長期離脱と古馬戦に1つの空洞が出来てしまっている。
その穴を埋めるべく、菊花賞馬のライスシャワーに期待したいと思う。
と、今年の年度代表馬に関するコラムが競馬新聞に書かれており、それぞれの代表となるレース写真と共にコメントが。
そして、表彰式で各馬の関係者が集まった写真も一緒に貼られている。
その写真の中にはウインドバレーの関係者――馬主である秋子も写っていた。
Kanonファームの敷地内にある4人が住む家の中には、優勝カップが飾られているサイドボードが1つ追加されている。
そして、何よりも目に付くのはGⅠ優勝馬に掛けられる優勝レイ――赤色地に金糸で縫われた文字――第38回東京大賞典と書かれているのが置かれている。
この優勝レイが東京大賞典を勝利した証であり、日高地区の競馬関係者からすれば神々しい飾り物だろう。
「さて、東京大賞典優勝で得た賞金は約6400万、この賞金で何をした方が良いかしら?」
秋子達はリビングに置かれているソファーにそれぞれ自由に座り込んで、賞金の使い道について話し合う。
一般の感覚だと“6400万もある”だが競馬関係者にとっては足しにもならない計算の方が多い。
その理由は高騰する種付け料や牝馬の入れ替え代、牧場経費などであっさりと消えてしまうのだから。
なので、出来る限り有益のある使用方法で無いと、一気に札束が羽根を着けて飛んでってしまう可能性がある。
「この賞金で高額種牡馬の種付けは馬鹿馬鹿しいし」
いくら高額馬を付けても走らない産駒が産まれるのは日常茶飯事なので、この案は真っ先に却下されるが、誰も反対しない。
「じゃあ……牧場施設も無理だな」
現在の牧場施設は1週1000mの馬場が1つあるだけだが、これ以外を建設しようとすると億は掛かるので、現状では不可能。
「そうなると……人手を増やすのは?」
「それが1番良いかもしれないわね」
現状の所有馬の数は功労馬2頭、繁殖牝馬4頭、1歳馬2頭。
そして今年に出産予定の0歳馬が4頭と、そろそろKanonファーム従業員――家族4人では厳しい状況だろう。
これからも馬の数は増えるだろうし、この状態が続くと手が回らなくなってしまう可能性が高い。
「んー、じゃあ従業員を増やす事で良いかしら?」
議長の秋子を除く3人が頷き、こうして従業員を増やす事が確定して、詳細は秋子と秋名だけで話し合う事になった。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。