――2007年度上半期のG�祇錣�全て終わったので、フェブラリーSから宝塚記念まで結果を振り返っていこう。

     サンデーサイレンスが死亡して5年経つが、徐々にサンデーサイレンスの亡き後を争う種牡馬が増加している。

     それでも遺った産駒がG�犠〕�をするなど、簡単に血統図は塗り替えられないのが実情。

     牡馬クラシック1冠目を制したヴィクトリーは御三家種牡馬の一角であるブライアンズタイムの産駒。

     3戦2勝の成績で主な勝ち鞍は若葉Sだったので、4戦4勝のフサイチホウオーと弥生賞の勝ち馬アドマイヤオーラが居たので人気は無かった。

     7番人気ながらの勝利となったが、続くダービーでは惨敗。

     その日本ダービーはクリフジ以来――64年振りの牝馬優勝となり、牡馬クラシックに大きな風穴を空けた。

     ヒサトモ、クリフジの先人に続く勝利となり、東京競馬場では観客がディープインパクトに続く歴史の目撃者に。

     その為、牝馬クラシックではゴッソリと穴が開いたかの様に思われたが、桜花賞はダイワスカーレットという逸材がウオッカを破っている。

     こうした結果は牡馬の弱体化が見受けられてしまい、サンデーサイレンスという大物が居なくなった事で、牡馬の空白化が一層と進むだろう。

     3歳路線で唯一のマイルG�気裡裡硲縫泪ぅ襯�ップを制したエリシオ産駒は直後に屈腱炎を発症し引退してしまった。

     正に乾坤一擲の大駆けだったといえるだろう。

     その代償が屈腱炎での引退となってしまったが、競馬史には第12回NHKマイルカップの覇者として名を残した。

     そして、優駿牝馬――オークスは3頭の接戦と非常に見応えがあるレースは今年の牝馬戦はレベルが高いと実感出来る結果。

     そのオークスを制したのはトロピカルサンデーで、鼻差の激戦を凌いだ実力は伊達にウオッカとダイワスカーレットに最も近い位置に居るだけある。

     牡馬路線は混戦だが、牝馬路線は3強が際立っているがその下にもベッラレイアやローブデコルテが居る状況なので、秋には勢力が変わる可能性も。

     古馬短距離路線は去年新設されたヴィクトリアマイルが加わった事で、牝馬には狙い易いG�祇錣�増加。

     上半期で唯一の1200m戦である高松宮記念は今年の1月に東京新聞杯を制しているスズカフェニックスが勝利。

     母系は優秀な血統で母の半兄にドクターディヴィアスと全兄にはシンコウキングが居る良血馬。

     つまり、陣営が天皇賞・秋を目指すというのはあながち過言ではないだろう。

     第二回ヴィクトリアマイルを制したのは去年の桜花賞で3着に入ったコイウタが勝利。

     カワカミプリンセスとスイープトウショウが後方のまま、伸びあぐねている時に中団から差し切る走りを見せ付ける。

     これが父フジキセキ産駒の芝G�欺蘋�覇となり、カネヒキリとグレイスティアラに続くG�鞠呂箸覆辰拭�

     安田記念はダイワメジャーが古豪らしく、皐月賞、天皇賞・秋とマイルチャンピオンシップに続く4つ目のG�犠〕�。

     半妹にはダイワスカーレットがおり、近年になって母のスカーレットブーケが成功し始めたといえるだろう。

     同じくスカーレットインク系のスカーレットローズからは川崎記念を制したヴァーミリアンを輩出するなど現在最も勢いがある牝系といえる。

     そのダート路線はサンライズバッカスが2005年武蔵野S以来の重賞制覇――フェブラリーSを勝利。

     ヴァーミリアンは出走していないので、秋に戦う事があるのかが楽しみである。
     最後に古馬中長距離路線を振り返る。

     この路線は去年の有馬記念を最後にディープインパクトが引退した事で、群雄割拠の時代になると思われていた。

