菊花賞はハネダニマケナイがアサクサキングスを抑えて、ラストの1冠である菊の大輪を頭上に咲かせた。
この後はしっかりと馬体重を戻して、春に備えるか有馬記念に駒を進めるかで今後のローテーションが決まる。
とはいえ、まだ2ヶ月近くもあるので、天皇賞・秋とジャパンカップの結果次第で決めても良い位。
閑話休題。
Kanonファームの生産馬としては菊花賞を制したハネダニマケナイも大事だが、今週――10月27日はもっと重要なレースが控えている。
それは、イタリア競馬のリディアテシオ賞に出走するトロピカルサンデーが大仕事を控えているので、直ぐさまに浮かれる事は厳しかった。
ウオッカとダイワスカーレットが争っていた秋華賞を蹴っ飛ばして、向かったのだから、負けたら非難囂々な所ではないのだから。
3強対決を楽しみにしていたファンからしてみれば、勝ち目がないから逃げた様に見えてしまうので、ここで勝たなければ遠征の意味が無い。
わざわざ、イタリアのカッパネレ競馬場に敗北しに行く訳ではなく、勝算があってこそだから果敢に攻める。
「ウオッカとダイワスカーレットの方がまだ怖いね。油断する訳じゃないけど、G�犠,素呂�居ないから、惨敗はしないと思う」
ローズSから引き続き騎乗が決定している佐祐理は出走馬一覧を眺めながら、そんな事を呟く。
後は開催日を待つだけとなっているので、ラフな格好で少し気温が下がり始めた中でコースの下見を行っている最中。
ラフな格好とはいえトロピカルサンデーの調教後だったため、女性らしさよりも、機能美を優先しているので色気はない。
「まぁ、確かにこれといったメンバーは居ないが、オークス3着の実績を持つショートスカートが強い位か」
佐祐理と共にコースの下見を行っている調教師は、その様に予想をする。
既に出走馬が確定しており、主な馬はG�靴鮠〕�した馬が多く、一番の実績馬はイギリスオークス3着やヨークシャーオークス2着となった馬。
ただし、ヨークシャーオークスは去年の実績で、長期休養明けの今年は1戦して惨敗してしまっている。
その為、実績はあってもトロピカルサンデーの勢いと3歳牝馬である事を踏まえれば、勝算はグッと上がる。
「後は個人的にだけど、ホワイトケープという馬が気になるかな? 血統を調べてみたけど母母がミストケープみたいだし」
「……ミストケープか。確か、Kanonファームの生産馬だったと記憶しているが、こんな所でその血統と出会うなんて」
「ミストケープの血統からはハネダニマケナイを輩出しているから、トロピカルサンデーの遠征に合せて狙ったのかも知れないなぁ」
佐祐理にとっては親戚である秋子が生産した馬で馬主でもあるので、わざわざぶつけてくるのも想像出来た。
名雪が生産した馬と勝負させるのが目的の為に、日高のKanonファームを娘である名雪に譲って、当の本人はイギリスで開業したのだから。
そうした勝負を楽しむ為に、ぶつけてきたと考えれば、ここはあくまでも前哨戦だろう。
この場に居ない名雪の本心としては、こんな所でよりも凱旋門賞とかでの方が親超えを果たせるのだから。
「とはいえ、ある程度は結果を残している事を証明しないと駄目だから、ちょっとは突き放さないと意味が無いかな」
佐祐理は独り言を呟くが、調教師は念入りに芝の状態をチェックしている為、聞こえなかったようだ。
リディアテシオ賞が行われるカッパネレ競馬場は欧州競馬の類に洩れず、芝が長く、馬の球節辺りまで伸びているのでパワーが無ければ厳しい。
自然のままあった芝を利用しているので、日本のように整備された競馬場は欧州では見られない。
「芝が絡まるし、水分を含んでいるからスタミナが無いと厳しいな」
「その点は大丈夫だったけど直前に水を撒かれる可能性があるから、これ以上はちょっと勘弁して欲しいね」
2400mのオークスを勝利しているとはいえ、欧州のタフなコースでは2000m前後までが精一杯だろう。
なので、リディアテシオ賞が2000mで開催されているのは、丁度良い位の距離になり得る。
「枠が大外だし、如何に消耗しないようにするかが腕の見せ所だな」
「囲まれるよりはまだマシだけど、距離ロスの方が影響あるかもしれないからどっちが良いかは判断し難いなぁ」
不慣れな欧州の芝に大外からのスタートとなっては不利が多く、勝ちきるのは厳しいかもしれない。
逆に内寄りならば欧州の競馬らしく、囲まれて削られて外に出せないまま、日本の3歳牝馬には慣れないレースになっていた可能性も。
それでも遠征をしたのだから、結果を残さなければならない。
そのプレッシャーをはね除けて、トロピカルサンデーと佐祐理のコンビがリディアテシオ賞に出走する。
1部に戻る 2部に戻る ← →
この話で出た簡潔競馬用語
ショートスカート……父ディクタットでイギリスオークス3着の実績あり。