出走馬18頭が返し馬を終えて、数分もすれば牡馬クラシック最終戦――菊花賞が発走となるだろう。
どの馬も最後1冠を狙う為に順調な仕上がりを見せており、混戦気味なメンバーだからこそ、最後に賭ける意気込みが違う。
そんな中で最終的に1番人気として、支持されたのがロックドゥカンプ。
ラジオNIKKEI賞とセントライト記念を含み、デビュー戦から4連中の無敗馬。
デビューが3月と遅かった事が上積みを期待されており、一種の夏の上がり馬と呼べる立場だろう。
ただし、最長距離が2200mと不安点も残しているのも確かである。
続く2番人気はドリームジャーニー。
去年の朝日杯フューチュリティSの覇者で、春のクラシックは惨敗だったが神戸新聞杯を制して復調気配を見せている。
何よりも父ステイゴールドと母父メジロマックイーンという血統が、長距離戦の裏付けを持ち合わせているのだから、人気になってもおかしくない。
血統の信頼だけなら、どの馬よりも菊花賞向けだと分かる。
こちらもホクトスルタンと同じく、メジロマックイーンの血を引くので長距離適正は高いはずなのだから。
3番人気が唯一クラシックである皐月賞を勝利したヴィクトリーで、それに続くのが日本ダービー2着のアサクサキングス。
つまり、出走馬のG�犠,素呂魯疋蝓璽爛献磧璽法爾肇凜�クトリーのみ。
だからこそ、混戦と予想されており、ハネダニマケナイやホクトスルタンが惑星として好意的に見られているのだから。
「今年の菊花賞はどうなりそうなんです?」
「おそらく、ホクトスルタンが逃げて、それを他馬が追いかけるという分かりやすい展開だと思います」
実況とアナウンサーのやり取りでは、そのような展開が予想されており、実際に逃げ勝っているホクトスルタンだから、競馬新聞もその様になっている。
「逆にこの馬が何処に付けるか次第で変わるという馬は?」
「それになりますと、ハネダニマケナイが面白いでしょうね。後方から差し切ったり、先行で押し切ったりがありますからね」
「なるほど……おっと、まもなく発走時間となったようです」
スターターが赤旗を振るうと京都競馬場特有のファンファーレが鳴り響き、各馬が誘導員に引かれてゲート内に収まっていく。
最後に8枠18番の馬が入って、今スタートを切られる。
「まず、飛び出したのはマンハッタンスカイです。続くのがホクトスルタン。ここからどういったレースになるのか?」
2頭に引っ張られるようにサンツェッペリンとヴィクトリーもついて行く。
そこから少し離れて、アサクサキングスが5番手となって集団を引っ張っている。
こうなってしまうと前を走る4頭には厳しい展開であり、アサクサキングスから後ろがキモとなるだろう。
ハネダニマケナイはアサクサキングスよりも内を走っており、ピッタリとマークを決めたのか、6番手からレースを進める。
本来ならもう少し前でレースをしても良さそうな気配だったが、流石に巻き込まれるのを嫌ってか騎手が手綱を僅かに引いていた。
とはいえ、ずっとこのペースで進む訳でもないので、何処かしらで息を入れてタイムが遅くなるのは当たり前。
どんな馬でも3000mを3分ジャストで走るのは不可能なのだから、ペースが落ちた所で少し差を詰めれば良い。
「この辺りで各騎手の判断が決まったのか、レースは5番手以降がやや縦長で、4番手までが固まって走っています」
歓声が鳴り響く中、掛かってしまった馬――ヴィクトリーが騎手と喧嘩して掛かってしまう。
僅かにペースが上がってしまうが、ホクトスルタンを除いた3頭の位置取りがコロコロと立ち替わっているので、緩やかにペースが推移している。
既に1ハロンは12秒代で変わっているので、ペースを握る馬――ホクトスルタンの騎手がタイムを揺さぶっている。
まるで、セイウンスカイが他馬を封じこめて逃げ勝った時の様に。
「さぁ、各馬向こう正面に入り、徐々に動きだし始めたか?」
この辺りで逃げていた4頭の隊列が乱れ、縦長に変わり始めて、ザッと先頭から最後方まで16馬身程度に。
完全なスローペースになり、後は逃げ粘る体勢に持ち込めばホクトスルタンに勝利は傾くだろう。
だが、坂を上がり始めた頃にハネダニマケナイが少しずつ、脚を伸ばして5番手に浮上する。
同時にドリームジャーニーも最後方から上がり始めて、現在は10番手付近まで上がってきた。
ここで一気に加速しては最後の最後で脚を無くして、負ける馬が多数居るのだから、少しだけ差を詰めて控えるのが定石。
だが、このレースはクラシック最終戦、菊花賞。
そんな手を出す程、レベルが低いレースではないのだから。
「ここで仕掛けるのはハネダニマケナイ!! 残り600m押し切れるのか?!」
ハネダニマケナイの動きに呼応して、各馬も進出し始めてきた。
ここで強襲したため、マンハッタンスカイ、サンツェッリペンとヴィクトリーが抜かれたので、気力を失ってしまいズルズルと下がっていく。
残っているのはホクトスルタンのみ。
「馬場の中心から、ハネダニマケナイ!! やや遅れてアサクサキングスが伸びている!!」
「大外からドリームジャーニーも伸びているが、ここまでか?!」
「内でホクトスルタンが粘る粘る!! が、ここで交わしたのは――ハネダニマケナイが残り100mで先頭に」
アサクサキングスの騎手も必死に手綱を扱き、鞭を振るって奮い立たせるがハネダニマケナイの脚が勝っていた。
「――勝ったのはハネダニマケナイ!! 父ナリタトップロードに続く菊の大輪を輝かせました」
こうして、クラシック3冠最終戦である菊花賞はハネダニマケナイが早仕掛けを制して、父に続く栄冠を得た。
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この話で出た簡潔競馬用語
特になし。