     蓋を開けてみれば順当な結果で、それぞれ適正に合っていた馬が勝利。

     天皇賞・春はメイショウサムソンが皐月賞、日本ダービーに続き3勝目のG�祇�覇。

     父オペラハウス、母父ダンシングブレーヴと欧州のクラシックディスタンスで活躍した血統を内包するだけあって、長距離適正は高い。

     秋には凱旋門賞に遠征予定なので、現地の血統に詳しい競馬ファンからしてみれば咽び泣く血統かもしれない。

     最後に宝塚記念を。

     勝利したのは中距離適正があり、ドバイデューティーフリーを勝利しているアドマイヤムーン。

     ウオッカなどの有力馬が出走する中での勝利は大きな実績だろう。

     そんな訳で上半期G�祇錣鮨兇衒屬辰討澆襪函�各馬1勝のみで2勝した馬が皆無な状況である。

     この接戦から抜け出した馬が年度代表馬選出に繋がるのは間違い無いだろう。

     各陣営はトップだったディープインパクトが引退した事で、抜けた穴を埋めるべく――頂点に立つ為に各馬を鍛えている。

     どの馬が抜け出すかを予想するのが、秋では最も醍醐味かもしれない。

 

 

     と、PC画面には上記の文章が記入されており、その文章を打つ女性は死屍累々な表情であった。

     目の下には隈を作って、PC画面に文字を入力している顔は鬼気迫るもので同業者以外には見せたくないものだろう。

 

    「生きていますか? 姉さん」
    「……何とか生きているわよ」

 

     香里は何とか原稿の内容が打ち終わったのか、グッタリとした表情で机に突っ伏してしまう。

     今は各競走馬のデータは手軽に入手出来るが、文章を打つ過酷さと締め切りという問題にはデータが合っても厳しいのは変わりない。

 

    「……取り敢えず、これであたしの仕事は終わりよ」
    「まぁ、来月は中小牧場の取材ですし、実家から出来る分楽じゃないですか」

 

     美坂家は昔と変わらず北海道の日高地区にあるので、香里は取材の拠点として活用するつもりだった。

 

    「ついでだから、あたしは名雪と飲む予定だけどね」
    「うー……私はレースの撮影が無ければ一緒に行けたのに」
    「ご愁傷様。でも小倉担当なら良い物が食べられるでしょうが」

 

     香里はそう言って、文章をPC内に保存してから編集者にメールで提出すると疲労した身体を無理矢理起こして、帰る支度を始めた。

     栞は既に写真の編集が終わっているので、久しぶりに姉妹で帰れる事になった。

 

 

     1部に戻る   2部に戻る     ← →

 

     この話で出た簡潔競馬用語

 

     注1:ヴィクトリー……兄にリンカーンが居る。
     注2:フサイチホウオー……東京スポーツ杯2歳SやラジオNIKKE杯2歳S、共同通信杯を勝利している。
     注3:ヒサトモ……現在はトウカイテイオーなどの血脈に受け継がれている。
     注4:スズカフェニックス……父はサンデーサイレンス。
     注5:コイウタ……馬名の由来はヒット曲から。
     注6:カワカミプリンセス……オークスと秋華賞を勝利しているが、エリザベス女王杯は1着だったが10着に降着している。
     注7:スイープトウショウ……牡馬相手に宝塚記念を勝利している。
     注8:カネヒキリ……2007年は屈腱炎を発症した為、治療中。
     注9:グレイスティアラ……全日本2歳優駿の勝ち馬。
     注10:サンライズバッカス……父はヘネシー。
     注11:ヴァーミリアン……父はエルコンドルパサー。
     注12:メイショウサムソン……大阪杯から天皇賞・春の制覇はスーパークリーク以来。
     注13:アドマイヤムーン……札幌記念や京都記念も制している。