天皇賞・春の重要ステップレースである阪神大賞典に前年の菊花賞馬――ハネダニマケナイが出走し、約5ヶ月ぶりながら前目で粘って3着だった。
流石に5ヶ月ぶりとなればレース勘も今ひとつだったようで、残り200mの時点でアドマイヤジュピタに交わされてしまう。
とはいえ、まだ4歳ながら7戦目なので、天皇賞・春では逆転の余地があるといわれている。
少なくとも血統面からは、フレンチデピュティが入っているアドマイヤジュピタよりもバリバリなスタミナ血統なのだから。
ノーザンダンサーの血は父であるナリタトップロードに入っているのみで、母系には一切入っていないという徹底ぶり。
流行であるサンデーサイレンスの血も入っていないので、一定の競馬ファンからしてみれば、人気になりにくいのでありがたい存在だろう。
「天皇賞・春? ハネダニマケナイは狙っていくが、ホワイトクラウドも居るから出来れば同着が見たい所だがな」
ホワイトクラウドは今年の日経新春杯を勝利し、大阪杯から天皇賞・春を目指すというメイショウサムソンと同じローテーション。
ハネダニマケナイと同様に去年の夏から力を付けた馬で、菊花賞には出走出来なかったが、ステイヤーズS2着の実績は見逃せない。
どちらも距離には融通が利くと思われるが、ホワイトクラウドの方がクラシックディスタンスでは本領発揮出来る部分が。
「まだ、宝塚記念まで先は長いが、ホワイトクラウドは故障か体調不良でもない限り、確実に目指すと思う」
血統面は父がセイウンスカイだが、母系はマイルから中距離路線で成功しているので、天皇賞・春は少し長く感じるのだろう。
とはいえ、共に去年の夏からしっかりと成長してきたので、上位人気に支持されてもおかしくない。
「まだ、日経賞と大阪杯の結果が出ていないから何ともいえないが、今の所はG�鞠呂僚仭�予定がメイショウサムソンだけだから、チャンスはある」
つまり、それだけ長距離路線はメンバーが揃いにくい状況なので、長距離実績を持つハネダニマケナイとホワイトクラウドが人気になるのも当然。
メイショウサムソンは2006年の皐月賞とダービーの2冠馬で、去年の天皇賞・春秋連覇を達成している実力馬。
連覇を目指して仕上げてくるのは当然なので、Kanonファームの生産馬が天皇賞・春制覇をするのを拒む馬だろう。
「……なるほど。期待しても良いのね?」
「わたしとしてはそう思っているがな。香里の方がどう期待しているのかは知らないが」
アーリントンカップとチューリップ賞を連勝した生産牧場という事で、取材中だったが、自身の懐に関わる香里としては馬券の方も聞き忘れない。
既に取材は終わっているので、公から私に切り替えて、勝算を聞き始めた訳である。
「それにしても、重賞を連勝するのは久しぶりじゃない?」
「いや……母も達成していないから、重賞連勝はわたしが初めてだな」
Kanonファームの通算重賞勝利数は34勝と1984年から24年目にして初の快挙であり、随分と時間が経過したのが分かる。
そこまで時間が掛かって、人気馬が揃って連勝するのだから、1番充実した時期なのかも知れない。
「今年はダービー制覇の方はどう思っているの?」
「ラストフローズンが向かう事になると思うが、距離がどう出るかだな」
どちらかといえば、マイルから中距離が距離適正のラストフローズンだが、皐月賞の結果がどうあれダービーに進むのは当然だろう。
現3歳馬にはラストフローズンとオルタナティブの2頭だけなので、最も勝算のあるラストフローズンしかない。
「皐月賞は良い結果を出すと思うが、2400mのダービーはどう出るか予想出来ないな」
「大体、限界としても2200m位まででしょう。ホワイトクラウドとは半兄弟だけど、距離適正は思いっきり似ていないしね」
共に母であるスノーラビットの産駒だが、母は父の良さを引き出すタイプなのだろう。
伊達にKanonファームの屋台骨であり、かまど馬として成功している血統なのだから。
「まぁ、あたしは期待しているわ」
「……そうか。なら、期待に応えてダービー制覇を今年中にしてみるか」
勝利出来るかは分からないが、名雪には珍しく冗談を含むようなやり取りに香里は薄く笑顔を浮かべた。
今週の競馬は牝馬ながら、福寿草特別で牡馬を破ったフユノハナビが毎日杯に出走。
3ヶ月ぶりとなる出走が影響なのか、5番人気とまずまずな支持になっており、馬体重も前走比+4kgとさほど成長していないからと見受けられた様だ。
少なくとも2連勝中だが、牝馬では厳しい所があるのは事実。
そして、結果の方は4番手付近と先行で粘る脚を見せるも、ピリッとした所を見せずに、ズルズルと下がって8着だった。
道中までは良かったが、直線では今ひとつだったので、騎手である祐一も首を傾げるのみだった。
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この話で出た簡潔競馬用語
注1:アドマイヤジュピタ……父がフレンチデュピティで、この時点では去年のアルゼンチン共和国杯の勝ち馬。