エプソムカップに出走したバックドラフトは4番人気だったが、直線でふらついたりしながら4着。

     弾ける事が無かったが、ジワジワと伸びていたので距離が長かった訳ではなく、上手く馬群から抜け出せなかったのが敗因。

     割れると思った所に突っ込ませるタイミングが合わずに、外に進路を取るか、内から抜け出すかで騎手が迷った結果でもある。

     着差は0.3秒と思ったよりも広がらず、初重賞+牡馬混合戦+距離延長と3重苦があったにも関わらず、この結果ならば十分だろう。

     そんな訳で、ここ数戦は1ヶ月毎の出走だったので、この後は短期放牧で体調を整えてから、北九州記念か関屋記念辺りで復帰予定。

     現状では秋のG�欺仭�に必要な取得賞金が足りないので、1勝か2勝は積み重ねておきたい所。

     少なくとも馬体重は増加しており、能力も馬体に引っ張られる如く成長しているので、無理して秋にG�気鯡椹悗紘�要は無い。

     まだ4歳牝馬で先があるので、ジックリと仕上げていった方が、繁殖牝馬としても馬体にダメージが少ない状態で上がれる可能性があるのだから。

 

    「この結果なら頑張った方か……取り敢えず、短期放牧後に1本使うのは予定通りで」
    「使い減りがしないタイプですので、厩舎に置いたままでも大丈夫ですけど、ある程度はリラックスさせた方が良いでしょう」

 

     短期放牧といっても完全に休養させる訳ではなく、馬体が緩くならないように乗り込みは行われるので、環境を変えると言った方が正しい。

     こうして、バックドラフトは春のクラシックを盛り上げたラストフローズンとサンユベールと共に放牧となった。

     ラストフローズンとサンユベールは早くも秋のローテーションが決定しており、如何に夏負けさせず、それぞれの厩舎に帰厩させるかの腕が試させられる。

     大手牧場になる程、夏負けで帰厩が遅れるという事があっても、多くの失敗を学んでいるので、取り戻すのが早いとも言える。

     Kanonファームも長年の積み重ねを持つが、大手牧場程の生産頭数を持つ訳ではないので、経験に差が現われてしまう。

     こういう所で差が出てしまうので、これから先――Kanonファームが10年先でも残っている保証は無いのだから、生き残る為の詮索が必要。

 

 

     そんな訳で現時点では3頭が放牧に出されたのだが、代わりに2歳馬が入厩となる。

     今年2歳となるKanonファーム生産馬は7頭で、内約は牡馬4頭、牝馬3頭。

     父シルバーチャーム×母スノーラビット 牝馬。

     父キングカメハメハ×母イチゴサンデー 牡馬。

     父アドマイヤコジーン×母エアウインド 牡馬。

     父ファンタスティックライト×母タツマキマキマスカ 牝馬。

     父キャプテンスティーヴ×母ファイアーワークス 牡馬。

     父ワイルドラッシュ×母ヤマトノミオ 牝馬。

     父アグネスワールド×母フォックスハウンド 牡馬。

     父系だけでみれば、最も種付け料が高いのがキングカメハメハで、他の父馬は重賞馬の輩出が時々ある位。

     流行の血統はキングマンボの血を引くキングカメハメハだが、今年が産駒デビューとなるので、海とも山とも知れずな状況。

     とはいえ、Kanonファームで生産された殆どの馬が勝ち上がるので、外れと呼べる要素は皆無。

     流行から外れているが、母系として異系の血統が伸びれば、後に爆発する可能性が秘めているのだから。

     この中で期待されているのが、父キングカメハメハ×母イチゴサンデーの牡馬で半姉にはトロピカルサンデーが居る血統。

     既に他の2歳馬と違い馬名が決定しており、デビュー前にして評判になっている。

     ラストリグレットと名付けられており、後悔とも心残りともいえる馬名で、ダービー制覇が名雪にとっては最後の心残りともいえるのだろう。

     まだ、入厩はしていないが競馬雑誌などではトロピカルサンデーの下として、取り上げられている割合が多い。

     流石に世代1番の評価とはいかないが、それでもデビュー前では上の下か上の中位までの評価。

     この評価が来年のダービー後に上がるか下がるかは、今後の成績次第で世代トップになるには果てしなく高い壁だろう。

     Kanonファーム内での2番手評価が父シルバーチャーム×母スノーラビットの牝馬で、ホワイトクラウドとラストフローズンの半妹になる。

     上2頭と違って、ダート種牡馬であるシルバーチャームに変わった分、ダート向きのパワーだとされている。

     牝馬ダート路線は層がそんなに厚くないので、上手くローテーションを組めば、牝馬ダート重賞制覇出来るかもしれない。

     3番手からは、どの馬も抜けた所が無く、そこそこは走るという評価位しかない。

 

    「さて……来年のダービーに向けてラストリグレットには期待しているが、どうなるか」

 

     名雪がKanonファーム内での1番馬にラストリグレットを上げても、必ず勝てる訳ではないのが、競馬なのだから。

     評判馬に負ける事もあれば、人気が無い馬に敗れるのも日常茶飯事なので、ダービーまでに如何に無敗を貫くよりも、次に繋がる負けも必要だろう。

     各陣営は既に来年のダービーを見据えて、動きだし始めているのだから。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:シルバーチャーム……米国2冠馬で98年にドバイワールドカップを制している。
     注2:ファンタスティックライト……G�毅蕎’蓮�
     注3:キャプテンスティーブ……01年にドバイワールドカップを制している。