現在の京都は秋晴れに恵まれた天候で、雲一つ浮かんでいない程の真っ青な空が見える。

     10月半ばとはいえ、非常に過ごしやすい気温のため、ここ京都競馬場にはレジャーとして多くの観客が押し寄せている。

     これが土曜日や重賞戦が無い時だったら、この天候でも多くの観客は観戦しに来なかったかもしれない。

     本日は牝馬3冠目――G�気任△觸�華賞の発走という晴れの舞台であるからこそ、例年以上の観客が現地観戦を選択した訳である。

     流石に有馬記念や日本ダービーには遥か及ばないが、去年の秋華賞よりも僅かに及ばない程度の入場者数。

     およそ、4万人と飛んで8千人前後が入場しており、気温と相まって熱気が著しく上昇している。

     秋華賞発走前になれば、観客数はまだ増加すると思われる。

     さて、牝馬3冠目である秋華賞に駒を進めたのは18頭。

     その中で圧倒的1番人気を支持されているのはいうまでもなく、今年の桜花賞を制し、オークス2着の実績を持つサンユベール。

     ここまでの実績が7戦5勝とパーフェクトの連対率を誇り、敗れた2戦は阪神ジュベナイルフィリーズとオークスのみ。

     対抗となり得るトールポピーだが、オークスでの降着による天国から地獄に落ちたのが未だに響いていると判断されたか、4番人気に落ち込んでいる。

     代わって2番人気になったのはエフティマイア――桜花賞2着、オークス1着の実績を持ち、クイーンステークス5着から秋華賞へ駒を進めた。

     実績面からいえば、この3頭がそれぞれ牝馬G�気鬘云,困鎚�け合っており、ここを制すれば、現3歳牝馬の中でトップに立てることは確実。

     秋華賞の後は古馬路線が待っているので、ここが3歳牝馬限定のG�気箸靴討僚�着点であり、陣営によってはエリザベス女王杯への布石ともいえる。

     勝負付けが済んだと侮って、足下を掬われる事があってはならないので、どの馬もG�祇錣蕕靴�、しっかりと仕上がっているようだ。

 

    「サンユベールの調子は良いですね。後はパドック入場の際に入れ込まなければ良い勝負が出来ると思いますよ」

 

     秋華賞に出走する各馬は装鞍所で待機している状況で、サンユベールも例に洩れず、秋華賞と同じ枠の待機所にリードを結ばれている。

 

    「そうなると後はゴールを先頭で駆け抜けるのを待つだけか。この時間だけは本当にわたしの胃を痛めつけてくれる」

 

     名雪はサンユベールの鼻筋を軽く撫でながら、そんな事を呟くが、その表情は僅かながら口端が上がっており、楽しげな表情。

     それほど長い時間、サンユベールの鼻筋を撫でていた訳ではないが、スタイルの良さとスーツ類の出で立ちが相まって、立ち姿が絵になっている。

     調教師は名雪に見とれた訳ではないだろうが、僅かに間が空いてから口を開く。

 

    「それは私も同じですよ。まぁ慣れてくれば心地よいプレッシャーですから、その点は水瀬社長も理解出来るでしょう」
    「それは分かるんだがな。ここで秋華賞を制すれば、去年のG�犠〕�数を越える事が出来るから、いつもより胃が痛い訳だ」

 

     名雪はサンユベールから1歩離れてからわざとらしく、胃の辺りを抑えながら、おどけた様に訴える。

     そんな会話をしていると、レースが1つ終わったのか観客の歓声が装鞍所まで届いてくる。

     余程の配当が付いたのか数分経っても、ざわめきは収まらず、次のレース――2歳新馬戦が発走となるまで、この状況は変わりなそうだ。

 

    「……これだけの歓声が長く続くと、初出走となる2歳馬には厳しいな」
    「そういえば、東京で2歳新馬戦にKanonファーム生産馬で期待馬のラストリグレットが出走するんでしたね。今の所、圧倒的1番人気みたいですね」
    「わたしは来年のダービーを目指せる逸材と思っているからな。向こうの歓声はどれ位かは分からないが、入れ込まないで欲しい所だ」

 

     距離は東京芝1800mとクラシック路線を目指す馬としては、適した距離でここから徐々に距離を伸ばして、2400mまでこなせれば良い。

     ラストリグレットの血統は姉にトロピカルサンデーがおり、母はイチゴサンデーと、良血に値する馬。

     この血統からしてクラシック路線――牡馬3冠目の菊花賞はともかく、中距離からクラシックディスタンスは明らかに向いている。

     父のキングカメハメハは今年が初年度産駒で今の所は海の物とも山の物ともつかないのが、既に函館2歳ステークスをフィフスペトルが勝利している。

     なので、現状では短距離向きの早熟馬と見向きも見受けられる。

     とはいえ、キングカメハメハ自身はNHKマイルカップから日本ダービーの変則2冠を制しているので、距離適正はもう少し幅広いだろう。

 

    「では、そろそろ新馬戦みたいですので、後の表彰式でまた会いましょう」
    「ああ、秋華賞の表彰式で」

 

     そういって、名雪はラストリグレットの新馬戦をターフビジョン越しに見る為に馬主席に向かっていった。

 

 

     2歳新馬戦の結果は、ラストリグレットが前評価を覆す程の実力差を見せ付けて勝利。

     直線に入るまでは馬群の囲まれた状況の中で中団辺りを追走して、残り300mに入ると、外に持ち出して鞭を入れる事無く、勢い良く上がる。

     先頭まで4馬身程の差があったが、大きなスライドで首を低くして走る姿は他馬と違いすぎた。

     軽く先頭を捕らえると、ラストリグレットが最後まで気を抜かない様に騎手である祐一が肩鞭を入れるのみ。

     そして、4馬身突き放した所でラストリグレットがゴールし、実力の差というものを見せ付けた。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。