――ラストフローズンが豪快に差し切り勝ち。

     そんな文面が競馬紙面のトップに飾られており、逃げ切り濃厚だった2着馬――ダンツキッスイを頭差だけ差し切ってゴールしているシーンも。

     ラスト1ハロンのラップタイムは13.2秒と遅いが、ゴール時のタイムは1.34.0と先行ながら脚を伸ばしているのを証明している。

     これが中団からの差し切りだったならば、着差は鼻差で敗れていた可能性もあり、先行した結果が結びついたと見受けられるだろう。

     この勝利にて皐月賞の出走馬では最も評価が高く、400mの距離延長もこなせるという風潮が出ている。

     現状での皐月賞有力馬が京成杯を制したマイネルチャールズ位で、今週の弥生賞次第で不動の人気になってもおかしくない。

     まだスプリングSに毎日杯、若葉ステークス、すみれステークスが残っているが、大勢を決している状況。

     それほど2008年度のクラシック路線は低調で、現状では重賞2勝馬はラストフローズンのみなのだから。

 

    「アーリントンカップを勝利したのは良いが、予定とは大幅に違った結果か……競馬だから予定通りにはいかないが」
    「予定では先行抜け出しで、後ろから追いかけられた場合の競り合いを試す予定でしたし、本番で目標にされるのを考えると厳しくなりましたね」
    「ダンツキッスイを居ないと考えれば良いかもしれないが、豪快の伸びて接戦を演じる前に差し切ってしまったからな。大本命にされるのは仕方ない」

 

     名雪は軽く肩を竦めつつ頭を振るが、元から勝利して皐月賞に進む予定だったので、勝利には問題が無い。

     むしろ、予定とは違った勝ち方に納得していないだけで、騎手を責める訳にもいかないのだから。

 

    「勝てたのは良いのですが、流石にラスト1ハロンの脚を繰り出した所為か、ちょっと疲労が残りそうです」
    「皐月賞まで約1ヶ月か……これからは少しずつ暖かくなるから調教はし易くなるから大丈夫だと思うが、焦らずに仕上げていってくれ」
    「ええ、それは勿論。私もクラシック制覇は何度でも取りたいですから、キッチリと仕上げてみますよ」

 

     皐月賞まで約1ヶ月と長いのか短いのか、どっちつかずな日々ながら、各陣営はトライアルを残しつつ、先を見据えている頃でもある。

     既にクラシックは始まっている状況であり、どの陣営も虎視眈々と1番人気となり得るラストフローズンの首を狙っているのだから。

 

 

     アーリントンカップが終わった翌週の日曜日。

     今週は桜花賞へのトライアルレースであるチューリップ賞が開催され、最も桜花賞と繋がるレースなので、有力馬が揃っている。

     フィリーズレビューという選択肢もあるが、桜花賞と同距離同競馬場で開催されるチューリップ賞の方が繋がりやすい。

     とはいえ、今年の牝馬路線も牡馬路線と同様に、やや低調なのか現状の1番手が阪神ジュベナイルフィリーズを制したトールポピー。

     2番手が重賞未勝利のサンユベール、ファンタジーSのオディールだといわれている位。

     本来なら、3月までにはOP勝ちの馬が成り上がって、出走してもおかしくないのだが、上記の3頭しかチューリップ賞に出走しない。

     クイーンCの勝ち馬であるリトルアマポーラは直接、桜花賞に向かうのでチューリップ賞を勝った馬が人気になるのは間違い無いだろう。

     そんな訳で開催されるチューリップ賞だが、戦前の予想通り人気はトールポピー、サンユベール、オディールの順で分け合っている。

     ここまで3戦とも1番人気だったサンユベールだったが、流石に今回は1番人気をトールポピーに譲っていた。

     人気で走る訳ではなく、最後に勝利すれば評価は覆す事が可能なので、結果を出せば問題無いのだから。

 

    「前走でトールポピーに敗れているから、ここはキッチリと勝利して桜花賞に繋がると良いが」

 

     前走の阪神ジュベナイルフィリーズでは直線で詰まった結果、2着に敗れた経緯があるので、しっかりと走れば差し切ってもおかしくない結果。

     こういう躓き方をすると、重賞で人気になってもなかなか勝ちきれなくなる場合もあるので、鬱憤を晴らして勝利した方が良い。

 

    「今回は外枠ですから下手を打たない限り、囲まれる心配は無いでしょう。後は如何に距離ロスをしないかが課題ですね」

 

     騎手は前走から変わりないが、流石に2戦連続凡ミスするわけにもいかず、競馬新聞ではキッチリと勝ちきって見せますと宣言している程。

 

 

     そして、桜花賞の重要なトライアルレースとしてチューリップ賞が終わった。

     結果としてはサンユベールは外から楽に流して、2着馬に頭差を凌いで押し切り勝ち。

     鞭を入れたのが1回のみで、先週のラストフローズンを彷彿させる伸びで悠々と差し切った所がゴールで、頭差、鼻差、鼻差の接戦を勝利。

     これで桜花賞の最有力として再びサンユベールが名乗り上げた結果になった。

 

 

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     この話で出た簡潔競馬用語

 

     特に無し。