東京優駿――第75回日本ダービー。
東京競馬場芝2400mで開催される日本ダービーは名誉あるレースであり、3歳馬の頂点を決める訳でもある。
競馬関係者にとっては最も名誉あるレースであり、“ダービー馬のオーナーになる事は一国の宰相になることより難しい”と言われる。
今年は2005年度生まれのサラブレッドが7981頭の中から、出走頭数の18頭のみが頂点を目指す。
つまり、ここに立つまでの運と実力を兼ねていなければ、目指す事も叶わない狭き門である。
その門を潜り抜けても、勝者は只1頭のみ。
ダービーという称号を目指して、各陣営は18頭の馬をここ――ダービーに送り込んだ。
勿論、人馬共に本来なら100%の仕上がりだが、ダービーの時だけは100%の仕上がりでは勝てないので、限界を超えなければならない。
閑話休題。
既に東京競馬場はダービー直前のむらさき賞が発走前だが、パドックからターフビジョン前に移動しようとしても、むやみに動けない程の観客が。
オグリキャップの産駒であるラストフローズンが皐月賞を制している為、2冠達成を期待して観戦に来た観客が多いといわれている。
近年のダービーでは最も父系としては異色であるオグリキャップの産駒で、ここまで駒を進めたのだから、観客が押し寄せてもおかしくない。
その為、距離に不安があるのが判明していても、単勝オッズは多く売れており、現状では2.3倍と圧倒的な1番人気。
続く2番人気はディープスカイで毎日杯、NHKマイルカップと連勝している実績馬だが、未勝利を抜け出すまで5戦も掛かっている。
3番人気が皐月賞4着のマイネルチャールズとなっているので、G�毅仮’呂離薀好肇侫蹇璽坤鵑�1番人気なのはおかしくない。
だが、血統からして距離に不安なのは前書した通りなので、馬連や馬単では単勝に比べると差が生まれている。
そして、9レースのむらさき賞が終わると、やはりと言うべきか既に勝ち馬の事を忘れ去れる位、ダービーの話題へと切り替わっていく。
どの観客もダービー馬の誕生を目前で見たいという意識があるからこそ、集中して、ターフビジョンに注目する。
「さあ、今年もこの日がやってきました。第75回日本ダービーです。選び抜かれた18頭の優駿がパドックに姿を現わしました」
「1枠1番ディープスカイ、NHKマイルカップに続いてG�気鯱⊂,掘▲澄璽咫芝呂両旅罎鯑世蕕譴襪�?」
「中2週ながら前走比+6kgと成長しており、今が充実期と伺えます」
「1枠2番。オグリキャップの産駒として、父が果たせなかったクラシック制覇を皐月賞で果たし、日本ダービーでも栄冠を得るかラストフローズン」
「前走から+4kgと、しっかりと仕上がっており、入れ込みもなく完璧な仕上がりです」
2番人気のディープスカイが1枠1番、1番人気のラストフローズンが1枠2番と隣同士なので、下手するとお互いにマークし合って動けない可能性も。
どちらも道中は中団で脚を溜めて、最後の直線で脚を伸ばす差しを脚質としており、位置取りと一瞬の判断が明暗を分ける。
先に仕掛けるか、遅れて仕掛けるかが、既に両馬の騎手は思考している事だろう。
勿論、他馬もダービー馬の栄冠を逃す訳にも行かないので、2頭で決着するというのは簡単ではない。
そして、係員の合図にてパドックを周回していた馬と厩務員が立ち止まり、その間に騎手は係員の前で整列してから、各馬に向かっていく。
ラストフローズンの傍には馬主である名雪と、調教師に厩務員が佇んで居る。
「1番人気だが、思ったように騎乗を」
名雪は好きなように騎乗してこい、と言っている様なものだが、騎手の中では既に作戦は決まっている筈なので、これ以上の言葉は必要無い。
どこの陣営も一言二言を話すのみで、後は地下道を入って、地響きの様に響く歓声の中で、本馬場入りをこなすのみ。
ダービー発走時間まで刻々と時間が迫り、それと合わさって、観客席のざわめきも高くなっていった。
「うちの馬が出走するのは14年ぶりか……わたしも歳を取る訳だ。あの時は分からなかった母のダービーに対するプレッシャーが今頃分かるとはな」
名雪は武者震いを隠すように軽く後頭部を掻くと、今までのG�祇錣箸楼磴Δ伴卒兇鬚兄呂瓩燭茲Δ澄�
本馬場に消えていくラストフローズンを見送ってから、名雪は馬主席に戻っていく途中で、前レースのむらさき賞を制した祐一を見かける。
祐一はこの後の騎乗予定は一切無いので、他の騎手が落馬や負傷し、緊急の依頼が無限り、本日の依頼は全部終了した訳である。
「久しぶりのダービー出走だな。俺が騎乗して出走したかったが」
「それは来年まで楽しみにしておけ。少なくともわたしは約束を破る気は無いから、祐一が上手く乗るんだな」
「へいへい、上手く乗って早めにローテーションを確定させますよ、っと。で、ラストフローズンの方はどうだ?」
「期待はしているが厳しいだろうな、って所がわたしの判断だ」
名雪はそれだけ厳しく評価するが、ラストフローズンの本馬場入りを見逃す訳にもいかないので、2人は挨拶をそこそこに一旦別れる。
名雪は馬主席で、祐一は検量室でと、それぞれ違う場所で観戦となるが、ダービー勝者という称号を目指す所は一緒なのだから。
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この話で出た簡潔競馬用語
特に無し。