今週の開催は先週のエリザベス女王杯に続いて、京都芝1600mで発走となるマイルチャンピオンシップが。

     今年の出走馬の中には珍しく海外からの遠征馬がおり、今年の9月にカナダのウッドバイン競馬場でGⅠウッドバインマイルステークスを勝利。

     カナダのマイルGⅠを制しているとはいえ、日本では評価されにくい現在では14番人気と低評価。

     これが20年程前だったら、上位人気になってもおかしくないかもしれないが、現在の日本馬は総じて実力が高いので、相手にならないと見受けられている。

     海外馬――ラーイズアトーニーを含む18頭が出走となり、そのうちGⅠ馬は5頭というメンバー。

     その中には今年の皐月賞馬であるラストフローズンが1番人気に支持されており、伊達に今年の天皇賞・秋で僅差の4着になっていない。

     他のGⅠ馬は今年の高松宮記念馬のファイングレインと去年の高松宮記念を制したスズカフェニックス。

     2年前の桜花賞を制したキストゥヘブンもいるが、全体的にメンバーはラストフローズンの実績が抜き出ている。

     こうしたメンバーだからこそ、ここは確実に制しなければならない程の人気で、どの競馬新聞も◎が5つ押されている状況なのだから。

 

    「この人気ではマークが厳しくなるか」

 

     名雪は外枠――8枠18番と大外からのスタートとなるラストフローズンの部分を記された競馬新聞を読みながら、そんな事をぼやく。

     ラストフローズンの最大の武器は叩き合いによる接戦の強さなので、大外よりも内枠に近い方が良い。

     外枠からのスタートではラストフローズンを騎手が巧みに操縦しなければ、ずっと外を走る羽目になり、他馬よりもスタミナの消費が早くなってしまう。

     脚質的には先行か中団から差しの方が成績は良いので、出遅れての追い込みは向かない展開になり得る。

 

    「綺麗なスタートで3~6番手辺りの位置を取れたら、良い形にはなりそうだが、わざとラストフローズンを内に入れないにされてもおかしくないか」

 

     枠が決定したので、後は騎手の判断に任せるしかないのだから、吉報になる事を臨むしかなかった。

 

 

     今週はマイルチャンピオンシップが開催されるが、Kanonファーム生産馬は他のレースに出走する馬もいる。

     オルタナティブが敢えてダート路線の霜月ステークス――1400mに出走となっている。

     先週のオーロカップが除外されてしまい、同時に登録していた霜月ステークスの抽選が突破したという結果がこれである。

     なので、人気も皆無であり、父がエイシンプレストンの為、ダート路線で一発という事はあり得ない。

     もう1頭がソニックブームでこちら適正距離の芝1800mで開催されるtvk賞に出走。

     出走馬の中で唯一の牝馬なので、殆ど人気が無く、古馬相手には苦戦は必至。

     どちらも人気が無く、掲示板に載れば大健闘といえる所なので、ここを叩きに次走を期待した方が良いだろう。

     ただ、ソニックブームの方は結果を出している1800m戦なので、人気こそ無いが勝算は僅かに残されている形。

     そして、最後に新馬戦の方にミスターシルフィが出走する。

     こちらはソニックブームの半弟で、父フサイチコンコルドから父アドマイヤコジーンとなっている。

     アドマイヤコジーンは98年の朝日杯フューチュリティステークスを制し、2度の骨折を得て2002年に安田記念を制した実績を持つ。

     去年のスプリンターズステークスを制したアストンマーチャンを輩出しており、実績もある種牡馬として、そこそこの人気を集めている。

     今年も既に地方交流戦だが、北海道2歳優駿を制したメトロノースを輩出し、種牡馬の地位を築いている所。

     逆に母のエアウインドはパワーとスタミナを信条とした血統なので、スピードとキレを持つアドマイヤコジーンとの配合がどう出るかが試される。

     兄に去年の菊花賞を制し、今年は宝塚記念と目黒記念を勝利したハネダニマケナイが居る良血馬。

     今までの産駒は長所――スタミナとパワーを伸ばす配合ばかりだったので、ミスターシルフィがこの血統の新たな試金石となり得る可能性も。

     そんな訳で距離適正は1200m~1600m辺りなので、ミスターシルフィもそれに合わせて東京芝1400mのデビューとなる。

 

    「ミスターシルフィは5番人気か」
    「調教タイムはそれなりですけど、上がややズブいソニックブームですからね。距離は合うけど、短所を補った血統がマイナスに見られたのでは?」

 

     スッパリと意見を出す一弥だが、実際に母系からは中距離から長距離路線で活躍した馬が多いので、短距離馬では評価が低くなるのも仕方ない。

 

    「まぁ、この血統だからこそ、この時期からの活躍よりも古馬になってからの方が、活躍はしやすそうだがな」
    「この時期ではまだ身体が出来上がっていないみたいですし、3歳夏頃には身体が出来ると良いですね」

 

     そんな評価を下されながらも、ミスターシルフィは母系のスタミナを有すると判断した騎手の手綱に導かれ、ゴール直前まで逃げ切りの態勢だった。

     ゴール直前で捕らえられたが、0.1秒差の4着だったので、見所たっぷりの結果だったと記しておく。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。